株式会社わくわくスタディワールド

株式会社わくわくスタディワールド

情報処理技術者試験合格の価値は下がっている

ある企業で,情報処理技術者試験合格の褒賞金を1/3にしたという話を聞きました。
他にも,受かったら褒賞金というのではなく,受からなかった昇進できないといった,取らないとマイナスになるけど取ってもプラスにならない方向での変更を行う企業もありました。
正直,情報処理技術者試験に合格しさえすれば評価される,という時代は終わってると思います。

これは,「企業が情報処理技術者試験を評価しなくなった」というよりは,「情報処理技術者試験合格の難易度が下がり,価値が下がった」と考える方が妥当な気がします。
今までに比べ,合格者が多くなって,褒賞金の額が増えてしまったから,1人当たりの額は少なくなるというのは,当然の方向性ですし,易しくなった分,評価も低くなるのは当たり前です。

先日,個人的にもすごく考えさせられる出来事がありました。
情報処理技術者試験の高度区分に複数合格されているある方と一緒に仕事をしたのですが,そこですごく苦労したのです。
別に,資格取得イコール即戦力と思っていたわけではありませんが,試験問題が読めるのだから,最低限の意思疎通はちゃんとできると思っていました。
そこで,「え?これも通じないの?」ということや,勝手に勘違いすることの連続で,立て直すのが大変だったのです。
改めて,資格だけで人は判断できないなぁ,と身に沁みました。

思い返してみると,昔,10年前ぐらいには,高度区分合格者というのは,それなりに質の担保ができていたような気がします。
性格はともかく,仕事のスキルは高く,技術者としては信頼できる人,というのが当時の私の高度区分合格者に対する印象です。

個人的な知り合い関係で,「え,この人高度持ってるの?」という疑問を感じることが出てきたのは,大体平成18年ぐらいからです。
年々,そういう人に出会う確率が,増えているような気がします。

そこで,改めて,情報処理技術者試験の各試験区分の合格率を調べてみると,次のようになりました。

合格率の推移

段々合格率が上がっているのにはもちろん気づいていたのですが,実際にグラフにしてみると一目瞭然です。

新試験制度になる前の平成18年~20年ぐらいで徐々に合格率が上昇し,新試験制度になった平成21年度以降は,平成17年以前に比べて,合格率が大幅に高くなっています。
特に,高度区分は,7%ぐらいが平均だったのが14%ぐらいになっていますので,単純に倍増しています。

単純計算できるかどうかはわかりませんが,合格率が倍増したのなら,価値は半減していると考えてもおかしくはないのかな,と感じています。
もちろん,どれくらい価値が減少したのかは,数字で表せるものではないとは思いますが,昔に比べて,情報処理技術者試験合格,ということで周りにアピールできる価値は減ったと考えるのが妥当です。

現在の情報処理技術者試験の高度区分は,以前「情報処理技術者試験は,中級レベルまでの資格」の記事でも書いたとおり,中級レベル(7段階のレベル4)までしか判断できません。
昔はレベル5相当としている試験もありましたし,全体的に高度区分の試験問題自体の難易度も下がっているとは思います。
ですので,今の試験に合格したからといって,昔と同じように評価されないのは,当たり前と言えば当たり前です。

ただ,それが悪いこととばかりは言えません。
その分,「合格しやすくなったこと」は確かだからです。
昔無理だとあきらめてしまった人が,もう一度挑戦すれば合格する可能性は高いと思います。
敷居が低くなった分,「合格」という結果を残しやすくなっていますので,成果が欲しい人にはおすすめです。

以前に比べて価値が下がっているのは確かですが,ゼロになってしまったわけではありません。
褒賞金の額は少なくなっても,評価する企業は多いですし,社員のスキル判定に幅広く使っている企業は増えています。実務と合わせて,転職を有利に進めることもできます。
変に神格化せず,「必要だから取る」「スキルアップの一環として取る」というぐらいで勉強するには,まだまだ使える資格でもあります。

そろそろ,合格発表や次の試験の申込が近づいてきました。
合格しても奢らず,日々精進していきましょう。