試験制度の変更による2023年(令和5年)の情報処理技術者試験
2022年(令和4年)12月20日(火)に,「情報処理安全確保支援士試験及び情報処理技術者試験(高度試験の組込み分野)における出題構成等の変更について」が発表され,来年(令和5年)秋期から,情報処理安全確保支援士試験,エンベデッドシステムスペシャリスト試験,ITストラテジスト試験,及びシステムアーキテクト試験の実施形式に変更があります。また,「情報処理技術者試験における出題範囲・シラバス等の変更内容の公表について(基本情報技術者試験、情報セキュリティマネジメント試験の通年試験化)」にあるとおり,2023年(令和5年)4月から,基本情報技術者試験と情報セキュリティマネジメント試験の出題形式に大幅な変更が行われ,通年でCBT受験できるようになります。令和5年の試験に向けて,今までと異なる点を中心にまとめていきます。
CBT試験の通年試験化と出題形式の変更
2023年(令和5年)4月から,基本情報技術者試験と情報セキュリティマネジメント試験が,通年で受験できるようになります。「情報処理技術者試験における出題範囲・シラバス等の変更内容の公表について(基本情報技術者試験、情報セキュリティマネジメント試験の通年試験化)」によると,出題形式が変わって,午前→科目A,午後→科目Bとなります。午後の大問がなくなり,すべて小問での出題となります。また,基本情報技術者試験では,プログラミング言語問題がなくなり,すべて擬似言語での出題となります。また,実証実験が行われ,自宅や職場で受験するIBT(Internet Based Testing)方式も検討されたようですが,「令和5年度 情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験の実施予定について」によると,令和5年度の試験は試験会場で行うCBT(Computer Based Testing)方式だけのようです。それぞれの試験区分については,次のとおりになります。
情報セキュリティマネジメント試験
情報セキュリティマネジメント試験については,弊社では先日『「徹底攻略 情報セキュリティマネジメント教科書 令和5年度」』を出版したところですが,試験の形式に合わせて大幅に変更を加えました。令和5年度からは科目A+科目Bで一度に受験となるので,予想問題も作り直しています。試験範囲自体にはほとんど変更はありませんが,セキュリティ技術や標準などは日々新しくなっているので,新しい内容を学習することは大切です。
基本情報技術者試験
基本情報技術者試験については,午後試験が科目Bとなり,試験範囲がプログラミングと情報セキュリティ関連だけとなったので,学習範囲が大きく変更されています。現在書籍執筆中ですが,実証実験などの状況を見る限り,文章が短くなって国語力が要求されることが少なくなる半面,プログラミング能力がしっかり問われるのでごまかしが効かなくなると考えられます。
ITパスポート試験
ITパスポート試験については,従来通り通年でのCBT方式での実施です。今年(令和4年)からプログラミング(擬似言語)が加わり,内容も新しくなっています。擬似言語の書き方は,新しい基本情報技術者試験とほぼ同じで,統一されるようです。
4区分での出題形式の変更
「情報処理安全確保支援士試験及び情報処理技術者試験(高度試験の組込み分野)における出題構成等の変更について」が発表され,来年(令和5年)秋期から,情報処理安全確保支援士試験,エンベデッドシステムスペシャリスト試験,ITストラテジスト試験,及びシステムアーキテクト試験の実施形式に変更があります。それぞれをまとめると,次のとおりです。
情報処理安全確保支援士試験
情報処理安全確保支援士試験は,午後1と午後2がまとめられ,午後になります。従来の90分+120分=210分から60分(1時間)短くなります。さらに,150分で4問中2問選択となるので,選択の幅が広がります。セキュアプログラミングなど苦手な分野を避けることが簡単になり,かなり合格しやすくなると想定されます。
エンベデッドシステムスペシャリスト試験
エンベデッドシステムスペシャリスト試験は,午後1が2問中1問選択となり,午後2が論述式になります。出題範囲にストラテジ系の内容(システム企画 ,経営戦略マネジメント,技術戦略マネジメント)が加わり,午前2から内容が変わります。午後2で企画・要件定義分野が加わり,論述式となるので,問われる能力がかなり変わってくることが考えられます。
難易度については,論述式なので文章を書くのが得意な人には受かりやすくなると想定されますが,逆に従来の組込系の技術問題が減るので,難しくなる可能性もあります。私も来年受けてみる予定ですが,多分従来の,ITストラテジストなどの組込み分野の論述の内容が出てくるのでは,と想定しています。
ITストラテジスト試験,システムアーキテクト試験
ITストラテジスト試験,システムアーキテクト試験については,午後1,午後2の組込み分野が減るだけで,大きな変更はないと考えられます。単純に,作問コストの削減で,エンベデッドシステムスペシャリスト試験に集中させることを選択したのだと想定されます。
情報処理技術者試験の実施時期と形式(2023年度版)
情報処理技術者試験には現在,情報処理安全確保支援士試験を含めると,全13区分があります。CBT方式の3試験は通年受験なので,試験時期が決まっているペーパー試験をまとめると次のとおりです。こちらは2023年(令和5年)の実施時期になります。試験形式が変更になる試験区分については,「※従来形式」と「※新形式」の注釈を付けています。2024年(令和6年)からは新形式の予定です。
春期試験(2023年4月16日実施,ペーパー試験)
- 応用情報技術者試験
- 情報処理安全確保支援士試験 ※従来形式
- ネットワークススペシャリスト試験
- システムアーキテクト試験 ※従来形式
- ITサービスマネージャ試験
- ITストラテジスト試験 ※従来形式
秋期試験(2023年10月8日実施,ペーパー試験)
- 応用情報技術者試験
- 情報処理安全確保支援士試験 ※新形式
- データベーススペシャリスト試験
- エンベデッドシステムスペシャリスト試験 ※新形式
- プロジェクトマネージャ試験
- システム監査技術者試験
秋期試験(紙試験)は2021年(令和3年)度から,10月第3週ではなく第2週に開催されており,2022年(令和5年)も 10月8日(日) に実施予定です。
デジタルスキル標準とDX
2022年(令和4年)12月21日(水)に,IPAから「デジタルスキル標準(DSS)」が発表されました。デジタルスキル標準では,次の2つの標準が策定されています。
- DXリテラシー標準(DSS-L):全てのビジネスパーソンが身につけるべき能力・スキルの標準
- DX推進スキル標準(DSS-P):DXを推進する人材の役割や習得すべきスキルの標準
デジタルトランスフォーメーション(DX)については,『DX白書2021』が発行され,IPAが力を入れている分野です。情報処理技術者試験はIPAが実施しており,最近の試験は,DXに関する出題が増えてきています。
プロジェクトマネージャ試験(PM)の関連ドキュメントの一部改訂について にあるとおり,プロジェクトマネージャ試験のシラバスや出題範囲が,今年(2022年)に大幅に修正されました。私も今年受験して合格しましたが,内容が新しくなりつつあり,DX関連のプロジェクトマネジメントについての出題が増えています。
データベーススペシャリスト試験なども,DX推進スキル標準でのデータサイエンティストの内容に近づけて出題内容を変更していると考えられ,今後の動向も考える上でも,デジタルスキル標準は必見です。
2022年12月現在のまとめは以上です。 変わりゆく時代に向けて,新しいスキルを身につけていきましょう。