「質の転換」が起こるまで続ける
情報処理技術者試験の勉強に限らず,学習というのは,やればやっただけ直線的にできるようになるわけではありません。
なかなか進歩しない,じれったい時期を通過した後,あるときに急にできるようになるというのが一般的です。
図にすると,こんな感じです。
この曲線のことを,「学習曲線(ラーニングカーブ)」といいます。
勉強ができる人というのは,この学習曲線の存在を感覚的によく知っています。
そのため,新しい勉強を始めるときにも,なかなかできるようにならなくっても,「続けていればそのうち,急激にできるようになって楽になる」ことを信じて,勉強を続けることができるのです。
これは,知識の分量が一定数になると,それらが結びついて「質の転換」が起こるからだと考えられています。
バラバラの知識がつながってくると,急に見通しがよくなって,全体像が見えてくるのです。
この質の転換が起こるまで勉強すると,問題の見え方が変わってきて,簡単に感じられるようになります。
ここからは私の経験則ですが,だいたいの試験は,この質の転換が起こるあたりが,合格ラインになっています。
ですので,理解できていて全体像が見えてくるようになると確実に受かりますし,そうでない場合には合格できないです。
ただ,試験によっては,この質の転換と点数との相関があいまいなものもありますし,はっきりしているものもあります。
一番はっきりしていて,質の転換が起きると受かる,そうでないと落ちる,という傾向が強いのが,データベーススペシャリスト試験です。
この試験は,「正規化」と「ER図」という,わかっていないとできない内容がメインです。正規化がしっかり理解できて,ER図がすらすら書けるようになれば合格です。
エンベデッドシステムスペシャリストも,わかってしまえば比較的,受かりやすい試験です。
最初はとっつきにくいのですが,ひととおり学習して壁を超えると,午後問題も楽に解けるようになります。
テクノロジ系の内容は,この質の転換がわかりやすいように感じています。
逆に,マネジメント系の内容は,質の転換が見えにくいように感じています。
人間的な話が多いので,勉強する前からわかっていることも多いですし,勉強したからといってすぐにわかるわけでもありません。
ただ,なんとなく,その試験特有の考え方を身につける感じでもありますが,「これでわかった!」と確実に言えるものでもありません。
逆に,人間は理屈通りには動かない,わからないものだということを受け入れることが大切な気もします。
こちらの質の転換は,試験勉強をしているときではなく,現実で問題に直面したときに少しずつ起こるものだと感じています。
ですので,合否ラインが少しあいまいな感じです。
プロジェクトマネージャやシステム監査技術者の場合,知識を覚えて,理解しただけでは合格ラインに届きません。
経験を積むか,または経験を補うために事例をいろいろ学習していくかを行って,少しずつ質の転換を目指していく感じになります。
図にすると,こんな感じです。
情報セキュリティスペシャリストで,合否ラインに人が集中して,ちょっとしたことで合否が分かれるのは,マネジメント色が濃いからかな,とも感じています。
情報セキュリティスペシャリスト試験の場合,合格するためには,テクノロジ系中心に勉強をしておいて,ネットワークセキュリティやセキュアプログラミングをしっかりマスターしておく方がより確実です。
応用情報技術者試験の場合も,テクノロジ系の問題(問2,4,5,6,8,9)を中心に選択している限りは,質の転換が起こるぐらいまで勉強すると,合格は確実になります。
特に,プログラミングやネットワーク,データベースなどは「わかってる,わかってない」の差がはっきりしていますので,手応えは感じやすいです。
逆に,マネジメント系の問題(問10,11,12)は,勉強量とそれほど比例せず,点数が大きく上下しやすいです。
特に,マネジメント経験がない場合には,どんな問題でも対応できるようなレベルになることは難しいです。
勉強不足を補って,運良く高得点をとるために1,2問選んでみるのはありですが,マネジメント系に依存するのは危険です。
IT技術は科学なので,勉強すればしただけ効果がありますし,質の転換が起こると全体像が見えてきます。
ですので,テクノロジ系を中心に勉強すると,勉強の効果も良く出てやりがいもあると思います。
今,壁に当たっていると感じる人は,質の転換が起こる前かもしれません。
壁を超えると一気に開けてきますので,あきらめずに勉強を続けていきましょう。