株式会社わくわくスタディワールド

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ITサービスマネージャ試験合格のための,私の勉強法

私(美月)は,昨年(平成25年)秋に行われたITサービスマネージャ試験で,無事合格できました。
点数は,午前1 100点,午前2 88点,午後1 90点,午後2 Aです。
午前2で3問もミスしてしまったのが痛かったですが,それ以外は大体予定通りでした。

ですので,今回,私が行った勉強法を紹介したいと思います。
基本的に,この勉強法は実務経験者向けですので,ご自分の状況に合わせて必要なところを役立ててください。

前提条件(私のスペック)

前提として,私はこのITサービスマネージャの実務については,結構いろいろな経験があります。
前職が社員が6人しかいないベンチャー企業で,Webサービスの開発や運用にひととおり関わっていたので,自分でサーバを立てて管理する,ということはいっぱいやっていました。

また,独立してからも,いろんな会社でITの開発や運用に関してはコンサルティングしたり,実際に運用に関わったりしてきました。
ですので,論文ネタにはあまり困ることはありません。

ついでに言うと,ITサービスマネージャの前身であるテクニカルエンジニア(システム管理)の試験は,平成17年春に一発で合格しています。
その時に作成した,論文事例や合格再現論文が,「テクニカルエンジニア システム管理合格論文集」に掲載されています。
また,他の論述系の区分は,ひととおり全部合格しています。

ということで,「ちゃんと実務でやっている人向けの勉強法」ということで参考にしてください。

私の勉強法


今回,私がITサービスマネージャ試験を受けるにあたって行った勉強は,次の2つだけです。

1.ITIL V3の専門書を読むこと
2.過去問演習3年分

それぞれの勉強内容は,次のとおりです。

1.ITIL V3の専門書を読むこと

新しいバージョンのITILについては,少し不安があったので,受験を機にひととおり学び直すことにしました。

メインで使ったのは,「ITIL(R)V3 ファンデーション・ハンドブック」です。
こんな感じの本で,ページは354ページなので,それほど分厚くはありません。

itil

itSMF Japanで公式に作られているもので,基本的に通販のみの販売で,書店だと,八重洲ブックセンター(本店),ジュンク堂書店(池袋本店,大阪本店),書泉(書泉ブックタワー)の4店舗でのみ販売されています。
私は,書泉ブックタワーで手に入れました。

ホントは,5冊シリーズ(サービスストラテジ,サービスデザイン,サービストランジション,サービスオペレーション,継続的サービス改善)からなるITIL(R) 2011 editionのコア書籍が欲しかったのですが,セットで59,800円しますし,かなりの分量なので,ちょっと手を出せなかったです。
ただ,書店で見た限りでは詳しくて面白そうだったので,試験に関係なく,今後機会があれば,じっくり読んでみたいとも思っています。

ということで,「ITIL(R)V3 ファンデーション・ハンドブック」で,ITILの考え方や用語を学びつつ,問題を解いていきました。

2.過去問演習3年分

過去問演習は,「徹底解説ITサービスマネージャ本試験問題〈2013〉」を使いました。

ITサービスマネージャ試験の場合は,過去問集はこれ1択です。
素晴らしく良い,というより,下手に選んでない,年度ごとの過去問が載っている本はこれしかないからです。
午後2は論文事例はなく,解答のポイントが載っているだけですが,自分で解いて演習するのには使えると思います。

実際に午後1の問題を解いてみて,解答例と比較してみて,その答えに一意に決まる理由を,問題文の中から見つけ出していく,という演習が中心となります。
本試験問題集には,「問題文のここに根拠がある」という説明が丁寧にありますので,それを参考に納得していきました。

それに加え,午後1の問題文から,「ITサービスマネージャに求められる考え方,スキル」を汲み取っていくことを心がけました。
単に解くというだけでなく,試験の背景や,どんな会社のマネジメントなのか,人間関係はどうなっているのか,といったところも意識しながら問題を読んで,頭の中に事例をためていきました。

基本的には,やった過去問は3年分(午前2,午後1)のみです。
本試験問題集には3年分しかないというのもありますが,それ以上やってもあまり意味はなさそうだったからです。

ただ,3年分だけだと,午前2で知らない問題も多かったので,午前2で満点を狙うなら,過去5年分は全部見ておいた方が良かったかな,とも感じています。

ちなみに今回は,午後2対策は一切やっていません。
多分本番になれば書けると思っていましたし,実際書くことはできました。
ただ,久しぶりに論述式の文章を書いたので少し手間取ってしまい,答案を書き終わったのは試験終了5分前のギリギリでした。

余裕を持つためには,直前に1本ぐらい書いておけばよかったかな,とは思います。
ITサービスマネージャの場合は,他の論述系区分に受かっていて,ITサービスマネージャの視点を持つことができていれば,そんなに突破するのは難しくないと考えています。

ということで,実務経験があって,他の論述系区分に受かった経験があれば,過去問演習+アルファぐらいの勉強で合格できます。
論述式の部分ははじめてでも,ある程度の文章力がある方なら,何本か答案を書いてみればコツがつかめると思います。

実務の合間に勉強して,経験を客観的に証明するための資格としては,ITサービスマネージャは使えます。
運用管理,ITサービスマネジメントの実務経験者はぜひ,挑戦してみてください。

【補足1】 参考書やまとめ本を使わなかった理由

今回の勉強にあたっては,過去問集とITILのハンドブック以外は使いませんでした。
参考書やITILについてまとめた本を読んでいるうちに,「なんか著者の変な思い込みが入っていて変」と感じることが多くあったからです。

これは,私が参考書を書くようになってからすごく感じるようになったのですが,本には,どうしてもその著者の「考え方」が入ってきます。

本を書くときには,キュレーション(著者独自の判断で,情報を取捨選択する)ということを行います。
ですので,書く人が重要と判断しなかったら,ホントは大事な情報でも,抜け落ちることがあります。
情報処理技術者試験の参考書は特に,著者独自の判断で,書く人が苦手な分野がそもそも載っていなかったり,情報が古かったりすることがよくあります。

ITサービスマネージャ試験は,受験者が秋試験で最も少ない試験区分で,平成25年秋の申込者数は,6,029名です。
ですので,参考書が全然充実していない区分でもあります。
今回,ひととおりの参考書は見てみたのですが,内容が古かったり,著者の思い込みが強くて出題範囲からずれていると感じられる本ばかりでしたので,使わないことにしました。

そこで,「今回は,ITILを中心に,公式の一次情報(オリジナル)を使って勉強しよう」と考えました。

【補足2】 論述系の試験がはじめての方へ

論述系が初めての方は,ある程度文章を書く練習をする必要がありますが,これは半分以上は文章力の問題なので,試験勉強よりも普段文章を書き慣れているかどうかがカギとなります。

論述式の答案の書き方として,情報処理技術者試験の午後2試験で特有なのは,

自分の経験中心ではなく,問題文で問われていることに答えること
その試験区分で求められている人物像の立場で書くこと
その試験区分に求められているスキルがあることを文章で示すこと

の3つだけです。

それ以外は,単純に文章力の問題です。
このあたりは,下手に情報処理技術者試験の参考書に書いてあることよりも,小論文や現代文など,文章の専門家の書いた本でも読んだ方が参考になります。
一般的な参考書にあるような文章の書き方は,「理科系の作文技術」が大元になっていると考えれるものが多いので,できればオリジナルで読んでみるのがおすすめです。

【補足3】 実務経験がない方へ

まず,ITサービスマネージャ試験に関しては,実務経験がない場合には,別に受けなくてもいいんじゃないかとは考えています。
本来,経験者に向けた試験ですし,実務経験がないのに取ってもあまり評価はされません。
開発者なら,システムアーキテクト試験に受かれば十分だと思いますし,試験をコンプリートすること以外の意義はあまりないように感じています。

ITサービスマネージャ,運用管理者の立場を知りたい,というのでしたら,事例をいろいろ学習して,その実務を学ぶ勉強をすればいいです。そうすれば,それが実務経験の補完につながりますし,合格もできると思います。