ごまかしの効く分野と効かない分野

私の子供の頃からのバイブルともいえる本,「知的生活の方法」に,英会話と英文和訳の違いについて書かれています。
ちなみに,著者の渡部昇一さんは上智大学で英文学の教授だった方です。
同じ英語でも,英会話はごまかしが効いて,当てずっぽうでもなんとかなることが多いです。
でも,英文和訳ということで,文章に和訳するときには,ごまかしは全然効きません。きちんと単語の意味や文脈を追わないと正解にはたどり着きません。
そのため教師は,試験で英文和訳の採点を一度でも行うと,正確な答案と当てずっぽうの答案の差があまりにも大きいのに愕然とし,英語は英文解釈に限ると思い込んでしまうそうです。
私も今まで情報処理技術者試験の模擬試験などの答案をたくさん採点してきましたが,IT関連の試験の中でも,ごまかしの効く分野と効かない分野は両方あるなぁ,と感じています。
比較的ごまかしが効きやすいのは,マネジメント系の分野です。
人間的なものなので正解が特定しにくいのと,書き方1つで点数が変わりやすいところでもあります。
ですので,試験でいうと,プロジェクトマネージャやITサービスマネージャあたりは,もともとごまかしが効きやすかったように感じています。ただ,今はそこに「PMBOK」は「ITIL」などの標準が入ってきて,「正解」を標準に求めることで,きちんと勉強しているかどうかを判定しているのではないかと思います。
マネジメント分野ということでは,情報セキュリティスペシャリストも半分ぐらいマネジメントなので,比較的ごまかしが効く方だと思います。暗号化の仕組みなどは,わかっているかどうかは一目瞭然なのですが,そういった技術を聞く問題は半分ぐらいなので,避けてもなんとか合格できたりします。
午後の点数での59点と60点の差は紙一重で,運の要素も結構あるように感じています。
逆にごまかしが全然効かないのが,テクノロジ系,特に数学がベースになっているアルゴリズムやデータベースなどです。
昔のソフトウェア開発技術者試験は,アルゴリズムとデータベースの2つが必須だったので,この2つの分野をしっかり理解していないとまず合格できなかったのですが,応用情報技術者試験になってから,その傾向はなくなっています。
私の個人的な感覚だと,今の応用情報技術者試験の方がごまかしが効きやすくなっているので,試験の質や弁別力としてはソフトウェア開発技術者試験の方が良かったなぁ,と感じています。
#ちなみに弁別力,というのはテスト理論の用語で,テストを受けたときに実力がある人が合格して実力がない人が落ちる,という風にテストでうまく振り分けることができる力のことです。
今実施されている試験だと,データベーススペシャリスト試験が一番,ごまかしが効かない傾向が強いです。
データベースは数学の理論ですし,正規化理論はごまかしはまったく効きません。
逆に,データベース理論をしっかり理解して身につけさえすれば,運の要素はほとんどなく合格できます。
エンベデッドシステムスペシャリスト試験も,理詰めの要素が大きいので,あまりごまかしは効かないかな,とも感じています。
組込系はパズルのような問題も多く,アルゴリズム(プログラミング)問題を解くときと同じような頭の使い方をします。そのため一歩一歩,確実に理解していくことが大切です。
ITに関する分野は幅広く,それぞれに必要な特性も違います。
ごまかしの効かない分野は特に,マスターするのにいくつものステップがありますので,じっくり時間をかけていきましょう。