模範解答を導く道筋を頭に入れる

最近,個人的に感じていることなのですが,「別解をしっかり考える」って,試験勉強で問題演習を行う時には,あんまりやらない方がいいのかなぁ,って思っています。
試験で採点されるときには,もちろん,模範解答以外の正答,別解はありえます。
でも,試験勉強で採点するときに,「この解答は,別解としてOKだろうか」ということにこだわるのは,あんまり意味がないような気がしています。
情報処理技術者試験の場合,10年前ぐらいの試験勉強では,別解をいろいろ考えるというのがありました。
これは,解答が公開されておらず,また解答も1つとは限らなかったため,成り立っていた勉強法だと思います。
今は,解答が公開されており,基本的に解答は1つですので,それに従うのが基本だと考えています。
試験問題を作る時には一般的に,問題を作ると同時に,解答も作ります。
設問を考える段階で,想定している解答が,必ずあるのです。
そして,校正をしたり他の専門家が解き合わせをしたりして,答えが一意になるように問題を作成していきます。
ですので,ほとんどの場合は,問題文を正確に読み取って,さらに専門的なスキルがあれば,答えが1つになるようにできています。
試験勉強の段階では,その1つの模範解答に導く道筋やその考え方を,頭に入れることが大切です。
それが本番で,新たな試験問題を解くときの考え方になっていきます。
同じ試験区分では,考え方は基本的に同じですので,頭に入れた考え方が結構使えます。
このとき,あまり,「他の解もある」と,いろいろな考え方を入れると,かえって混乱すると思います。
もちろん,別解があるということはわかっていてもいいのですが,その考え方はあくまで,抜け道であることが多いので,こだわっても次にはつながりません。
いろんな考え方があるところだとは思いますが,私自身は,解答解説の原稿を書く時,なるべく試験センターの解答例に沿って解説を書きます。
「自分の考えの方が正しい」という感じの別解は,基本的に書きません。
というのは,試験センターの解答例が「想定している答え」で,それを導く考え方を身につけることが大切だと考えているからです。
何かを身につけるときに,武道などでよく言われる言葉に,「守破離」というのがあります。
物事を身につけるとき,最初は「守(しゅ)」,指導者の話を守る段階です。
その後,「破(は)」の段階で,指導者の話を破って,自分独自の工夫をしていきます。
試験で試されるのは,独自の工夫をする以前の,「守」の段階のスキルです。
独自の工夫ができるようになるほうがレベルは上ですが,それは別に求められていません。
まずは型にはまった,典型的なスキルを身につけることが大切です。
過去問をやるときには,その過去問を徹底的に理解し,そこに流れる出題者の意図や知ってほしいことを完全に理解するように努めましょう。
それが,次に自分で問題を解くときの,大きな力になります。
模範解答には,試験で求められていること,作問者が知ってほしいと感じている知識が詰め込まれています。
それをしっかり学ぶことで,今度の試験に向けての実力を,身につけていきましょう。