株式会社わくわくスタディワールド

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エンベデッドシステムスペシャリストという試験

情報処理技術者試験の中でも,高度区分の1つであるエンベデッドシステムスペシャリスト試験は,他の試験とは大分毛色が違います。

先日の記事「それぞれの試験の特徴と勉強で身につけられる力 ~情報処理技術者試験パンフレットより~」で取り上げたパンフレットでのエンベデッドシステムスペシャリスト試験の説明は,

 組込みシステムの腕利きエンジニア エンベデッドシステムスペシャリスト試験

となっています。
エンベデッドシステム=組込みシステムのことなので,基本的には組込み系の仕事をしている人が受験する試験です。

この試験は,業務が組込みシステムの開発だという人には,それほど敷居が高くない試験だと言われます。
実際,組込系のエンジニアの方で情報処理技術者試験を受けられる方は,最初の高度として取得される方も多いようです。

試験では基本的に,ハードウェア寄り,ソフトウェア寄りのどちらかの組込みシステムの問題を選んで解きます。
ですので,全部の範囲を勉強しなくても,業務により近い方を選択できるという利点があります。

受験者が試験全体で1,2を争うぐらい少ないのは,組込み系のエンジニアで,情報処理技術者試験を重視する人が少ないからだと考えられます。
組込みエンジニアは,電機メーカなどIT系ではない企業に所属することが多いので,キャリアパスに入っていない場合も多いのです。
ただ,開発の一分野として大事な技術ではあるので,平成7年のスタート後,ずっと年1回開催され続けています。

この試験は,業務経験がない方が受けようとすると,かなり敷居が高くなります。
他の情報処理技術者試験との共通部分はほとんどありませんし,何より数学や物理などの理系の素養が必要です。
文系出身のSEが受けようとすると,かなり厳しいのではないかと感じます。

個人的には,こういう技術寄りの資格は大好きですし,試験勉強が一番楽しかったのはこの試験でした。
試験問題自体が,ロボットやカーナビなど,実物が想像できる題材で,「こんな仕組みで動いていたのか!」と知ることができるのは感動でした。

組込みシステムの基本を学んで,知識の幅を広げるというのには,とてもおすすめな試験です。
ただし,試験合格が役に立つか,と考えると,普通はあまり意味はないとは感じています。
業務経験が伴わない場合には,情報系の学生か第2新卒ぐらいが,組込みシステムを主に開発している会社に就職する場合に使えるぐらいだと考えられます。

実用性を考えず,他に受けるものがなくなったときに趣味と割り切って楽しむのが最適かと思います。

また,受験者が少なく参考書は量も質もいまいちなため,「受験勉強」という形で進めようとすると行き詰まりがちなのもこの試験の特徴です。

試験テクニック以前に,組込みシステムについて基本的なことを理解することが一番肝心です。
初心者なら,「絵で見る組込みシステム入門」などで基本的なことを理解したり,「改訂 エンベデッド技術―組込みシステム開発のためのエンベデッド技術」や「組み込みソフトウェア開発スタートアップ―ITエンジニアのための組み込み技術入門」などの専門書で,ひととおりのことを理解するといいと思います。

あと,できれば実際に,組込みシステムを動かして経験してみるといいです。
以前,「実際の機器をプログラムで動かしてみる」の記事で書きましたが,Arduinoなどで実際に組込みプログラミングを体験してみると,技術が感覚的につかめると思います。

その上で過去問題を解いて,わからないところを自分で調べながら身につけていく,というのが基本の勉強方法になると考えています。
過去問の解説も疑問が多いので,ある程度疑いながら自分で考える必要があります。

また,これは個人的な感覚ですが,問題自体が他の試験区分に比べて粗い(解答が一意に特定しづらい,問題に矛盾がある等が多い)傾向があるので,完璧を求めると疲れてしまうかもしれません。

最後に,最近の試験の傾向としては,試験問題自体がかなり易しくなっています。
平成21年にエンベデッドシステムスペシャリストの試験になってからは,それ以前とは別物?と感じられるぐらい易しくなっている気がしています。

データベーススペシャリスト試験などは,試験の合格率は上がっても問題の難易度自体はあまり変わっていないような気がするのですが,エンベデッドシステムスペシャリスト試験は,問題の難易度が下がっていることは確かです。

個人的には,テクニカルエンジニア(エンベデッドシステム)とエンベデッドシステムスペシャリストは一緒にして欲しくないな,というぐらいには違うと考えています。
他の区分なら分かる人向けにマニアックに例えると,この2つはテクニカルエンジニア(情報セキュリティ)と情報セキュリティスペシャリストの難易度の差ぐらいに違います。

ですので,昔全然歯が立たなかったという方も,受け直してみると案外あっさりいけるかもしれません。

来週から,試験の申込みが始まります。
「春に何受けようかな~」と迷われている方も,早めに決めて,なるべく早く申込みしていきましょう。