機械的に暗記することの弊害
わく☆すた,美月です。
私が,とても悲しいと感じていることがあります。
それは,「機械的暗記マスター」の存在です。
機械的暗記マスターとは,私が作った造語ですが,「意味もわからず,ただいっぱい丸暗記している人」です。過去問などを完璧に暗記していたり,試験に出てくる用語は全部覚えているのですが,ちょっと聞き方をかえると,とたんに答えられなくなります。
最初に見かけた時には,そういう人もいるのかな,というぐらいだったのですが,結構頻繁に出会いますし,一生懸命勉強している人にほど多いので,無視できないような気がしています。
意味もわからず,ただ丸暗記しても,基本情報技術者試験ぐらいだったら,合格できると思います。大量の暗記ができるひとだったら,応用情報技術者試験,もしかしたら高度区分までいけるかもしれません。ただ,こうやって得た知識は,もっと上のレベルの勉強をしようと思ったり,実務で使おうと思ったときには,弊害になるのです。
私は,「暗記することが勉強の中心」だとは思っていません。
もちろん,暗記は必要ですし,暗記をいっぱいすることで量から質への転換,というのは起こると思ってはいますが,基本的に,覚えただけではあまり実際に使えません。学習というのは,私は「行動が変化するような学び」だと思っていますので,ただ覚えていても,社会人の学習としては不足だと思っています。
また,「勉強をすれば,それだけでしなかったよりも前に進んでいる」とも思っていません。なぜなら,機械的な暗記は,学習に対して「負の干渉」を行うこともあるからです。
このあたりの理論的なことは,「間違いだらけの学習論―なぜ勉強が身につかないか」に詳しく書いてあります。
ひとことでまとめると,理解していない無意味材料は,新しい学習を阻害することがよくあるということです。
機械的に覚えていると,「あ,それはもう知ってる」となって,新しく学習することを妨害します。
例えば,EV(アーンドバリュー)の考え方,やり方を説明しようとして,私が問題を出すと,「機械的暗記マスター」はそれを,「あ,平成14年のソフ開の午後1問2ですね」といって,答えだけ完璧に書きます。で,自分は出来た,と勘違いして,知ってる気になります。その後,講義でEVの説明をしても,「自分は知ってる」と思ってるので,聞き流して終わりです。
これだと,いつまで経っても,知識が積み重なっていきません。
新入社員研修で,私が手こずるのは,専門学校などで「答えを丸暗記」して,基本情報技術者試験に合格してきた方です。「覚えた知識」が邪魔して新しく学習することをやめるので,逆にできなくなって落ちこぼれる,ということもよくあります。それだったら,まっさらな状態の方が,伸びが早いのです。
もちろん,一度,「自分は暗記しているだけで,理解していなかった」ということに気づいて今までの機械的暗記の知識を手放すと,こういう人は上達は早いです。一度入った知識は,再構築されやすいので,その後理解しながら学習すれば,一からよりはもちろん早く学習できます。
私自身,第二種情報処理技術者(今の基本情報技術者)試験は丸暗記して受かったので,後で苦労しました。その後それで覚えた知識はいったん全部手放して,理解しながら勉強をしていったので,なんとか次のレベルにつないでいけた,という感じです。
情報処理技術者試験は,暗記だけでいける試験ではありません。頭が良くて国語力があって,問題文から答えを推測する力のある人は,暗記しただけで合格できるかもしれませんが,それはホントに希な例だと思います。筆記試験という制約があるので,暗記して点数が取れることはあるとは思いますが,本来,実務能力を問う試験なので,そんなことをしての合格を,試験センターも望んでないと思います。
なんか,今日はネガティブになってしまいましたが,情報処理技術者試験で,「機械的に暗記する」は,私は基本的におすすめしません。上のレベルの勉強を始めたときや,実務で使う時には,丸暗記はかえって弊害があることもある,というのは頭に入れておいて欲しいな,と思います。