株式会社わくわくスタディワールド

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「まとも回帰」現象

最近,なんとなくですが,世の中が今までとは違う方向に帰って行っているように感じています。

ちょっと前までは,効率的にお金儲けしたり,人を出し抜いて得をしたりした方が偉い,みたいな風潮が中心でした。
だんだん最近は,そうではない,地味でも暖かい暮らしとか,損得より大切なことにお金を使うとか,そんな感じの方向に流れているように感じています。

もちろん,流れは緩やかなので,まだまだ資本主義の競争社会,というのが世の中の主流だとは思います。
政治や経済は,そんな感じで流れているようには感じています。
ただ,そうではなく,個人の,一人一人のレベルでは,そんな競争に疲れて,もっと誠実や社会を求めている,そんな気がしています。

先日,Yahooニュースで,美輪明宏さんのインタビュー記事を読んだときに,「まとも回帰」現象という言葉が目に入りました。
最近なんとなく感じていて言葉にできなかったことが,うまく言葉で言い表されてる感じで,すごく心に響きました。

「ヨイトマケの唄」自体は,私の大好きな歌手,槇原敬之さんがカバーしていたので,以前から知っていました。
でも,この母と子の普遍的な愛を書いた歌は,そんなに流行してはいませんでした。
それが去年の年末,紅白歌合戦で披露されることで,一気に有名になった感じです。

こんな感じの,本当に心に響く歌が,そのままで受け入れられる時代が来たのかな,と最近は感じています。

インターネットが普及して,マスコミ以外の人でも情報が伝達できる時代になって,価値観が変わってきているように感じています。
もちろん短絡的な,刺激的なものも普及しますが,人間は本当は,本当に良いものを追い求めているような気がしています。

一生懸命頑張って,競争で勝って富を手に入れる,みたいなゲームには,そろそろ疲れている人も多いんじゃないかと思います。
だんだん,もっと自然な,地味で正直なものの方が,受け入れられるようになってきているように感じます。


試験で例えると,まともとは,「きちんと勉強や経験を積み重ねて実力をつけて,試験に合格する」ことだと考えています。
試験とは本来,実力を確認するために行うものですし,試験合格は目的ではなく結果です。

昔,1970年代から80年代ぐらいの,私が子供の頃には,「実力をつけて余裕で合格するのが王道。テクニックは邪道」みたいな考え方が主流だったように覚えています。
その後,だんだん試験テクニックが流行してきて,受験勉強をはじめ,いろんな試験の勉強でいろんなテクニックが開発されました。

「忙しいんだから,ちょっと邪道でもいいから,楽して勉強しよう」という風潮がどんどんエスカレートして,勉強内容ではなく,テクニック自体の方がどんどん進化していきました。
「こうすれば楽に,あまり勉強しなくても合格できる」というテクニックは受けるので,参考書や研修なども,どんどんそういった方向に進化していきました。
個人的にも,いろんな受験テクニックを知るのは大好きだったので,いろいろ研究してきました。

でも,そうやってテクニックを駆使して合格しても,あとには少し後悔とむなしさが残ります。
なんとなく後ろめたくなって,「資格は持ってるけどその知識が使えない」というギャップに苦しむことになります。

私自身,最初の二種(今の基本情報技術者)合格の時には,そんな感じでした。
3日ぐらいで過去問を詰め込んで,最後に直前マスターみたいな雑誌の付録を覚えただけで,なぜか合格してしまいました。
でも,それで受かっても,直前で暗記した知識はすぐ抜け落ちますし,ステップアップすることができません。
結局,次の一種(今の応用情報技術者)を受験するときに,もう一度,一から勉強し直すことになりました。

本当に苦しい時には別に,テクニックに頼ったっていいと思います。
どうしても仕事に必要で,資格だけ欲しいと言うこともあると思います。

ただ,「試験合格だけでなく,ちゃんと勉強して実力をつけたい」という人も大勢いて,最近はそういう人が増えているように感じています。
これが,私の感じる,試験勉強での「まとも回帰」現象です。

私は,そんな人に向けて,ちゃんと積み重ねて,実力がつくような本や教材を作っていこうと考えています。
テクニック本は,試験書籍コーナーにすでにあふれていますので,もう十分かな,とも思います。

元気にポジティブに頑張る時代は,なんとなく終わってる気がします。
地に足をつけて,地道に進んでいく,まともな時代に回帰している,そんな流れを感じます。

あまり即効性を求めず,一歩一歩,堅実に歩んでいきましょう。