株式会社わくわくスタディワールド

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論述系は“うまく嘘をつく”試験

「プロマネはね,“うまくだまして(^^)”という試験なんですよ」

10数年前,とある論述系試験対策セミナーで聞いて,衝撃を受けた言葉です。
この言葉を聞いて以来,私は論述系の試験に落ちたことがありません。

リーダーの嘘は役に立つ?

悪いヤツほど出世する』という本があります。
この本は,スタンフォード大学ビジネススクールで,組織行動学を専門とされているジェフリー・フェファー教授が,科学的見地からリーダーシップについて分析した本です。

世の中にあふれるリーダーシップ研修に疑問を投げかけ,現実のリーダーが持っている資質について,きれいごとを外して,事実を述べられています。
リーダーシップの自己啓発本を読んで快感に浸りたい,というのではなく,本当に役立つリーダーシップについて知りたい方にはおすすめの本です。

その中の第4章「誠実 リーダーは真実を語るべきか」に,嘘についての言及があります。
そこには,

・たいていのリーダーは嘘をつく
・嘘をついて損をすることは,めったにない
・むしろ,嘘はよい結果をもたらす
・ときに私たちは,嘘を聞きたがりさえする

といったことについて,事実の裏付けをもとに,説明されています。

確かに,メンバーのやる気を出させるためには,不都合な真実よりも,「うまくいってるから頑張ろう」と明るく声がけした方がいい場面も多々あります。
上に立つ人には,誠実な人よりも自信過剰でポジティブな嘘をつく人が多いというのも,経験則として納得できます。

倫理的な感覚からは納得はできないですが,リーダーに嘘をつく人が多く,またそういう人の方が出世しやすいということは事実です。

個人的な論述系区分の経験

私自身の経験では,最初に論述系の試験区分(当時のアプリケーションエンジニア)を受けた時に,自分の業務をそのまま論述で書いて失敗しました。
その後,セミナーを受けたりして,「うまく嘘をつく」ことが必要なことを知り,その後は論述試験で不合格になったことはないです。
旧試験,新試験で全区分2周して合格しているので,だいたいコツはつかめているように感じています。

ただ,個人的には,嘘をつくのは心理的な抵抗が大きいので,苦手です。
昔は論述系試験の参考書などの執筆で,サンプル論文を書いてたこともあったのですが,嘘の論文が“出版”されるという恥ずかしさに耐えられず,次の年からは担当を外していただきました。

昔は企業研修や公開セミナーなどで,論述系の対策などもやっていましたが,良心の呵責が大きいのである時点で,全部止めることにしました。
時々お問合せをいただきますが,わく☆すたでは今後,論文の採点や論述系セミナーなどは,一切行うつもりはありません。

これは別に,他の方のセミナーが悪い,というわけではなく,「うまく嘘をつく」ことが重要なスキルなら,私はそのスキルが2流だから手を出さないほうがいいな,というだけのことです。
昔と違って,うまく嘘をつくためのテクニックやサプリは,いろいろ出版されているので,そちらを参考にしていただければと考えています。

おすすめの論述系学習法

論述系の学習で,市販されている本だと,『情報処理教科書 高度試験午後II論述 春期・秋期 (EXAMPRESS)』が,全区分のポイントが押さえられていて一番的を射ています。

これを読んで,それぞれの試験区分では,どういう  嘘  “あるべき理想の姿”が求められているのかがわかれば,問題文の項目に沿って答えていけばいいだけです。
このコツがわかれば,基本的な文章力があれば合格できます。

情報処理技術者試験の論述系の本は,昔はほとんどなかったのですが,上記の本が出てから“売れる分野”と思われたのか,最近は結構いっぱい出版されています。
ただ,自己啓発的な,やる気を起こさせるだけの本や,現行試験の論述系に受かっていないような著者の本などもあり,玉石混淆です。
下手な本で学習すると,遠回りどころか別の方向に行ってしまうこともあるので,参考書選びは大切です。

今後の方向性

会社の昇進や,キャリアパスの都合で,実利的に論述系の試験に合格する必要があるという場合には,先ほどの“おすすめの論述系学習法”で学習していただければいいです。
ただ,今後の時代の流れを考えると,“論述系の試験勉強をした方がいいか”自体を,考え直す必要がある時期に来ています。

論述系の試験の内容はスペシャリスト系の試験に比べると変化が少なく,時代に合っていない部分も多くなっています。
すでに企業での昇進条件や報奨金の条件になっている試験も多く,しばらく評価され続けるはずですが,今後活用の場面が広がるとは考えられません。

勝手に選別される世界――ネットの「評判」がリアルを支配するとき、あなたの人生はどう変わるのか』にありますが,ネットが進化し,日々の行動が可視化されるようになった今,経歴の詐称やはったりは,見抜かれやすくなっています。
日々,自分がやってきたことを発信して,スキルを客観的に見えるようにしておくことが大切な時代が,今もう訪れているのです。

個人的には,こんな時代には,あいまいな人間系のスキルよりも,“知識”が確実に役立つ分野を学習しておくといいと考えています。
具体的には,情報セキュリティなどのスペシャリスト系のスキルや,人工知能などの学術的な知識などです。
特に,理系の科学的なスキルは普遍的なので,これから磨いておくと活きてきます。

このあたりの話は,来週わく☆すたセミナー『これからの時代に必要なスキルとその勉強法』でお話する予定です。
ご興味がある方は,ぜひご参加ください。

試験に受かるための“合格方法”を知ることは大切です。
ただ,それ以前に,“その試験に合格する必要があるのか?”,“その勉強をすることで何が得られるのか?”を考えることも大切です。

時代の変化の流れは速くなってきていて,いままでの常識が通用しないことも多くなってきています。
次の時代を見据えて,スキルアップしていきましょう。