株式会社わくわくスタディワールド

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統計から情報処理技術者試験の受け時を考える

IPAの「プレス発表:平成25年度秋期情報処理技術者試験(応用情報技術者試験、高度試験)の合格発表について」にもありましたが,今回の応用情報技術者試験の最年少合格者は11歳なのですね。

友人の高校1年生の息子さんも合格されたそうですし,最近は若い方の合格をよく聞きます。
真面目な話,応用情報技術者試験までは若いうちに取った方が楽にとれるんじゃないかな,とも感じています。

大体いつものことなのですが,今年度(平成25年度)の統計資料(PDF)を見ていると,すべての試験区分で

 応募者の平均年齢 > 合格者の平均年齢

となっています。

学生のうちに取ると進学や就職にも使えますし,自分の向き不向きを知るためにも役立ちます。
いろんな意味で,早めに受けるのはおすすめです。
といっても,基本情報技術者,応用情報技術者ぐらいで十分だと思いますし,高度区分が1つあれば,あとは就職してからでも遅くないとは感じています。

統計資料を見ると,受験者の平均年齢などから,大体の受験の傾向が見えてきます。
どれくらいの年齢で受けるのが一般的なのか,どんな順番でみんな受けてるのだろう,そんな状況も,資料からある程度見えてきます。

今年度(平成25年度)の統計資料(PDF)より,各試験区分の応募者と合格者の平均年齢を,合格者の平均年齢の若い順に並べると,次のようになります。
















































































試験区分別 応募者と合格者の平均年齢 (平成25年度)
試験区分 応募者平均年齢 合格者平均年齢
基本情報技術者(秋) 26.4歳 24.6歳
基本情報技術者(春) 27.0歳 25.4歳
応用情報技術者(春) 30.6歳 28.3歳
応用情報技術者(秋) 30.7歳 28.9歳
データベーススペシャリスト 33.6歳 31.8歳
ネットワークスペシャリスト 34.3歳 33.6歳
エンベデッドシステムスペシャリスト 35.8歳 33.9歳
情報セキュリティスペシャリスト(春) 35.8歳 34.0歳
情報セキュリティスペシャリスト(秋) 35.8歳 34.0歳
システムアーキテクト 36.6歳 36.1歳
プロジェクトマネージャ 38.7歳 36.9歳
ITサービスマネージャ 39.9歳 38.1歳
ITストラテジスト 40.1歳 38.7歳
システム監査技術者 41.5歳 39.9歳

 

 

基本情報技術者試験は,合格者の平均年齢は25歳前後ですので,この頃までに受けると,受かりやすいですし使えます。
統計資料だと,だいたい25歳ぐらいまでは,全体の平均よりも合格率が高く,26歳を超えると低くなります。

現実的には,30歳ぐらいでIT業界にいると,基本情報技術者試験は,「取ってて当たり前で,取らないと恥ずかしい」ぐらいの位置づけになってしまいますので,学生~新人のうちに取っておくのがいいと思います。

応用情報技術者試験は,合格者平均は28歳と基本情報技術者試験より3歳ぐらい高いのですが,これは,学生のうちに受ける人が少ないからじゃないかと考えています。
合格者の構成比でみると,一番合格率が高いのは24歳~25歳ぐらいです。
27歳以降は,合格率が平均より低めになる傾向があります。

ですので,基本情報技術者試験に合格された方は,「応用はしばらく後でいい」と思わずに,早めに一気に取得してしまうのがおすすめです。
実際,プログラミング以外は試験範囲はほとんど一緒ですし,基本情報技術者試験の勉強を深める形で勉強すれば,半年あれば十分合格できると思います。

高度区分のスペシャリスト系については,並べてみてはじめて気づいたのですが,情報セキュリティスペシャリストが一番,合格者の平均年齢が高いです。
といってもそれほど大きな差はないのですが,マネジメント系の内容が入ってきて,組織の論理が関係してくるので,ある程度の社会経験は必要な感じはします。

そして,高度系の試験区分で一番合格者の平均年齢が低いのは,「データベーススペシャリスト試験」です。
これは,教えていると痛感するのですが,データベースはセキュリティとは逆に,「変な経験を積むと受かりにくくなる」からだと考えています。

データベースの正規化理論などを教えるとき,新人研修などでは,特に抵抗もなく,みんな理解してくれる場合がほとんどです。
でも,実務の経験者に教えると,「うちのデータベースではこんなことはしない」「正規化なんて不要」という抵抗にあうことが少なくありません。
理解しようとしなかったり,あと頭が固くなってしまって,理解したくてもできなくなっていたり,ということがよく起こるのがデータベースだと感じています。

これは,「現場上がりで理論を知らない」人が陥りがちな一番のワナです。
理論を分からない人が設計したデータベースは,ものすごく迷惑をかけることが多いので,できればデータベース設計の理論は,しっかり知って欲しいと考えています。

ですので,データベーススペシャリストの勉強は,なるべく頭が柔らかいうち,できれば高校の数学を忘れないうちぐらいにやるのがおすすめです。

ちなみに,年齢別一覧表(Excel)を見ると,データベーススペシャリスト試験で一番合格率の高い年齢は,17歳の76.9%(13人中10人合格)となっています。
その後,26歳ぐらいまでは,大体20%以上の合格率となっていますし,30歳前ぐらいまでは合格率はそれほど落ちないので,30歳までぐらいで合格を目安にするといいんじゃないかと思います。

ネットワークスペシャリストは,データベーススペシャリストと違って,それほど極端な傾向は見られません。
ネットワークは結構,経験が左右するところも大きいですし,高齢になって合格される方も多いです。
これは人数が少ないからなので統計的に意味はないとは思うのですが,ネットワークスペシャリスト試験で一番合格率の高い年齢は,66歳の100.0%(2人中2人合格)です。ちなみに,この66歳が最高齢の合格者で,次に多いのが65歳と最年少の16歳(どちらも2人中1人合格)となります。

一般的な受け時としては,平均年齢に近く,合格率が高めの30代半ばぐらいまでかと思います。
全体的に,若ければ受かりやすいという傾向もあまり強くないので,逆にいつ受けてもいい資格,とも言えるかもしれません。

情報セキュリティスペシャリスト試験は,スペシャリスト系の中では平均年齢も高いですし,本来,「社会人を数年経験してから受ける資格」だと思います。
組織の論理をわかってマネジメントすることが大切ですし,技術力だけを測る資格ではありません。
実際,22歳ぐらいまでは,全体的に合格率は低めですし,会社に就職してから取っても遅くないと思います。

この資格の合格者平均年齢を押し下げているのは,10代~20代の若者が合格するからではなくって,「高齢の受験者が多く,そして受かりにくい」からだと考えています。
30代の合格率は平均より高めなのですが,大体42歳をすぎたあたりから,合格率がかなり低くなって,10%を切る年齢が多くなってきます。
受験人数が年齢が上がってもあまり減らないという特徴もありますので,年を取ってから頑張って受けてる人が比較的多い印象です。

年齢が上がると試験を受ける事自体が大変になってくるということもあります。
できれば,30代ぐらいまでに取っておくのがおすすめではあります。

システムアーキテクト以降の論述系の試験では,基本的に経験が求められるため,全体的に平均年齢はスペシャリスト系の区分よりも高めです。
30代後半がだいたい平均年齢ですし,スペシャリスト系の試験にいくつか合格した後,30代で取れば十分じゃないかと考えています。

論述系の区分は,無理に先走って,全然実務経験がないうちに取ろうとすると大変ですし,取ってもそれほど意味はありません。
経験を4~5年積んだあたりで,自分の実務に関係のあるあたりから,取っていくのが一番だと考えています。

長くなりましたが,統計資料から考えられる,試験を受けるのに一般的な年齢は以上です。
もちろん,いつ受けるのかは自由ですし,これにとらわれる必要はありませんが,目安にしていただけると幸いです。