株式会社わくわくスタディワールド

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情報処理技術者試験の受験者減少と今後

本日,IPA(情報処理推進機構)より,「「平成25年度秋期情報処理技術者試験」の応募者数について」が公表されました。

見事に,全区分で受験者が減ってますね。
全体で,前年同期比 95.3%の201,150人だそうですけど,だいたいどの区分も,同じぐらいの減少です。
特にどの区分が人気,という流行の傾向もない感じで,安定して落ちている感じですね。

こうなると,少子化などの人口全体の話だけでなく,単純に「情報処理技術者試験の人気が低下」していることが伺えます。
このところ,いろんなところで話を聞いたりしていたのですが,大きな流れとして,情報処理技術者試験の人気が低下していることの原因には,次の3つのようなことがあるのでは,と考えています。

1.情報処理技術者試験合格者の質の低下
2.情報処理教育,特に初級レベルの教育の質が低いこと
3.資格至上主義の終焉


まず,1については,最近考えさせられることが多くありました。
情報処理技術者試験の高度区分に合格していても,「この人が優秀で,スキルをちゃんと持っている」と思えないような人が増えてきたのです。

この一番の直接的原因は,以前に比べて合格率が上がり,実質的な合格ラインが下がったことが挙げられます。
そのため,いろんな企業で報奨金などの額が引き下げられたり,資格の評価を落としたりしています。
ITスキル標準に合わせる,という名目のもと,ほんとにレベル4(そこそこ高度な技術者)を「業務と併せて」認定する,補助的な資格になった感じです。

あともう一つ,私が最近すごく危惧しているのが,「本来やるべきではない勉強で受かった,付け焼き刃の合格者」の増加です。
合格ラインが下がったことで,昔なら試験が難しすぎて無理だった,丸暗記やテクニックだけでの合格が,場合によっては可能になってしまっています。

ここ10年ぐらいで,速攻サプリや論文の書き方テクニックなど,様々な新しいテクニックが出てきて,そしてそれが定着してきました。
禁じ手として一部の人が使う,ぐらいだったはずのものが,いつのまにか,「それが基本でデフォルト」というぐらいまで広まってきています。
そのため,本来身につけるべき知識が身についていない合格者が増えてきて,それが合格者の評価を落とす一因にもなっています。

こうなってしまうと,「日々まじめに仕事をしてスキルを伸ばしている人よりも,仕事ができず干されたので毎日テクニックを勉強してる人の方が受かりやすい」ことになってしまい,資格の意義に疑問を持つ人が増えてくる,ということになってしまいます。

ですので,自分も含めて,目先のことだけ考えて,合格テクニックを教えるのはやめた方がいいのでは,と最近は考えています。

次に,2について,ITパスポートから応用情報技術者までの基本的な教育での教育レベルが,全体的にすごく低いと,私は感じています。
具体的には,10年前ぐらいの基本を,平気でそのまま教えている教材が多く,これだと役に立たないし,なにより勉強してて面白くありません。

多分,ITパスポートの勉強などは,市販の本を1冊適当に買ってきてやる,という方が一番多いんじゃないかと思います。
そのときに,「とっつきやすくって,わかりやすい本」というのは結構ありますが,「ITの仕組みが本当にわかって,おもしろさが伝わる本」というのはないんじゃないかと感じています。
みんな,「いかに暗記して点数をとるか」が中心になっていて,これだと,試験に受かったらきれいさっぱり忘れてしまう,ということになりがちです。
かといって,通信教育などでしっかり学べばいいのか,というと,こういった教材は,市販本よりもさらに内容が古いものが多く,あまりおすすめできるものはないです。

本来,初心者の時にこそ,しっかりと基本的な仕組みを理解できるような教育をして,ITの面白さを感じてもらうことが大切だと考えているのですが,試験を優先にすることで,かえってITから離れる人を増やしているように感じています。
ITの中でも,プログラミングだけは,新しい教材やネットサービスがいっぱい出てきて楽しそうなのですが,基礎理論などのコンピュータ関連の知識については,今のところないのが現状です。

3については,昔は「資格さえ取れば」と思う人が多かったような気がしますが,今はそれだけではダメ,とわかっている人が増えている気がします。
実際,資格が使える場面というのは限られていて,年齢や業務経験などほかの状況によっては,とっても役立たないことも多いです。
このあたりは,幻想がなくなったというだけなので,妥当かな,と考えています。

こういった状況を改善するには,「情報処理技術者試験をどうするか」といった視点ではなく,もうすこし大きな目で見て,IT教育全般を変えていく必要があると感じています。
そのために,今後はいろいろと活動していきたいと考えています。
今準備しているものがあるので,もうちょっとしたら,お見せできると思います。(多分,9月中には。。。)

学問は本来,それ自体がとっても面白いもので,知的好奇心を満たす,高尚な遊びです。
試験は,「自分の実力がついたかどうか」を試すための,クリアしたらうれしい目標で,それを目指すことで段階的にステップアップが可能になります。
もっと原点にかえって,みんなが楽しみながら学んでいけるようになればいいな,とすごく感じています。