試験問題に潜む“大人の事情”には,つっこまない

情報処理技術者試験は,「情報処理の促進に関する法律」に基づき経済産業省が,情報処理技術者としての「知識・技能」が一定以上の水準であることを認定している国家試験です。
そして,あくまで認定試験なので,「こういう知識・技能がある人が合格する」というポイントがあります。
問題文の長さもだいたい決まっていますし,答えも基本的に一意に決まります。
ですので,情報処理技術者試験特有の制約や大人の事情,建前などが結構あります。
よく,試験問題に文句をつける人が,「こんなの実務ではやらない」とか,「現実はこんな風にはうまくいかない」という話をしますが,そういう側面は確かにあると思います。
ただ,これだけを理由に,試験に価値がない,意味がないというのは違うかな,とは感じています。
試験問題に出てくる事例は,実際の現場で起こったことの本質的な部分を抜き出した,スケルトン(骨組み)のようなものです。
ですので,かなり簡略化して書いてあります。
状況説明が少なく,現場の経験から必要だと思っていることが問題文に書いてないこともあります。
また,現場では答えはいくつもありますが,試験は採点するため,答えを1つに絞る必要があります。
そのため,考えられる他の答えは違うよ,ということを,試験問題の中に一生懸命記述します。
ですので,問題文を読めば答えが書いてあるように感じられることも結構あります。
これは,解答例が発表されるようになった平成16年以降に顕著になった傾向ですが,「問題文を読めば答えがわかる」問題はこの頃から確実に増えました。
多分,昔は解答例が公表されていなかったので,別解もいろいろあり,記述の内容が妥当で,実力があるとわかれば合格だったんじゃないかと思います。
でも,解答例が公表されるようになってから,解答例へのつっこみや問合せなどを考えると,それほど自由に採点できなくなったんじゃないかと感じています。
最初の頃の解答例は,答えが何個もあって,「こんな風に書いていればOK」みたいな問も結構ありましたし。
今は解答が複数ある問題もめったに見かけませんし,解答が一意になるよう,うまくコントロールされています。
ですので逆に,そのコントロールを見抜けば,問題文の中から答えが導けるようになります。
といっても,試験問題は,業務などで大切な「本質」を問えるように構成された,かなり質のいい問題です。
しっかり時間をかけて,大勢の試験委員で作成されていますので,ミスなどはほとんどなくなっています。
問題文のコントロールを見抜いて,答えが導けると言うことも実力のうちですし,わかっていないと見抜くこともできませんので,特に問題はないかな,とも感じています。
また,試験では,基本的に実際の事例が元になっていますが,「この会社の事例だな」とわかると問題なので,かなりぼやかして書いてあります。
10年前ぐらいの過去問は,「某K社の事例に違いない」みたいな,企業が特定できそうな感じの問題もありましたが,今は大分ぼかしている感じです。
ですので,そのぼかす過程でなくなっている情報もあると思います。
試験を解くのに必要な情報は全部入っていますが,状況を完全に納得するほどの情報は入っていません。
そのため,状況がイメージしづらかったり,現場と少し離れていると感じることもあると思います。
企業秘密などの大人の事情で,試験問題には書けていないこともあるはずです。
特に基本情報技術者や応用情報技術者の問題は短いですし,ホントに「エッセンスだけ」って感じの問題が多いです。
午後の4ページだけで実務をすべて表現することは不可能ですし,大事なエッセンスは入っているので,そこがわかれば十分です。
ですので,問題を解くときの心構えとしては,そういった大人の事情には,つっこまないでおく,というのが大切です。
何事も,あら探しをしようとすると,あらは見つかると思います。
でも,「あらを見つける」のが試験の目的ではありません。
試験なので,「試験にケチをつける」人は,受かりにくい傾向があります。
ちょっとぐらい謎な部分があったとしても,そこにこだわって論破してもしょうがありません。
むしろ,「ちょっとツッコミどころあるけど,きっとこういうことが言いたいんだな」と感じ取って,意図を汲み取る姿勢が大切です。
これは,試験前の問題演習で,模擬試験の問題や予想問題を解くときには特に大切です。
予想問題は,本試験の問題とは比べて全然チェックは甘いですし,間違いも結構あります。
このあたりにも,人材不足とかコスト削減とか,大人の事情が大きく関わっています。
ですので,ある程度,割り切りながら利用できる人でないと,予想問題はストレスがたまると思います。
過去問をやったあとで知識確認用というのには使えますが,メインに使うものではないです。
まずは,過去問をやるのが王道です。
試験は,作問者や採点者と対立するという姿勢ではなく,作問者と会話するというイメージを持った方がうまく解けます。
ちょっとだけ大人になって,試験問題と仲良くしていきましょう。
■追伸
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仲間が多い方が楽しいですし,試験前に,1日しっかり演習できる機会ですので,よろしければご検討ください。午前問題バトルは賞品もあります。
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