システム監査技術者は,他の高度区分を勉強してから受験する
以前,「情報処理技術者試験の難易度 2012年度版」でも書きましたが,システム監査技術者は,ITストラテジスト,プロジェクトマネージャと並んで,高度区分の中でも最高に評価されることが多い試験です。
そして,システム監査技術者を受験する時に必要な勉強時間は,他の高度区分を受験するのにかかる勉強時間よりも比較的少なめだとは思います。
でも,だからといって,いきなりシステム監査技術者の勉強をして,簡単に受かるわけではありません。
システム監査技術者を受験する前に,他の高度区分をいくつか取得して,基礎となる知識や考え方を身につけておくことが大切なのです。
システム監査とは,名前の通り,「情報システムに関する監査」です。
ですので,当たり前ですが,監査される対象である「情報システム」についてはひととおり知っておく必要があります。
そして,その対象となる情報システムは,システム開発以外の多岐にわたります。
システムのライフサイクルのいろいろな場面が出てきますし,そこで使う技術要素も監査の対象です。
例えば,システム監査技術者平成24年春午後1問1のテーマは,「パブリッククラウドサービスを利用したシステムの監査」です。
こういった問題の場合には,SaaSやSLAなど,クラウドサービスに関する知識は前提として必要になります。
開発以外にも,システム監査技術者平成24年春午後1問3で出てくる「システム障害の再発防止の監査」や,平成23年特別午後1問2で出てくる「システム開発プロジェクトの監査」など,監査の対象は様々です。
そのため,監査されるいろいろな対象に対して,幅広く知っておくことは重要になります。
ただ,これは「システム監査の勉強」で身につくことではなく,システム監査の勉強を始める前に,あらかじめ知っておくことが必要なことです。
他の高度区分の勉強をしながら,もしくは様々な実務を経験しながら身につけていく内容が,前提知識となります。
具体的には,メインで出てくるのはシステム開発ですので,システムアーキテクトの勉強などで,システム開発についてひととおり学ぶことは重要です。
また,システムの運用,保守に関してもかなり出題されますので,ITサービスマネージャの勉強などで,ITサービスマネジメントについて学ぶことも大切です。
さらに,監査によく出てくる情報セキュリティに関することは,情報セキュリティスペシャリストの勉強が役に立ちます。
プロジェクトマネジメントに関することもちょくちょく出てくるので,プロジェクトマネージャの勉強も使えます。
こういった前提の知識を身につけた上で,「監査とは」という考え方を身につけるのが,システム監査技術者試験の勉強です。
考え方を身につけ,経験や事例にあてはめて論文を書いていくのが,おもな勉強内容になります。
論述式試験の書き方も,他の4区分とシステム監査技術者では異なります。
特に設問ウが,結論やまとめではなく,独自に1つのテーマについて書く問題が多いです。
他の区分と異なり,設問イとウが同じ字数で,どちらも700~1,400字です。
ですので,論述式試験の最初の受験をシステム監査技術者にしてしまうと,他の論述式よりも書きにくいですし,他で応用が効かなくなります。
できれば,他の高度論述系の区分に合格して,ある程度論文を書き慣れてから,新しい書き方として練習する方が対応しやすいと思います。
たまに,「情報処理技術者試験で最高峰だから,この資格さえ取れば起死回生できる」と思うからなのか,いきなりシステム監査技術者を受験される方がいらっしゃいます。
論述式の試験の場合,技術レベルはどうしても文章ににじみ出てしまいますので,段階を飛び越しての合格は,かなり難しいです。
ですので,過去問演習をしながら,用語でつまづいたり,問題内容が理解できなかったりする場合には,他の高度区分の分野も学習するのがおすすめです。
特に,システム開発や運用については,ひととおり勉強しておくのは必須になります。
とはいえ,段階を追って勉強していけば,それほど敷居の高い試験ではありません。
「高度区分もいくつか取ったし,最後の総仕上げとして受けよう」という方には,最適な試験だと思います。
監査の視点が身につきますので,知識や業務の幅も広がります。
あと1か月,考え方を押さえた後に過去問演習などをしっかり行って,合格レベルの実力を身につけていきましょう。