意識して考え方を身につけ直す
今日,IPAで,「IT人材白書2012」が公表されました。
IT人材個人に対するメッセージとしては,「未来に生き残るため自ら行動せよ」だそうです。
IT関連の技術者は,一度技術を身につけたら終わりではなく,時代に合わせてどんどんスキルアップしていく必要があります。
そして,その,スキルアップするときに,「単なる知識の積み重ね」だと思っていると,ある時点で進歩が止まることもよくあります。
何かを学ぶ時には,何も知らない状態の方が,実は学びやすいことが多いのです。
事前にある程度知ってしまっていて,それが学ぶことと違ったりすると,新たに学ぶのはかえって難しくなります。
箸の持ち方や鉛筆の持ち方などは,一度間違えて覚えてしまうと,それを直すのは至難の業です。
ちゃんと意識して,練習して,1つ1つ矯正していく必要があるのです。
最初に覚えるときに正しく教わる方が,実は上達は早かったりします。
データベーススペシャリスト試験対策の企業研修を行うときには,本音として,現役バリバリの技術者に教えるよりも応用情報技術者試験に受かりたての新人に教える方が,やりやすかったりします。
業務でやっていると,「実務と違う」「試験問題の方がおかしい」と受けつけないひとが,かなりの割合で存在します。
「正規化」という概念は,最初からだと簡単に頭に入ってきますが,一度階層型データベース的な考え方を身につけてしまうと,正規化を理解するのが難しくなってしまいます。
ですので,一度,「自分の考えをいったん手放して,意識して変える」という作業が必要なのです。
ただ,それは,今までの経験を否定することにつながると感じるのか,結構大変な作業のようです。
それでも,意識して考え方を変えていかないと,技術にどんどんついていけなくなりますので,一度は覚悟して,ちゃんと勉強することが大切です。
IT関連で,こういった考え方の変換が必要なものは,実は結構いろいろあります。
代表的なものとしては,オブジェクト指向プログラミング。
構造化プログラミングに慣れていれば慣れているほど,抵抗が大きいようです。
まったく知らない新人だと,オブジェクト指向についてはすんなり頭に入るという傾向はあります。ただ,そうすると,既存の構造化技法は理解しづらくなるみたいです。
プログラミング言語は,種類によって考え方が結構違います。
情報処理技術者試験のアルゴリズムは,基本的にC言語を中心として学習してきた人には,比較的解きやすいのです。
C言語が作られるあたりで流行した,構造化プログラミングの考え方が中心になっているからです。
でも,COBOLを中心にしている人は,アルゴリズムが苦手になりやすい傾向があります。
これは言語のよしあし,というより,考え方の違いなので,意識して両方マスターすれば,どちらにも対応できると思います。
ネットワークは,最近は大丈夫な人が多いと思いますが,TCP/IP以外のネットワークを中心に勉強してきた人は,最近のネットワークは理解しづらいようです。
専用線やベーシック手順などが中心で,ギャランティ型のネットワークが主流だった頃の考え方があると,今のネットワークは理解するのが大変です。
勉強というものは,積み重なっていくものですが,勉強したことが必ずしもいつもプラスになるとは限りません。
もったいないですが,これは技術が変化して進歩する以上,避けられないことでもあります。
古い技術にこだわっていると,スキルを身につけることを阻害してしまうこともありますので,手放すことも大切です。
自分の持っている技術の考え方が,今の技術の考え方と違うと感じたら,身につけ直すことを意識してみましょう。