株式会社わくわくスタディワールド

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技術はなるべく「暗記」しない

昔,大学に入りたての時,最初の頃の授業で先生に,
「高校までの勉強には答えがあったけど,大学の勉強には答えがあるとは限らない。
 問題と答えを自分で考えるのが大学からの勉強だ。」
ということを言われました。

確かに,大学時代に学んだ物理や生物は,高校の時とは違って,「ここはまだ明らかになってない」「ここには2つの説があって,まだ決着がついていない」ということだらけでした。
研究者は,その明らかになっていないことを確かめるために研究をするわけですし,科学はまだまだ発展途中ですので,わからないことだらけです。

そして,何かを「覚える」ことは,大学以上の講義ではほとんど求められませんでした。
試験でも,基本的に参考書などは持ち込み可でしたし,本を見ればわかることは見ればいい,その上で自分の頭で考えることが大切にされる試験でした。
当時はパソコンは持ってなかったのでポケコンを持ち込んで計算などをしていましたが,使えるものは何でも使って,解決できればそれでOKという感じでした。

多分,こういった試験の方が,高校までの試験よりも,実際に仕事や研究を行う時には,役に立つとは思います。
一人一人の本当の実力を見るためには,何か複雑な問題を解決させたり,何かものを完成させるといった課題を通じて,実際に出来上がったものをみるのが最適です。

ただ,大学の授業でそれができるのは,ある程度人数が少ないからだと思います。
実際に1人1人と対面で知り合って,その上での対面のテストだからこそ,ある程度可能になることではあります。

大学入試など,大人数でのテストとなると,そうはいきません。
自由記述だと採点の手間もかかりますし,1つ1つ考えて採点するため,アルバイトに外注というわけにもいかなくなります。
ですので,答えが1つになるように,問題を作って,それを出題します。

答えが1つの問題になると,「考えなくても,そのことを知ってさえいれば答えられる」という問題は出題しやすくなります。
「知識がある=その分野のことをわかっている」ということにはある程度相関関係があるので,知識を聞くことで間接的に,その理解度を問えると考えられるからです。

プログラミングができるかどうかを相手に聞くときに,「ポインタって知ってる?」って言って,やったことがあるかどうかを試す感じです。
実際にやっていれば,わざわざ覚えようとしなくても,自然に知っているはずの言葉を聞くことで,間接的にスキルを試しているのです。

ただ,そのやり方が行き渡って,試験で「用語を知っているかどうか」を聞く問題が多くなったので,「じゃあ,その言葉を覚えていさえすればいいんだ」という勉強の仕方をする人が増えてきました。
丸暗記すること=勉強,と誤解して,ひたすら用語を暗記する人たちです。

残念なことに,今の試験では,このやり方はある程度通用してしまいます。
一定レベル以上の大学の入試や難関の資格試験では通用しないので,ちゃんと思考力など他の力も磨く必要があることに気づけるのですが,そうでない場合には,「暗記して受かればそれでOK」と思ってしまいがちになります。

でも本来は,「用語を暗記する」ことが目的ではありません。
用語を覚えてしまうぐらい,その用語の周辺について理解していることが,大切なのです。

例えば,OSI基本参照モデルの7階層は,ネットワークに関する実務をやるなら,覚えている,というより身についていて当たり前の知識です。
「レイヤ3」といって,ネットワーク層やIPなどの一連のことがイメージできるぐらいは必要です。
語呂合わせで覚えればいい,というものでは本来ないのです。

情報処理技術者試験に出てくる様々な用語は全部,これらについて知っておくと,実務にも役立つという分野からピックアップした用語です。
ですので,なるべく「用語だけの暗記」じゃなく,意味や使い方について理解しておくと,活きた知識になります。

レベルが上がるほどに段々,覚えているだけでは通用しなくなってきます。
ですので,なるべく最初のうちから,暗記中心の勉強はしないで理解しながら学習することがおすすめです。
理解しながら学ぶ方が長く記憶に残りますし,何より勉強が楽しくなります。

試験までに時間がある今は特に,じっくり理解しながらの学習にいい時期です。
あせらず着実に,土台となる実力を身につけていきましょう。