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新シラバスのポイント 〜大分類「データ・AIの利活用」の新設〜

新シラバスのポイント 〜大分類「データ・AIの利活用」の新設〜

IPAから公開された「出題範囲等の改定案(Ver.1.0)」と「科目Aの出題範囲体系案(新旧対応表)」を読み解いていきます。新シラバスで最も注目すべきポイントは,大分類「データ・AIの利活用」の新設です。

科目Aの出題範囲体系が大きく変わる

新シラバスを見ると,科目A(知識)の出題範囲の体系が大幅に再編されていることがわかります。従来の「ストラテジ系・マネジメント系・テクノロジ系」の3分野から,「ビジネス/テクノロジ/セキュリティ・倫理」の3分野に変わります。

新しい出題範囲体系

分野大分類中分類
ビジネス1. ビジネス変革ビジネス変革の方法論,経営戦略・デジタル戦略,ビジネスモデル・ビジネスプロセス,サービスマネジメント,プロジェクトマネジメント,デザインのアプローチ,マインド・スタンス
2. データ・AIの利活用データマネジメント,データ分析・データ利活用,AI利活用
3. 組織活動経営・組織論,ガバナンス・監査
テクノロジ4. デジタル技術デジタルサービス・デジタルツール,システムの種類・構成,クラウド,ネットワーク,データベース,AI技術,情報デザイン・情報メディア
5. システムの開発・運用システムライフサイクルプロセス,開発・運用の方法論,アルゴリズム・プログラミング
セキュリティ・倫理6. セキュリティ情報セキュリティの脅威,情報セキュリティマネジメント,情報セキュリティ対策,セキュリティ実装技術・評価
7. 倫理・コンプライアンス情報倫理・AI倫理,ビジネス関連法規,プライバシー関連法規,セキュリティ関連法規

全部で 7つの大分類,30の中分類 に整理されています。
元々が9つの大分類,23の中分類だったので,大分類は減っていますが,中分類は増えています。

最大のポイント:大分類「データ・AIの利活用」の新設

今回の改定で最も大きな変化は,大分類2「データ・AIの利活用」が新設されたことです。この大分類には,以下の3つの中分類が含まれます。

中分類内容
8. データマネジメントデータの定義・分類・品質管理,メタデータ管理など
9. データ分析・データ利活用データの収集・分析・可視化,統計手法,データドリブンな意思決定など
10. AI利活用AIの仕組み・活用方法,生成AI,AIの限界と倫理的配慮など

従来の試験では,データやAIに関する内容は「ストラテジ系」の一部や「テクノロジ系」に散在していました。新シラバスでは,これらを「ビジネス」分野の独立した大分類として位置づけることで,データ・AIの知識がビジネスに不可欠なスキルである ことを明確にしています。

「ビジネス」分野に置かれた意味

「データ・AIの利活用」が「テクノロジ」分野ではなく「ビジネス」分野に分類されている点にも注目すべきです。この分類は,データやAIを 技術として知っている だけでなく,ビジネスに活用できる ことが求められているのです。

一方,テクノロジ分野にも「AI技術」(大分類 4.デジタル技術の中,中分類18)が存在します。こちらは機械学習のアルゴリズムやモデルの仕組みなど,技術的な側面を扱う内容です。AIを「使う」側の知識がビジネス分野,AIを「作る・理解する」側の知識がテクノロジ分野,という整理になっています。このように,ビジネスとテクノロジの両面からAIを学ぶ体系になっている点も,今回の改定の大きな特徴です。

新旧対応表から見る変更点

新旧対応表を見ると,従来の中分類がどのように再編されたかがわかります。主な変更点を整理します。

新規追加された中分類

中分類内容
マインド・スタンスDXの重要性を理解し,変革に向けて行動するマインドセット
データマネジメントデータの適切な取扱い・管理に関する知識
AI利活用AIの活用方法,生成AIを含む
クラウドクラウドサービスの活用に関する知識(従来はシステム構成要素の一部)

「マインド・スタンス」は,ITパスポート試験において知識と併せて出題されるもので,DXに向けた意識や姿勢を問う新しい観点です。
「データマネジメント」と「AI利活用」は,データ・AIの利活用大分類の中で新設された中分類であり,データやAIに関する知識がビジネスに不可欠なものとして体系化されたことを象徴しています。データマネジメント試験も新設されることから,データマネジメントに関する知識が重要視されていることがわかります。
「クラウド」は,従来はシステム構成要素の一部として扱われていましたが,クラウドの重要性が高まっていることから,独立した中分類として新設されました。

情報セキュリティが中分類から大分類へ

従来は「セキュリティ」という中分類の中に,「情報セキュリティ」「情報セキュリティ管理」「情報セキュリティ対策」などの小分類が含まれていました。新シラバスでは,これらが「セキュリティ」という大分類となり,4つの中分類「情報セキュリティの脅威」「情報セキュリティマネジメント」「情報セキュリティ対策」「セキュリティ実装技術・評価」に再編されました。これにより,情報セキュリティに関する内容がより重視され,体系的に整理されることになりました。さらに,法規や倫理の内容も独立した大分類「倫理・コンプライアンス」として整理されている点も,セキュリティと倫理の両面からの知識が求められることを示しています。

マネジメント系・ストラテジ系は大きく再編

マネジメント系・ストラテジ系は,以下のように大きく再編されています。

  • 従来の「技術戦略マネジメント」「システム戦略」「システム企画」「経営戦略マネジメント」 → 「ビジネス変革の方法論」「経営戦略・デジタル戦略」「ビジネスモデル・ビジネスプロセス」に再編
  • 従来の「企業活動」の一部 → 「データ分析・データ利活用」として独立(応用数学や業務分析の内容を含む)
  • 従来の「ビジネスインダストリ」 → AIの利活用に関する内容は「AI利活用」へ,ビジネスシステムに関する内容は「デジタルサービス・デジタルツール」へ
  • 従来の「法務」 → 「ビジネス関連法規」「プライバシー関連法規」「セキュリティ関連法規」の3つに分割

 DXやデータ・AIの利活用に関する内容が新設されたこともあり,従来の内容をそのまま残すのではなく,時代に合わせて再編されていることがわかります。

名称変更された中分類

旧名称新名称
システム構成要素システムの種類・構成
ソフトウェア / ハードウェア統合されて「システムの種類・構成」「クラウド」等に再編
システム開発技術 / ソフトウェア開発管理技術システムライフサイクルプロセス
情報倫理情報倫理・AI倫理(AI倫理を追加)

各試験区分での出題範囲の違い

新しい出題範囲体系は全試験区分共通ですが,各試験区分によって出題される中分類が異なります。

IP・DM・SG・FE試験

ITパスポート試験(IP)は全30中分類のうち26分類から出題されます。データマネジメント試験(DM)は「データ分析・データ利活用」が重点分野(◎)で,12分類から出題されます。情報セキュリティマネジメント試験(SG)は「情報セキュリティの脅威」「情報セキュリティマネジメント」「情報セキュリティ対策」が重点分野で,14分類から出題されます。

プロフェッショナルデジタルスキル試験・SC試験(科目A-1・A-2)

科目A-1は共通知識として全区分共通で出題されます。科目A-2は各区分の専門知識が出題され,重点分野(●) が区分ごとに異なります。(PDの専門知識にあるもののみ表示)

中分類PD-M(マネジメント)PD-D(データ・AI)PD-S(システム)SC
1. ビジネス変革の方法論
2. 経営戦略・デジタル戦略
3. ビジネスモデル・ビジネスプロセス
4. サービスマネジメント
5. プロジェクトマネジメント
8. データマネジメント
9. データ分析・データ利活用
10. AI利活用
12. ガバナンス・監査
13. デジタルサービス・デジタルツール
14. システムの種類・構成
15. クラウド
16. ネットワーク
17. データベース
18. AI技術
20. システムライフサイクルプロセス
21. 開発・運用の方法論
22. アルゴリズムとプログラミング
23. 情報セキュリティの脅威
24. 情報セキュリティマネジメント
25. 情報セキュリティ対策
26. セキュリティ実装技術・評価
28. ビジネス関連法規
29. プライバシー関連法規

(○は出題範囲,◎は重点分野,●は専門分野かつ重点分野)

データ・AI重視の全体像

今回の改定を俯瞰すると,すべての試験区分でデータ・AIの知識が求められるようになった ことがわかります。

  • ITパスポート試験: マインド・スタンス,データマネジメント,データ分析・データ利活用,AI利活用が出題範囲に
  • データマネジメント試験: データマネジメント,データ分析・データ利活用が重点分野
  • 基本情報技術者試験: データマネジメント,データ分析・データ利活用,AI利活用が出題範囲に
  • プロフェッショナルデジタルスキル試験: データ・AI区分はもちろん,マネジメント区分やシステム区分でもデータ関連の知識が必要
  • 情報処理安全確保支援士試験: AI倫理やデータ保護の観点からデータ・AIの知識が求められる

ITパスポート試験からプロフェッショナルデジタルスキル試験まで,一貫してデータ・AIの知識を積み上げていく 体系になっています。

まとめ

新シラバスの最大のポイントをまとめると,以下のとおりです。

  • 出題範囲体系が「ストラテジ系・マネジメント系・テクノロジ系」から「ビジネス/テクノロジ/セキュリティ・倫理」に再編
  • 大分類「データ・AIの利活用」がビジネス分野に新設。データマネジメント・データ利活用・AI利活用の3中分類
  • テクノロジ分野にも「AI技術」があり,使う側(ビジネス)と作る側(テクノロジ)の両面からAIを学ぶ体系に
  • 全試験区分でデータ・AIの知識が出題範囲に
  • 「マインド・スタンス」「AI倫理」「クラウド」など,時代を反映した新しい中分類が追加

シラバスの詳細(各中分類に含まれる小分類や知識項目の例)は,改定案のp.19以降に記載されています。今後,シラバス案やサンプル問題が公開されましたら,さらに詳しく分析していきます。

また,プロフェッショナルデジタルスキル試験については,YouTubeで解説動画『【2027年新設】プロフェッショナルデジタルスキル(PD)試験とは? ~応用・高度試験統合の位置付けと、今からできる準備~』も公開していますので,そちらもぜひご覧ください。

いろいろ,新しいことが発表され,次の方向性が見えてきました。データ・AIについては,試験と関係なくても学んでおいて損はない内容ですので,この機会にぜひ学習を始めていきましょう。

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