データマネジメント試験のサンプル問題が公開! 〜科目A・科目Bの中身と対策ポイント〜
2026年6月22日,IPAから「新試験制度のサンプル問題について」が公開されました。新試験制度で新設されるデータマネジメント試験(仮称)について,科目Aのサンプル問題が3問,科目Bのサンプル問題が2問,先行して公表されています。この記事では,公開された問題の中身と,そこから読み取れる対策のポイントを解説します。
何が公開されたのか
IPAのページには,「新たな出題分野,出題形式のイメージを共有するために作成,公表するもの」と明記されています。つまり今回のサンプル問題は,新試験がどんな雰囲気で出題されるのかを受験者に先に見せるための資料 という位置づけです。
公開されたのは,以下の2つのPDFです。
| 科目 | 問題数 | 内容 |
|---|---|---|
| 科目Aのサンプル問題 | 3問 | 多肢選択式(四択) |
| 科目Bのサンプル問題 | 2問 | 長文の事例問題+設問 |
なお,現時点でサンプル問題が公開されているのは データマネジメント試験(仮称)のみ です。ITパスポートやプロフェッショナルデジタルスキル試験などは「準備中」となっており,2026年度の夏頃までに順次公表される予定です。
それでは、実際のサンプル問題を見てみましょう。ここから先は、正解が含まれる内容になりますので、先に問題を解きたい方は、上記のIPAのPDFをご覧ください。
科目Aのサンプル問題を見てみる
科目Aは,従来の午前試験にあたる 知識を問う多肢選択式(四択) です。公開された3問は,いずれもデータマネジメントの中核となるテーマから出題されています。
問1:データガバナンス(正解:ア)
組織でデータガバナンスを確保することが重要となる「背景・理由」を問う問題です。
正解の選択肢は,「データの活用が広がる中で,組織内のデータの品質やセキュリティを維持し,意思決定の精度向上・法令遵守などを実現することで,組織の価値と信頼を高めるため」というものです。データガバナンスを 攻め(活用)と守り(統制)の両面 から捉えられているかがポイントです。
誤りの選択肢には,「サイロ化して秘匿にする」「IT部門のコントロール強化が目的」「人的コストの最適化が目的」といった,目的をはき違えた説明 が並んでいます。用語の暗記だけでなく,「なぜそれをやるのか」という本質を理解しているかが問われます。
問2:データ品質(正解:ウ)
AIやBIツールが扱うデータの「品質」をテーマにした問題です。3つの対応のうち,データ品質の劣化につながる“望ましくない”対応だけ を選ばせる,やや凝った形式になっています。
- a:データスチュワードが各部門と連携して品質管理を担う → 望ましい
- b:バリデーションを設けず,入力形式は担当者が都度判断する → 望ましくない
- c:ルールに沿って名寄せ・重複排除を実施する → 望ましい
正解は「bだけが望ましくない」という選択肢。データスチュワード・名寄せ・バリデーション といったキーワードを知っているだけでなく,それぞれが品質にプラスなのかマイナスなのかを判断できる必要があります。
問3:メタデータ(正解:エ)
メタデータを「ビジネスメタデータ/テクニカルメタデータ/オペレーショナルメタデータ」の3つに分類したうえで,特に整備が難しい ビジネスメタデータの整備課題 をどう解決するかを問う問題です。
正解は,「ビジネスグロッサリー(用語集)を各事業部門が参画して組織全体向けに整備し,継続的に管理する」という選択肢。現場(事業部門)を巻き込み,継続的に運用する という姿勢が正解の軸になっています。
「一度作って終わりにする」「IT部門に丸投げする」「そもそも整備しない」といった選択肢は,いずれも継続性・当事者意識を欠いており不正解です。
科目Bのサンプル問題を見てみる
科目Bは,従来の午後試験にあたる 長文の事例問題 です。架空の企業を舞台に,実務に近いシチュエーションが描かれ,その中で適切な判断を選ばせます。公開された2問は,どちらも データ品質・データ統合の現場あるある がテーマです。
問1:データの責任主体を判断する(正解:ウ)
データ基盤を構築したA社で,マーケティング部のBさんが分析しようとしたら,データの値がカタログの説明と食い違っていた——という事例です。
A社には「データ活用ルール」(データオーナーシップ,派生データの責任,カタログの管理責任,品質保証の原則)が定められており,品質問題を発見してから報告・暫定対応・恒久対策・メタデータ更新に至る一連のプロセスで,“誰が責任を持つのか” を,ルールに照らして正しく判断できるかが問われます。
- 品質問題の報告先 → データオーナーである 営業部
- 独自修正したレポートの説明責任 → 加工した マーケティング部
- 業務ルール徹底などの恒久対策 → データオーナーの 営業部
- カタログ意味欄の更新 → データオーナーの 営業部
「ルールに書かれている原則を,具体的な場面にあてはめて適用する力」が試される良問です。
問2:本質的な課題を切り分ける(正解:オ)
ECサイトと実店舗の顧客データを統合したいC社で,Dさんが分析を担当する事例です。データカタログと実データを突き合わせると,顧客IDの型がバラバラ(数値型と文字列型)で,チャネル横断の識別子として使えない ことがわかります。
この問題では,2段階の判断が求められます。
- 最も根本的な課題は何か → 各チャネルの顧客IDが,販売チャネル横断の顧客識別子として機能しないこと
- 緊急要求に応える現実的な暫定対応は何か → 一意性のある電話番号の形式を整形し,電話番号をキーにして結合する
ここでのポイントは,「電話番号の形式が違う」という 表面的な技術課題 と,「ID自体が共通化されていない」という 本質的なガバナンス課題 を切り分けられるか。そのうえで,メールアドレスは NULL を含むので結合キーに使えない,といった 実データの制約 まで踏まえて暫定策を選ぶ必要があります。
試験のベースにある知識体系 ― DAMA-DMBOK
サンプル問題を読み解くうえで知っておきたいのが,この試験が依拠している知識体系 です。問題文に登場する用語を見ると,この試験は,世界的なデータマネジメントの標準知識体系である DAMA-DMBOK(データマネジメント知識体系ガイド) を強く意識して作られていると考えられます。
実際,今回のサンプル問題には,
- データガバナンス
- データオーナー/データスチュワード
- ビジネスグロッサリー(ビジネス用語集)
- データプロファイリング
といった,DMBOKで中核となる専門用語がそのまま使われています。したがって,対策の軸としては,DMBOK(特に第2版)の概念を理解すること が最短ルートになるはずです。単なるIT用語集としてではなく,「データマネジメントの実務の体系」として押さえておくとよいでしょう。
サンプル問題から読み取れる試験の狙い
今回の5問は,単なるIT用語のテストではなく,「ビジネスに貢献するためのデータ管理」 に焦点が当てられています。共通する狙いを3つの視点で整理します。
視点1:「役割と責任」の厳密な定義
システム部門(IT)がすべてを管理するのではなく,「データは生成した事業部門の資産である」というデータオーナーシップの考え方 が強調されています。科目Bの問1がまさにこのテーマで,誰がデータの品質や意味に責任を持つのか(データオーナー・データスチュワード・IT部門の切り分け) を正しく判断できるかが鍵になります。
視点2:メタデータの重要性とその分類
データを単なる文字列や数値ではなく,「ビジネスとしての意味」を持たせる ための取り組みが重視されています。科目Aの問3では,メタデータを3つに分類したうえで,特に ビジネスメタデータ(用語集など)の整備 が課題として取り上げられました。データに意味を与え,組織で共有する仕組みづくりが問われています。
視点3:理想(根本解決)と現実(暫定対応)の切り分け
科目Bの問2では,データ形式の不備やID統合の失敗といった 「根本的な課題」を認識しつつも,経営陣からの至急の要求に対して「現実的な暫定対応」を選択する能力 が問われています。これは極めて実務的な視点で,「正論」と「いま打てる現実的な一手」を両立できるかが試されます。
科目Aと科目Bの性質の違い
同じデータマネジメントがテーマでも,科目Aと科目Bでは問われる力が大きく異なります。
| 科目A(知識・概念) | 科目B(適用・課題解決) | |
|---|---|---|
| 形式 | 多肢選択式(四択) | 長文の事例問題+設問 |
| 問われる力 | 用語の定義や「なぜそれが必要か(目的・価値)」の理解 | ルールやデータ定義書・実データを読み解き,論理的に判断する力 |
| 例えるなら | ベストプラクティスの理解度チェック | 国語の読解問題+論理パズル |
科目Aは,単に用語を知っているだけでなく,「データ品質の劣化を防ぐために何が望ましい行動か」といった ベストプラクティスの理解 が求められます。一方の科目Bは,架空企業のルールやプロファイリング結果を読み解き,「定められたガバナンスルールに従うと,このインシデントの責任者は誰になるか」を論理的に導き出す力 が必要です。
対策するにあたっての注意点
最後に,学習を進めるうえでの注意点を2つ挙げておきます。
「IT・システム視点」から「ビジネス視点」への頭の切り替え
システム開発の知識だけでは解けません。たとえば「システムの入力規則を厳格にすればよい」という システム的思考だけでは不十分 で,「業務の柔軟性とのバランス」や「業務プロセスそのものの改善」を考慮する視点が必要です。科目Aの問2は,まさにこの バランス感覚 を試す問題でした。
ルールの「適用」を意識した学習
科目B対策としては,知識の暗記だけでなく,「もし自分がこのデータカタログの管理者ならどう動くか」「このルール定義なら誰に報告すべきか」 という実務シミュレーションをしながら学習することが有効です。知識を「覚える」だけでなく「使う」練習が,得点に直結します。
データマネジメントは,エンジニアだけでなく,マーケティングや営業などの事業部門にとっても今後必須となる,非常に実用的な分野 です。新試験は,その実務感覚をうまく問う設計になっていると言えるでしょう。
まとめ
2026年6月22日に公開されたデータマネジメント試験(仮称)のサンプル問題は,科目A 3問・科目B 2問という構成でした。
- 科目A:データガバナンス・データ品質・メタデータといった中核テーマを,本質理解を問う形で出題
- 科目B:架空企業を舞台に,データの責任主体の判断や,本質的な課題の切り分けを問う事例問題
- ベースは DAMA-DMBOK:頻出用語はDMBOK由来。概念の理解が対策の軸になる
- 求められるのはビジネス視点:IT・システムの知識だけでなく,役割と責任,理想と現実の切り分けといった実務感覚が問われる
新試験制度は,データを「活用する」だけでなく「正しく管理する」力 を重視していることが,サンプル問題からよく伝わってきます。今後,他区分のサンプル問題も順次公開される予定ですので,新しい情報が出ましたら,またブログでお伝えします。
わくすたでは,新試験制度に向けた対策情報を引き続き発信していきます。