応用情報技術者試験・高度午前1の試験範囲変更
昨日に引き続き,試験範囲変更ネタです。
午前の出題範囲は,基本情報技術者試験以上は全部共通で,基本情報技術者がレベル2,応用情報技術者と高度午前1がレベル3,と難易度が違うだけです。
高度午前2では,出題範囲が限られて,難易度のレベルが分野によってレベル4だったりレベル3だったりします。
そして,今回の情報処理技術者試験の「出題範囲」および「シラバス」改訂によりできた改訂版,「試験要綱Ver1.5(PDF)」だと,午前の出題範囲がいろいろ変更されています。
プレス発表によると,見直しの観点は,次の通りです。
〔見直しにおける主な観点〕
(1) 多様化する脅威や情報セキュリティ対策の追加等、情報セキュリティ分野の全面見直し
(2) クラウドコンピューティングの急速な普及
(3) Webアプリケーション開発の拡大と関連技術の進歩
(4) スマートグリッド、ソーシャルメディア等、IT社会基盤の進展
(5) 経営戦略マネジメント、法務等、ストラテジ系分野の充実
(6) その他、重要項目の明示、用語の整理 等
ですので,一番変わっているのは情報セキュリティ分野です。4.11セキュリティでは,かなりの加筆・修正が行われています。
具体的には,情報の機密性・完全性・可用性,脅威,脆弱性などの大切な観点が明記されました。
そして,攻撃手法として,SQLインジェクション,クロスサイトスクリプティング,DoS攻撃,フィッシング,標的型攻撃などが加わっています。
さらに,セキュリティ評価技術に,CC(コモンクライテリア)に加えて,JISEC(ITセキュリティ評価及び認証制度)やJCMVP(暗号モジュール試験及び認証制度)が記述されています。
そして,情報セキュリティ対策が具体的に書き換えられていて,「アカウント管理,アクセス制御,ログ管理,マルウェア対策,不正アクセス対策,ファイアウォール,WAF,侵入検知/侵入防止,検疫ネットワーク,情報漏えい対策,無線LANセキュリティ(WPA2ほか),携帯端末(携帯電話,スマートフォン,タブレット端末ほか)のセキュリティ,入退室管理,情報セキュリティ教育,ディジタルフォレンジックスなど」となっています。
セキュリティ実装技術にも,セキュアプロトコル(IPSec,SSL,SSHほか),認証プロトコル(SPF,DKIM,SMTP-AUTH,OAuth,DNSSECほか),ネットワークセキュリティ,データベースセキュリティが加わっています。
元々出題されていた内容が大半で,それに合わせた感じですが,ちゃんと明記されたので,ここに挙げられた用語は,ひととおり押さえておくといいと思います。
あと,ストラテジ系の3分野に加筆が多く,以下の用語が加わっています。
7.システム戦略
IT投資マネジメント,IT経営力指標,オフショア,ソリューションビジネスの種類とサービス形態,クラウドコンピューティング(PaaS,IaaSほか),人材育成計画,ディジタルディバイド,投資の意思決定法(PBP,DCF法ほか),ITポートフォリオ,要件定義手法,調達計画
8.経営戦略
ブルーオーシャン戦略,シェアドサービス,インキュベータ,消費者行動モデル,広告戦略,ブランド戦略,価格戦略,PEST分析,企業内情報ポータル(EIP),成功事例,発想法,スマートグリッド,Web会議システム,ユビキタスコンピューティング,ソーシャルメディア(SNS,ミニブログほか),ロングテール,個人用情報機器(携帯電話,スマートフォン,タブレット端末ほか)
9.企業と法務
コーポレートアイデンティティ,グリーンIT,株式公開(IPO),経済性計算,IFRS,刑法(ウィルス作成罪ほか),プロバイダ責任制限法,特定電子メール法,パブリックドメイン,クリエイティブコモンズ,公益通報者保護法,特定商取引法,リサイクル法,各種コード(文字コードほか)
それ以外の分野でも細かく加筆・修正がなされています。
用語の修正レベルですが,プロジェクトマネジメントとシステム監査は,修正が多いです。
ちなみに,昨日とりあげた待ち行列理論は,ネットワークスペシャリストの午後からはなくなりましたが,午前では,1.1基礎理論の1.1.2応用数学に分類される内容で,特に変更はありません。基礎理論では,プログラム言語にECMAScriptが加わったのが,おもな変更点です。
応用情報技術者試験の午後の出題範囲は,それほど大きくは変わっていません。
経営戦略で事業継続計画(BCP)が,システムアーキテクチャで仮想化技術が,ITサービスマネジメントで仮想環境の運用管理が加わっていますが,これらはすでに,午後問題で一度,出題されています。
出題されていないところでの変更は,情報セキュリティでの「情報セキュリティマネジメント,PKI,個人情報保護」などの追加です。応用情報技術者試験になってから,情報セキュリティマネジメントについては午後で一度も出題されていませんので,このあたりが秋試験に出てくる可能性は高いかな,と思います。
私の書籍,「徹底攻略 応用情報技術者教科書 平成24年度」は,出題傾向を見て,なるべく新しい技術もちゃんと掲載するところに注力しています。ですので,ここに挙げた用語の,8割方は押さえていると思いますが,それでも足りない部分は少しはあります。
書籍は,すぐには変更できませんので,来年度の改訂で対応する予定です。
セミナーについては,すぐに対応できますので,「スタートアップセミナー 合格への道しるべ 応用情報技術者」以降,新しい出題範囲に対応します。
出題範囲は,時代に合わせてどんどん変更されていきます。
今の時代に合った知識を身につけるためにも,新しいことにもどんどん興味を持っていきましょう。