情報処理技術者試験:旧資格と新資格の対応関係

今日,なんとなくネットをみていて,そこで見かけたある方の肩書きに,
「取得資格は,情報セキュリティアドミニストレータ(現:情報セキュリティスペシャリスト),上級システムアドミニストレータ(現:ITストラテジスト)」
と書いてあるのを見て,思わず,
「ちょっと待って,それは違う!」
と,思いっきりツッコミを入れてしまいました。
確かに,平成21年度の試験制度改定にあたって,「情報処理技術者試験 新試験制度の手引き(PDF)」の「図8 新試験と現行試験の体系図」には点線が引いてあって,これらの資格には一応対応関係があります。
ちなみに,点線は,
「試験のレベル感において,おおむね相当するが,新試験区分において出題範囲の一定の拡大や技術面の部分的な補完などがある」
という意味です。実線が引いてある方が,
「試験の対象範囲・レベル感においておおむね相当する」
ということで,新旧対応している資格だと考えられています。
情報セキュリティに関する試験の場合,実線で対応付けられているのは「テクニカルエンジニア(情報セキュリティ)」です。
ですので,現在の情報セキュリティスペシャリストの資格は,テクニカルエンジニア(情報セキュリティ)の後継資格であると考えられます。
また,問題のレベル的にも一般的な認知でも,明らかに
「情報セキュリティスペシャリスト > 情報セキュリティアドミニストレータ」
だと思います。
情報セキュリティアドミニストレータで,情報セキュリティスペシャリストの代わりにはなりません。
ITストラテジストの方も,これはシステムアナリストの後継資格だと,一般には考えられていると思います。
先ほどの公式の体系図では,上級システムアドミニストレータとシステムアナリストの両方の流れをくむことにはなっていますが,内容的には明らかに,システムアナリスト寄りです。こちらも,上級システムアドミニストレータでは,ITストラテジストの代わりにはならないと思います。
ということで,時々混乱があることもある情報処理技術者試験の新旧資格対応を,創始年月順にいくつかに分けて,改めて整理してみたいと思います。(名称変更がないものは,1つにまとめています。)
1.基本情報技術者系
第二種情報処理技術者(昭和44年から)-> 基本情報技術者(平成13年から)
2.応用情報技術者系
第一種情報処理技術者(昭和44年から)-> ソフトウェア開発技術者(平成13年から)
-> 応用情報技術者(平成21年から)
3.特種(SE王道)資格系
特種情報処理技術者(昭和46年から)-> アプリケーションエンジニア(平成6年から)
-> システムアーキテクト(平成21年から)
4.システム監査系
情報処理システム監査技術者(昭和61年から)-> システム監査技術者(平成6年から)
5.ネットワークスペシャリスト系
オンライン情報処理技術者(昭和63年から)
-> ネットワークスペシャリスト(平成6年から)
-> テクニカルエンジニア(ネットワーク)(平成13年から)
-> ネットワークスペシャリスト(平成21年から)
6.IT経営系
システムアナリスト(平成6年から) -> ITストラテジスト(平成21年から)
7.プロジェクトマネージャ系
プロジェクトマネージャ(平成6年から) ※名称変更は1度もなし
8.初級・ユーザ系
システムアドミニストレータ(平成6年から)
-> 初級システムアドミニストレータ(平成8年から)
-> ITパスポート(平成21年から)
※ITパスポートは大幅に改訂されたので,試験の内容としては大きく異なる
9.データベーススペシャリスト系
データベーススペシャリスト(平成7年から)
-> テクニカルエンジニア(データベース)(平成13年から)
-> データベーススペシャリスト(平成21年から)
10.運用管理系
システム運用管理エンジニア(平成7年から)
-> テクニカルエンジニア(システム管理)(平成13年から)
-> ITサービスマネージャ(平成21年から)
11.組込み技術者系
マイコン応用システムエンジニア(平成8年から)
-> テクニカルエンジニア(エンベデッドシステム)(平成13年から)
-> エンベデッドシステムスペシャリスト(平成21年から)
12.情報セキュリティ系
情報セキュリティアドミニストレータ(平成13年~平成20年)
テクニカルエンジニア(情報セキュリティ)(平成18年から)
-> 情報セキュリティスペシャリスト(平成21年から)
※2つの試験が同時並行で実施されていたが,平成21年にテクニカルエンジニアの方を中心に統合
現行12区分の系譜をたどると,以上だと思います。
その他,現在系列的にもなくなった資格については,次のとおりです。
・プロダクションエンジニア(平成7年~12年)
プログラマのための高度資格でした。平成13年の制度改定時に,ソフトウェア開発技術者に吸収される形でなくなっています。
難易度的には,プロダクションエンジニア>ソフトウェア開発技術者です。
・上級システムアドミニストレータ(平成8年~20年)
上級ユーザ向けの資格でした。平成21年の制度改定時に,ITストラテジストに吸収される形でなくなっています。
難易度的には,上級システムアドミニストレータ<ITストラテジストです。
・初級システムアドミニストレータ(平成8年~21年)
初級ユーザ向けの資格でした。一応,ITパスポートがその流れを汲む資格とはなっています。
難易度的には,初級システムアドミニストレータ>ITパスポートです。
・情報セキュリティアドミニストレータ(平成13年~20年)
情報セキュリティに関する,ユーザ向けの資格でした。一応,情報セキュリティスペシャリストがその流れを汲む資格となっています。
難易度的には,情報セキュリティアドミニストレータ<情報セキュリティスペシャリストです。
以上です。
試験区分の内容自体は,試験センターの「情報処理技術者試験制度の概要」に,昭和44年の創立から,すべて掲載されています。
何か誤り,「ここは違うと思っている」というのがありましたら,遠慮なくコメントください。
もちろん,同じ試験系統の中でも,だんだんやさしくなっていたり,試験範囲が変更されたり等の変化もあります。
ITの試験なので,国家試験でもどんどん時代によって変わっていくという感じかな,と思っています。
個人的には,対応関係で(現在の~に対応)と書くよりも,現行資格を取り直した方がいいように感じています。
時代によって内容もどんどん新しくなりますし,新技術のキャッチアップには,資格を更新するため勉強することは有効です。
昔の資格がでてきたときに,その資格を知るためにお役立ていただければ幸いです。