ここ数年,データベーススペシャリスト試験が静かに変わっています。
10年経っても変わらない試験,といわれていたデータベーススペシャリスト試験に,大きな変化が起こっているのです。
気がつかないうちに,川の流れのように,少しずつ試験の内容が変わってきています。

以前は,定番の内容さえクリアすれば受かる試験だった

7年ぐらい前に,「データベーススペシャリスト,変わらないのが素晴らしい」という記事で書いた通り,5年ぐらい前までのデータベーススペシャリスト試験は,定番の内容さえクリアすれば確実に受かる試験でした。

以前のデータベーススペシャリスト試験は,「データベース基礎理論」を重視していて,数学を元に考え出された関係データベース理論に基づいた,理論重視の内容でした。
具体的には,正規化を完全に理解してE-R図さえ書ければ,午後試験は合格できました。

もちろん,「正規化を理解する」「E-R図を書けるようになる」ということ自体が結構難易度が高いことで,単に知識を身につけるだけではなく,繰り返しの演習や実務が必要なことです。
そのスキルは,今でも大切なことですし,別に出題されなくなっているわけではありません。

ただ,その比率が少なくなってきているので,正規化やE-R図「だけ」では合格できなくなってきています。

だんだん,DBMSや新しい内容の出題が増えてきた

5年ぐらい前から,午後試験でも,DBMSやSQLに関する内容が増えてきました。
特に,昔は午後1で1問ぐらいしか出てこなかったDBMSを中心とした物理設計の問題が定番化してきています。

最も変化が分かりやすいのが午後2の問1です。
平成26年から3年連続して,「データベースの物理設計」が中心の問題が出題されています。
テーブル定義や主キー,索引,制約などを表にまとめる問題が,毎回出題されるようになりました。

また,他の分野と組み合わせた,新しい内容も増えてきています。
平成28年春の午後1問3では,「RDBMSのセキュリティ」というテーマで,情報セキュリティを意識したビューやロールの定義が出題されました。
午後2の問1でも,個人情報保護やセキュリティ事故と対策について問われています。

ビッグデータに該当する大量のデータ,非定型のデータを格納する問題も増えてきており,試験で扱うデータの内容自体も新しくなっています。
そのため,運用設計やデータ移行など,データの変化に対応した問題も増えてきています。

今までの,「定番のデータベース設計」だけでは対応しきれなくなっているのです。

テクニックが効く範囲が狭くなった

semaikawa

以前,「データベーススペシャリストという試験」という記事でも書いた通り,データベーススペシャリスト試験では,他の試験にも増して,「試験テクニックの本」が幅をきかせています。
正規化やE-R図などは,定番のパターンがありますし,参考書の執筆者が,それを見つけて語りたくなる気持ちはわかります。

しかし,「定番のパターンを覚えて合格してしまおう」という手は,だんだん通用しにくくなっています。

情報セキュリティスペシャリスト試験などでもそうですが,試験の内容自体が新しくなると,以前からあった速攻サプリ的な定番パターンを覚える解き方は通用しなくなります。
データベーススペシャリスト試験は,変化が少ないので定番パターンが多くあったのは事実ですが,それがだんだん少なくなっているのが現状です。

具体的には,昔は午後1で,「問1 データベース基礎理論」「問2 データベース設計」という形での出題が定番化していて,この2問は正規化を中心とした内容でした。
午後1は3問中2問の選択問題ですので,正規化を中心としたデータベース設計を完璧にするだけで,この2問を解いて突破することができました。

3年前の平成26年度から,データベース基礎理論と設計が1つにまとまって,「問1 データベース設計」というかたちになっています。
そのため,データベース設計ができても,それだけでは合格ラインに到達できません。
SQLやDBMS,セキュリティなど,他の問題も解く必要がでてきています。

テクニックが完全に無効になったわけではありません。
しかし,テクニックを覚えても,それが使える範囲が狭くなったことは確かです。

今後のデータベーススペシャリスト試験の方向性

データベーススペシャリスト試験が,特に3年前(平成26年)ぐらいから,傾向に変化が見られるのは事実です。
その方向性は明らかに,現在のデータベースの利用状況に即したものでもあります。

先日,試験センターから,「情報処理技術者試験の「シラバス」における一部内容の見直しについて」ということで,データベーススペシャリスト試験でのシラバス変更がありました。

この変更内容にあるような,情報技術の進展に対応したデータベースの変化に対応するようなことが,今後のデータベーススペシャリスト試験の方向性ではないかと考えられます。

具体的には,情報セキュリティ,データマイニング,クラウドコンピューティングや災害対策などが主な方向性です。
シラバスには,物理設計に関する内容が多く追加されていますが,この方向性の問題は,3年前から大幅に増えてきましたし,今後も増えることが想定されます。

個人的には,データサイエンティストに必要な,機械学習や統計学などのデータベース理論以外の数学的な内容も増えてくると面白いなぁ,とは考えています。
ただ,それが追加されるなら試験名称が「データベーススペシャリスト」ではなく「データサイエンティスト」に変更されそうですね。

情報技術の進展は日進月歩で,どんどん世の中は変化していっています。
そのため,「理論は10年経っても変わらない普遍的なもの」といっても,それを学習するだけでは足りなくなってきています。
時代と共に,勉強する必要がある内容も,だんだん広がっていくのです。

来年データベーススペシャリスト試験を受験される予定の方は,こういった傾向を踏まえて,データベース理論以外のことも,幅広く学習されることをおすすめします。
もちろん,私の参考書も,内容に合わせてリニューアルする予定です。

どちらの方向に向かっているか,時代の流れを読みつつ,方向を間違えずに進んでいきましょう。

kumanogawa3

今日の表題は,熊野にも良く来られるphaさんが作成された「ホッテントリメーカー」を使用して作りました。
写真は全部,私が撮影したうちの近所の熊野川です。
ちなみに最初の画像は,Googleフォトが自動で加工してくれたものです。