株式会社わくわくスタディワールド

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試験区分ごとの「適性」

わく☆すた,美月です。
マーケティングをやっている人に,うちの会社で資格試験対策をしているという話をすると,よく「合格保証をつければ売れるよ」と言われます。あと,「これさえあれば応用情報技術者試験に受かる,という教材を教えてください」という話も良く聞きます。残念ながら,このどちらもできません。
情報処理技術者試験の勉強には,向き不向きがあります。
誰でも学ぶことが可能な義務教育と違って,IT系の職業には適性があります。適性が合わない時に,無理して合わせようとしても自分もまわりも不幸ですので,自分に向いた,楽しめる職業につくのが一番です。IT系の仕事,といってもプログラミングだけではないので,いろんな適性の人に向いた職業はもちろんあります。そのために12種目もある,とも言えます。
情報処理技術者試験のうち,「合格保証」をつけて売り出してもいいかな,と感じるのは,唯一,ITパスポートだけです。午前試験だけのITパスポートで60%正答する,というゴールだったら,敷居も高くないですし,誰にでも到達できると思います。
基本情報技術者試験は,9割以上の方は勉強すれば合格できるとは思いますが,たまにどうしても苦手な方がいます。そういう方が合格できない一番大きな要因は「アルゴリズム」と「プログラミング」です。アルゴリズムに関しては,マスターするまでの時間の個人差がとても大きいため,半年かけても合格レベルまでいかない場合も結構あります。去年まではアルゴリズムとプログラミングだけで,午後の配点の50%を占めていたので,この2つができないとお手上げでした。今年からは,プログラミングが1問になり,アルゴリズム+プログラミングで40%,他が全部できれば合格できるようにはなりました。プログラミングの方は,アルゴリズム的な力がなくても大丈夫な,COBOLやアセンブラを学習するという手がありますので,受かりやすくなったとは言えると思います。
今までの試験で,プログラミングの適性が最も必要だったのは,旧ソフトウェア開発技術者試験です。この試験に関しては,「どうしても合格できない」人は実は大勢いました。アルゴリズムの難易度が結構高く,午後2のアルゴリズム1問で合否が決まる,ということがあったためです。そのため,試験制度が変わって,「応用情報技術者」になったのではないかと考えています。
応用情報技術者試験は,「SE」と「コンサルタント」の両方の職種に合わせた資格です。ですので,「アルゴリズムが必須」ではなくなりましたし,プログラミングがわからなくても合格できるようにはなりました。といっても,アルゴリズムを選ばない代わりに,経営戦略についてちゃんと勉強する必要があるので,それはそれで向き不向きや好き嫌いがあります。選択の幅が広がったのは事実ですが,「誰でもOK」というわけではないところが悩ましいところです。
個人的に,一番「適性」に関係ないかな,と感じているのは,実はネットワークスペシャリスト試験です。
勉強量が多く,積み重ねが必要ではありますが,きちんと順を追って実力をつけていけば,着実に合格レベルに到達します。3年,5年,人によっては7年ぐらいかかって取得する人もいますが,逆に言うと,年数をかけてあきらめずに知識を積み上げていくことで,確実に合格できる試験であると言えます。私が10年前にネットワークスペシャリスト試験を受験した頃の仲間は,今改めて考えてみると,途中であきらめなかった人はほとんど合格しています。やり方さえ間違えなければ,基本情報技術者試験合格レベルからだと,十分合格できる試験です。もちろん,勉強量は情報処理技術者試験の中では1,2を争うぐらい多いので,「勉強を長く続けていく根気」という適性が一番必要な試験かもしれません。
データベーススペシャリスト試験は,好き嫌い,向き不向きが大きく分かれる試験ですが,意外と適性は関係ないように感じています。正規化やER図について,きちんとわかれば合格できるのですが,しきい値を超えるのには個人差が大きいです。ただ,しきい値さえ超えれば受かるので,3年も4年もかけて,やっとしきい値を超えて合格,という人もいます。「わからない状態でもあきらめない」根気が適性だとも言えます。ネットワークスペシャリストとデータベーススペシャリストは両方持っている人が結構多いのですが,分野が違う割に同じような適性が必要だからかな,と感じています。
情報セキュリティスペシャリスト試験は,受からない人はなかなか受からないです。国語力が一番必要,という時にもお話しましたが,セキュリティは「問題文の会社の状況」に合わせて考える必要があるので,知識だけでは対応できません。個人的な感覚では,自分が話すのが大好きで人の話を聞けない,という人は受かりにくい傾向にあるように思います。
論文系5区分は,それほど適性に差はないと考えています。論文系って,全部揃えてる人も多いですし,スペシャリスト系ほど,試験区分間の差はありません。論文系で大事なのは,「きちんと文章で言いたいことを伝えられる力」や「文章から言いたいことが読み取れる力」,つまり国語力だと思います。これがないと,論文系はまず受かりませんし,逆に国語力がある方は,スペシャリスト系よりも楽に受かるんじゃないかと考えています。実際,ソフトウェア開発技術者やネットワークスペシャリストには苦戦したけど,システム監査には楽に受かった,という方もいます。
あと,ITストラテジストやプロジェクトマネージャ,システム監査の3試験は,論文を書く時に高い視点が求められますので,物事を俯瞰的に見る「大局観」が必要だとも感じています。この,物事を抽象化して高い視点から見る能力も,適性の一つです。(もちろん磨くことは可能です。)
ということで,これはあくまで私の感覚ですが,もし良かったら,受験区分を選ぶ時の参考にしてみてください。