株式会社わくわくスタディワールド

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予想問題ではなく過去問題で勉強する

先日,ある企業の情報セキュリティスペシャリスト試験対策セミナーで,過去問演習時にわざわざ,某社の模擬試験問題を取り出してきて,自分だけそれを解いている方がいらっしゃいました。
多分,「過去問をやるより予想問題の方が効率がいい」と信じているのだと思いますが,これはすごく効率の悪い勉強の仕方だなぁ,とは感じました。

模擬試験問題や予想問題は,仕事で解説セミナーなどもしているので全部解いて知っていますが,正直そんなに質のいい問題はありません。
「なんか,作問者が試験の内容を勘違いしてるんじゃないかなぁ」と感じる問題も多いです。

なぜか,「過去問はもう出ないから予想問題の方が勉強になる」と信じている方が多いのですが,私の経験からすると,過去問をやるより優れた予想問題はありません。
予想問題の予想の的中率は,「2-4が来るぜ,絶対」って言ってる競馬の予想屋のおじさんと同じぐらいの信頼性かなぁ,と感じています。

というのは,舞台裏を知ってしまうと当たり前なのですが,なかなか受験生として勉強しているだけだと,わからないものなのかも知れませんね。

私自身が最初に試験問題を作成する仕事に関わったのは,実は大学生の時で,某通信教育会社での高校の物理でした。
正直,「こんな学生アルバイトに適当に作らせてていいのかなぁ」と,内心ヒヤヒヤしながらやっていました。

学生向けの通信教育や予備校などでの問題は,なんとなく専門家の精鋭の人が作っているイメージがあるのですが,実はそうでもなかったりします。
そして,資格試験向けの模擬試験や演習問題などは,もっと適当だったりします。

予想問題や模擬試験問題は,別に詳しく分析して作られたものではなく,基本的に,「過去の試験を見て,だいたいこんな感じが出るだろう」で,作られていることが多いのです。
そして,その作っている人も,専門家ではなく,アルバイトだったり,普通の会社員の人の副業だったり,仕事をリタイアした後の余暇の仕事だったりします。

これは別に,それが悪いと言うより,構造的にはしょうがない話です。
模擬試験などには一定の需要はありますが,受験者もそれほど多くありませんし,作成料なども安いため,作りたがる人はあまりいないからです。
時間と身分を保障されながら作る大学教授や試験委員の方達とは,何もかもが違います。

質のいい問題を作るためには,専門的な能力が必要ですし,チェックする手間も労力もかなりかかります。
国が資金を出す国家試験の問題を,それと同じレベルで作成することはかなり難しいのです。

そして,予想問題を作るときには,その作問者自身の「思い込み」が必ず入ります。
例えば,「情報セキュリティスペシャリストは,新しい用語をいっぱい知っているべきだ」と思い込んでいる作問者が問題を作ると,やたらと新知識を問う問題ばかりが出題されたりします。
でも,実際の試験では,そんなことはあまり問われないので,その新用語をいっぱい覚えても,あまり意味はないのです。
そんな風に,「過去問題で要求されていることと違うことを聞いている」問題は,試験区分を問わず,結構多いです。

ですので,実際の勉強としては,予想問題よりも過去問題を解くことをおすすめします。
よほど過去問を解き尽くして余裕があるならともかく,予想問題を解く意味は,情報処理技術者試験ではほとんどありません。

同じ過去問題を2回,3回と解いて,その背景にある考え方を理解する方が,下手に予想問題に手を出すよりも役に立ちます。
過去問から学ぶ思想背景は,「その試験区分の対象者にあるべき心構え」ですので,実務でも使えることが多く,実力アップにもつながります。
数はこなさなくてもいいので,じっくり,1問1問を味わってみてください。

試験まであと3週間と少し,脇道にそれている余裕はそんなにありません。
過去問を羅針盤に使いつつ,試験までの日々を有意義に過ごしていきましょう。