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情報処理技術者試験に「データ・AI」新区分が登場する話

情報処理技術者試験に「データ・AI」新区分が登場する話

日経XTECHで,情報処理技術者試験の制度変更に関する記事が公開されました。これまでも試験区分の統廃合はありましたが,時流に合わせた本質的な変更が含まれているようです。

2027年度からの情報処理技術者試験

日経XTECHの記事,『情報処理技術者試験の大幅刷新案、応用・高度試験を再編 2027年度から』によると,2027年度からの試験では,次の4つの変更が行われるそうです。

  1. 「データマネジメント試験」(仮)の新設
  2. ITパスポート試験の内容見直し
  3. 応用情報技術者試験・高度試験の再編
  4. 試験実施方法をCBT方式に変更

このうち,1と4はすでに発表されているもので,CBT方式への変更は今年(2026年)から順次実施される予定です。 弊社でも令和8年度版の書籍改定では,このCBT化の傾向を踏まえて内容を追加しています。今回,新しい情報としては,2のITパスポート試験の基礎レベルへの特化(易化)と,4の応用情報技術者試験以上の試験区分の再編があります。

これまでも何度か試験区分の統廃合はありましたが,前回大きな変更があったのは,応用情報技術者試験が新設された平成21年(2009年)のことです。それ以前は10年未満で頻繁に変わっていましたが,ここ最近は約17年もの間,ほぼ同じ形態で実施されてきました。
記事によると,従来の枠組みを見直し,高度試験を『プロフェッショナルデジタルスキル試験』という3つの新しい区分へ再編することが検討されているとのことです。長年,試験制度の変遷を見てきた身としても,今回の変更には大いに賛成ですし,むしろ「やっと来たか」という思いが強いです。

データ・AIに関するプロフェッショナル試験

今回の改定で,個人的に一番注目しているのは,「データ・AI」に関する試験区分が新設されるという点です。『プロフェッショナルデジタルスキル試験(データ・AI領域)』(仮称)という名称で,再編される3区分のプロフェッショナルデジタルスキル試験のうちの1つです。

私は昨年から,京都大学大学院情報学研究科の博士後期課程に入学し,教育に関するデータサイエンスの研究を行っています。

研究の現場に身を置いて痛感するのは,現代において重要なのは「データをどう堅牢に管理するか」以上に,「データをどう分析し,そこからどのような知見(価値)を引き出すか」だという点です。これからは間違いなく,データサイエンスの時代になります。

教育現場のログデータであれビジネスデータであれ,統計的手法やAIを用いて未来を予測し,施策に活かす力こそが今求められています。そうした意味で,国家試験が「データ・AI」を独立した高度区分として扱うのは,極めて妥当な判断だと言えるでしょう。

私自身,この新しい試験区分の指導・対策に向けて,全力を注いでいきたいと考えています。

データベーススペシャリスト試験への「先祖返り」感

一方で,既存の「データベーススペシャリスト試験」に対しては,ここ数年,強い違和感を持っていました。

一言で言えば,「先祖返り」しているような印象です。

最近の傾向を見ると,しばらく出題が控えられていた「正規化理論」の問題が復活していたり,一時期増えていたデータ分析系の問題が逆に減っていたりします。特に,直近の令和7年度の問題は,概念データモデルや関係スキーマを作成する問題が中心に戻っており,一時期はなくなっていた「SQLを避けても合格できる」という状態が復活していました。

もちろん,関係データベースにおける理論は重要です。しかし,最近の問題は「正規形を求める」といった古典的な正規化の手順や,レガシーなシステム設計の作法ばかりが出題されているように感じていました。 NoSQLや非構造化データの活用,クラウドネイティブなデータ基盤など,現場で求められるスキルと試験内容が乖離かいりしつつある中,試験制度自体を刷新すべき時が来ていたのだと思います。

「溜める」から「活かす」試験へ

今回の新設(あるいは改組)によって,試験の評価軸が「データを溜める技術」から「データを活かす技術」へとシフトすることを期待しています。例えば,

  • データサイエンスに必要な数理・統計知識
  • データ分析の手法やアルゴリズム,その選択と評価
  • AIモデルの構築と倫理的な扱い

これらが問われる試験になれば,日本のITエンジニアの意識も,システム開発寄りからデータ活用寄りへとアップデートされるはずです。

詳細なシラバスや実施時期については,今後IPAから正式な発表があるはずです。私が研究している分野とも直結する話ですので,続報が出次第,またブログで取り上げたいと思います。また,より広く情報を届けるため,ブログ以外の媒体での発表も検討しています。

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