応用情報技術者試験(2009年春)
わく☆すた,美月です。
今日は,今回の応用情報技術者試験についての分析と感じたことを書きます。
ソフトウェア開発技術者試験から応用情報技術者試験になって,試験内容は大きく変わりました。
私が一番感じるのは,「昔の一種(第一種情報処理技術者試験)に近くなったなぁ。」ということです。午前試験で,経営も含めたIT関係の知識全般が出るようになって,午後試験では開発者以外の,運用管理する人やコンサルタント,プロマネの人でも受かる,そんな感じの試験です。
午後に関しては,従来のソフトウェア開発技術者試験の午後1の出題分野と全く同じ6問(問2,問4,問5,問6,問8,問9)で比較すると,ほとんど難易度は同じですので,午後2がない分楽になったのかな,という印象です。
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午前試験は,今までより試験範囲が広がりました。
事前に発表があったとおり,ストラテジ系(システム戦略,情報戦略,企業と法務)及び,マネジメント系の一部(サービスマネジメント(システム監査))が新しく加わって,高度午前1と合わせて,IT関係の知識全般をひととおり知っているかどうかを問われます。
ただ,予想したよりも若干テクノロジ系が多く,ストラテジ系の問題の難易度は高くありませんでした。テクノロジ系49問,マネジメント系11問,ストラテジ系20問で,このうち22問が新分野からの出題でした。
過去問からの出題も多く,ざっと見た感じでは,半分以上は過去問です。3回前の平成19年秋ソフトウェア開発技術者試験からの再出題が結構ありました。ストラテジ系分野は他の高度区分(アプリケーションエンジニアなど)からの再出題が多かったです。
今後の学習としては,ソフトウェア開発技術者試験試験,応用情報技術者試験の過去問3期分+他区分のストラテジ系分野過去問をやるか,それらを厳選した午前問題集1冊をやるのがいいのかな,と思います。
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午後試験は,12問中6問選択で,最初の問1,2はどちらか1問,問3~12からは5問選択,という形式でした。
出てきた分野は,以下のとおりです。
●問1,問2 (2問中1問選択)
問1 経営戦略 (マーケティング戦略の立案)
問2 プログラミング (チェイン法(探索アルゴリズムであるハッシュ法の一つ))
●問3~問12 (10問中5問選択)
問3 戦略立案・コンサルティングの技法 (SWOT分析)
問4 システムアーキテクチャ (災害復旧対策(ディザスタリカバリ)
問5 ネットワーク (DHCPの利用)
問6 データベース (注文管理システムの設計と実装)
問7 組込みシステム開発 (携帯端末の省電力)
問8 情報システム開発 (通信販売用Webサイトの設計)
問9 情報セキュリティ (ファイアウォールの設定)
問10 プロジェクトマネジメント (営業支援システム開発プロジェクトの管理)
問11 ITサービスマネジメント (SLA(Service Level Agreement))
問12 システム監査 (DB監査ツールを利用したシステム監査)
まず,必須問題です。
問1は,経営戦略の問題で,ちゃんとマーケティング戦略について勉強していないと解けない問題でした。問2のアルゴリズムは,定番のハッシュ法で,今までのアルゴリズム問題に比べると,かなり易しい問題でした。
難易度としては,開発者なら,問2の方が易しいと思います。多分,「アルゴリズムが苦手だから問1」というのはやって欲しくない,という試験センターの意図があるのかな,とは感じています。問1の方が,出題範囲も広く,付け焼刃な勉強だけでは通用しなさそうなので,今後も,技術者はアルゴリズムの学習をした方がいい気がします。
選択問題は,テクノロジ系(問4,問5,問6,問8,問9)とそれ以外に分けて考えます。
テクノロジ系は,従来のソフトウェア開発技術者試験午後1とほぼ同じです。想定解答時間が15分から20分に伸びた分,若干問題内容が濃くなっています。問6のデータベースは,従来に比べて分量が減って,ER図とSQLを書くだけの問題でした。このあたりは,従来のソフトウェア開発技術者試験の過去問ができれば,十分対応できると思います。
ストラテジ系,マネジメント系の,問3のSWOT分析,問10のプロジェクト管理,問11のSLA,問12の監査手続は,各分野の典型的な問題でした。事前にそれぞれの分野を学習している人なら,特に問題なく解けるレベルだと思います。組込みシステム開発の問7は,典型的なタスク管理の問題で,こちらも組込みシステムについて勉強している方なら,普通に解けると思います。
このあたりの分野は,過去問がないのですが,今回の問題を見る限り,対応する高度試験の問題を,易しくして出題した,という印象を受けました。今後勉強する人は,対応する高度系の午後1問題を解いておくといいと思いました。問1,問3はITストラテジスト(システムアナリスト)または中小企業診断士,問7はエンべデッドシステムスペシャリスト(テクニカルエンジニア(エンべデッド)),問10はITサービスマネージャ(テクニカルエンジニア(システム管理)),問11はプロジェクトマネージャ,問12はシステム監査です。
全体的に,どれを選んでも有利不利はないように,ある程度難易度調整されている印象です。ですので,自分の好きな分野,将来進みたい分野を選んで学習するのが一番いいと思います。
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最後に,次回の試験に向けて。
あと3回くらい実施されれば,試験の傾向も固まってきて,過去問をやるだけで大体次の試験の見通しが立つとはおもいます。ただ,現在は過渡期なので,ちょっとまだ手探りの勉強が必要になる感じです。
参考書などは,今発売されているものより,今回の試験が開催された後に発売されるものがおすすめです。
午後試験で選べる問題の幅が広がりました。これは,「目指したい職種」について学べるチャンスだと考えると,いろいろ楽しめます。
例えば,将来セキュリティの専門家になりたい人は,監査や運用管理の仕事は不可欠なのと,セキュアプログラミングを理解するということを考えて,問2,問4,問5,問9,問11,問12っていう感じで選ぶと,次につながる知識が得られていいと思います。
今回受験して「ダメだった」と感じる人は,まず,自己採点してみて弱点を洗い出してみましょう。このあたりは,試験後なるべく早くやると,忘れないので効率的です。
ぜひ,解答例が発表されている,JITECやITECのホームページを使って,採点してみて下さい。
午前 (これは,正式な「解答」。訂正がないかぎりこれで確定です)
http://www.jitec.ipa.go.jp/1_04hanni_sukiru/mondai_kaitou_2009h21.html
午後 (こちらはあくまで解答例です。大体合ってるとは思いますが。)
http://www.itec.co.jp/auto_mark/answer/index.html
合格ラインは,午前,午後とも,それぞれで60%です。
今回からは,スコアでの合格ラインの微妙な変動はありませんので,午前は48問正答していればOKです。逆に言うと,午前で47問以下だった人は,さっさと諦めて次に向けた努力をした方が建設的です。午後は問1,2が20点,問3以降は各16点です。こちらも60点取れていればOKです。ただ,こちらは正式な正解の発表は6月ですし,設問の配点次第でぶれがあるとは思います。
ちなみに,合格発表では,午前でストラテジ系,マネジメント系,テクノロジ系の分野ごとの点数も出ます。(だからといって,ITパスポートみたいに,各分野最低30%とか,縛りがあるわけではありませんが。)
今復習するのは,印象が強く残るので,効率的です。次の高度試験にもつながります。
ただ,ずっと頑張り続けていると,伸びきったゴムのようになります。ですので,ひととおり復習して,今回の試験を完全消化したあとは,英気を養う意味でも,他のこともいろいろ楽しみましょう。