株式会社わくわくスタディワールド

諦めて見切りをつけることも考える

先日,秋の情報処理技術者試験の合格発表がありました。
合格された方,おめでとうございます。
残念ながら不合格だった方は,次もありますので頑張りましょう。

。。。という風に,今までだったら無条件に,「諦めないで次にいきましょう」と応援することを,私はしてきました。
つい先日の合格発表日の記事でも,そんなことを書きました。

短期的にはそれで,特に問題ないとは思います。
ただ,「諦めないでずっと受け続ける」ということが本当にいいことなのかどうか,最近疑問を感じています。

さっさと試験を受けることを諦めて他のことをした方が,その人にとっていいのかもしれない,と感じる人は結構いるのです。

先日,為末大さんの「諦める力 〈勝てないのは努力が足りないからじゃない〉」という本を読みました。
為末さんは,ご存じの方も多いと思いますが,陸上の400mハードルでの世界選手権の銅メダリストで,オリンピックにも2回出場された方です。

この本には,すごく現実的に,「諦める」ことの大切さについて書かれています。

「夢はかなう」「可能性は無限大」という言葉で頑張り続けていくこと,諦めないことは推奨されがちですが,人生には限りがありますし,それを頑張る分,他のことができなくなります。
途中で現実的に,「この夢はもうかなわない」という風に見切りをつけることも大切なのです。

この本では,アスリートとしてトップになれそうでなれなかった人たちのことについて取り上げられています。
かなりのレベルのアスリートの方でも,競技を頑張り続けた結果,30歳を超えてもオリンピック出場などの結果を出せなかった時には,その後の就職先がなくて苦労するのだそうです。

「体育会系が就職に有利なのは新卒まで」ということで,新卒にまざれるぐらいまでに就職しないと,その後会社に就職することは難しくなるとのことです。
確かに,トップレベルに近くても,トップレベルになれない場合には,その後路頭に迷うことはよく起こります。

私自身も実は,夢を諦めて途中で見切りをつけています。

私は,子供の頃からずっと,科学者になるのが夢でした。
ですので,大学院の博士課程までいって,ずーっと研究漬けの生活を送っていました。
京大理学部,日本の科学研究の最高峰で頑張っていれば,きっと一流の研究者になれて,ノーベル賞だって取れるかも。。。

。。。甘かったです。
日本のトップ研究者集団は,層も厚く,ものすごく頭の切れる人たちの集まりでした。
自分が逆立ちしてもかなわないような天才・秀才がごろごろしていて,そしてその人達が,人生をすべて捧げて研究に没頭している。。。

研究を続けていくうちに,だんだん,「自分が研究者の世界で生き残るのは無理」ということが分かってきました。
研究は好きだけど,何もかも捨てて打ち込めるほど私は研究にはまれないし,そこまで頭も良くなくって,独創的な研究も浮かばない。。。
残念だけど,冷静に自分を客観視すると,研究者の世界にはそれほど向いていなかったと思います。

やめるきっかけは,博士課程1年の時に,日本学術振興会特別研究員に応募して,落ちたことです。
この制度は,博士課程やポスドク(博士課程修了後の就職の決まらない研究者)に向けて,給料のような形のお金の支給があって,これに決まると生活の心配をせずに研究に専念することができます。

しかし,落ちてしまったので,日本育英会の奨学金を中心に,アルバイトをしながら生計を立てることになりました。
奨学金の借金総額は,その頃すでに400万円を超えていて,博士課程修了までいくと,700万円を超えることが予想されました。
先日やっと,奨学金を全額返し終えたのですが,最後までいってたらまだ払い終えられていないので良かったです。

ということで,研究で使っていた,UNIXワークステーションを扱うスキルをもとに,就職しました。
当時25歳ということで,ギリギリ新卒の枠に混ぜてもらっての入社でした。
ちょうどITバブルの頃でもありましたし,これより遅かったら,就職にももっと苦労していたと思います。

。。。と,自分語りが長くなってしまいましたが,私は諦めたことで,次の人生につながりました。
諦めて逃げることは,つらくもありましたが,早めに現実が直視できたことは,今になってみると良かったと感じています。

試験や勉強は,「良いこと」をしていると思う分,それをやり続けることは,「絶対的な良いこと」と思われがちです。
でも,「試験に逃げてる」「勉強に逃げてる」人は結構いると思いますし,本来今やるべきことは,机の上での勉強じゃないかもしれないのです。
現実を直視したら,今やることがベターなのは,会社の人間関係を円滑にすることだったり,婚活をすることだったりするかもしれません。

残念ながら,年をとるにつれて,「自分ができること」の可能性は狭まってきます。
現実的に,「試験に受かれば出世や転職に役立つ」と考えられるのは,30代くらいまでです。

もちろん,趣味で試験を受けるのは全然OKですし,勉強したことで得ることはあると思います。
ただ,その場合には,他の大切なことも考えつつ,息抜きの範囲でやるといいんじゃないかな,と感じています。

今の人生の状況を冷静に見つめて,次になにをやるか考えていきましょう。