情報処理安全確保支援士制度って何?
ITProのニュース『サイバー法改正案が閣議決定、「情報処理安全確保支援士」新設へ』でも発表されていますが,政府は2016年(平成28年)2月2日に,「サイバーセキュリティ基本法及び情報処理の促進に関する法律の一部を改正する法律案」を閣議決定し,国会に提出しました。
この法案は,「サイバーセキュリティ基本法」を改正する内容で,中に,サイバーセキュリティに関する助言を行う国家資格「情報処理安全確保支援士」を新設することが含まれています。
この「情報処理安全確保支援士(略称:情確士)」は,新たにできる情報セキュリティ関連の資格制度となります。
今までの情報処理技術者試験とは別の制度ではありますが,関係ないわけではありません。
情報処理安全確保支援士の位置付け
情報処理安全確保支援士は,情報セキュリティ人材の育成・確保のために経済産業省によって考えられた登録制度です。
2015年(平成27年)12月に発表された経済産業省の「情報セキュリティ人材の育成・確保について(PDF)」によると,情報セキュリティ人材の育成に向けて,情報セキュリティマネジメント試験や情報処理安全確保支援士制度の創設などについて検討されています。
簡単にまとめると,次のようなかたちで,段階別に資格や試験,イベントなどの制度を導入する計画です。
最上位レベルの,天才やホワイトハッカーなどは,資格や試験では判別や育成はできませんので,人材発掘がメインとなります。
そのために,若者向けのセキュリティキャンプなどが実施されています。
一般の人向けの,情報セキュリティを広めるための試験は,情報セキュリティマネジメント試験です。
こちらは,平成28年度春期(4月)から開始され,試験の合格のみで取得できます。
真ん中の,情報処理関連の技術者向けの,中級レベルの制度が,情報処理安全確保支援士となります。
IT関連の技術者のうち,情報セキュリティ関連の仕事を行う人のための資格です。
情報セキュリティスペシャリスト試験と情報処理安全確保支援士の関係
IT関連の技術者のうち,情報セキュリティ関連の仕事を行う人が受ける試験・・・というと,今すでに「情報セキュリティスペシャリスト試験」が,情報処理技術者試験の一区分としてあります。
それなのに,同じ経済産業省の資格として,情報処理安全確保支援士ができたら,この資格はどうなるのでしょう?
ということについては,まだ確定ではありませんが,2016年(平成28年)1月に発表された経済産業省の「情報処理安全確保支援士制度(案)(PDF)」に示されています。
実は,情報処理安全確保支援士制度は,新たの試験が行われるわけではなく,試験自体は情報セキュリティスペシャリスト試験を利用する予定です。
簡単にいうと,情報セキュリティスペシャリストの登録・更新制度が情報処理安全確保支援士となります。
情報セキュリティスペシャリスト試験の合格者が情報処理安全確保支援士として登録し,3年ごとに一部再受験や講習などの受講で更新することになります。
この制度の目的は,政府機関や企業等のサイバーセキュリティ対策を強化するために,専門人材を見える化し,活用できる環境を整備することです。
つまり,企業などが必要な情報セキュリティ人材を確保しやすくするための制度です。
また,サイバーセキュリティ分野では,知識等が陳腐化するおそれがありますので,更新制が導入されています。
さらに,厳格な秘密保持を確保するために,身元をしっかり確認する登録制となっています。
情報処理安全確保支援士になるには?
今の時点では確実ではありませんが,早ければ2017年(平成29年)には導入される予定ですので,早めに準備をしておくのはおすすめです。
今のところ,現行制度の情報セキュリティスペシャリスト試験の合格者が,3年以内に情確士になる場合は無試験(情確士試験の全部免除)となる案が濃厚ですので,今年(2016年)中に情報セキュリティスペシャリスト試験に合格しておくのが最も確実です。
ステップアップを考えると,春に情報セキュリティマネジメント試験を受験して,秋に情報セキュリティスペシャリスト試験を受験するということも考えられます。
それ以外にも,情報セキュリティ関連の大学院を修了するなど,情確士試験の合格者と同等以上の能力を有すると認められれば,有資格者となる道はあります。
ただ,いずれにしても情報セキュリティスペシャリスト試験で出てくる内容を学習する必要はありますので,勉強は無駄にはならないはずです。
情報セキュリティスペシャリスト試験や旧試験の合格者はどうすれば?
情報セキュリティスペシャリスト試験に合格して3年以内の方なら,そのまま無試験で情確士として登録できると考えられます。
2017年に登録開始の場合には,多分2014年(確実には2015年)以降の合格者の場合には,特に問題ないと思われます。
#私自身は,念のため2015年4月に,情報セキュリティスペシャリスト試験を取り直したので,これが使えるかな,って考えてます。
3年以上経っている場合には,今のところの案では,情確士登録後に速やかに講習を受講するか,情確士試験を一部免除で受験する必要が出てきます。
そのため,昔取得した人は,自信があれば再受験して,今年(2016年)中に情報セキュリティスペシャリスト試験に合格しておくことがおすすめです。
ちなみに,この制度では,現行の情報セキュリティスペシャリスト試験(SC)だけでなく,過去のテクニカルエンジニア(情報セキュリティ)試験(SV)や情報セキュリティアドミニストレータ試験(SU)の合格者も,有資格者として含まれる予定です。
個人的には,情報セキュリティアドミニストレータ試験が同等というのは,難易度的に納得がいかない感じではありますが,今のところこの資格があれば試験が不要な可能性があります。
情報処理安全確保支援士に向けて
情報処理安全確保支援士制度は,新しい登録制度である分,未知数な部分も大きいです。
ただ,情報セキュリティ分野の人材は大きく不足しており,資格が仕事に結びつく確率は高いです。
これからの仕事として,情報セキュリティ関連のものを想定しているのでしたら,取得していると役立つ資格だと考えられます。
この資格はまだ準備段階で,実施されるのは早くて来年です。
ただ,勉強にはある程度の期間が必要ですし,1年はあっという間に過ぎていきます。
目標を早めに定めて,適切なスタートを切っていきましょう。