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プロフェッショナルデジタルスキル(マネジメント)試験を読み解く【前編】― ST・PM・SM・AUの4論述はどこへ行ったのか

プロフェッショナルデジタルスキル(マネジメント)試験を読み解く【前編】― ST・PM・SM・AUの4論述はどこへ行ったのか

2027年度から始まる新試験制度で新設されるプロフェッショナルデジタルスキル(マネジメント)試験(PD-M)について,先行公開された科目Bのシラバス(案)を読み解きます。昨日のPD-S(システム)と同じフレームで分析します。結論を先に言うと,PD-Mは「ST・PM・SM・AUの4論述区分を,1区分ずつ大項目に再配置した,PD-Sよりはるかに素直な統合」です。その分,「全問多肢選択化」のインパクトはPD-S以上に大きいという構図になっています。

まず押さえる事実 ― PD-M試験とは何か

分析に入る前に,一次情報を整理しておきます(枠組みはPD-Sと共通です)。

  • 2027年度から新試験制度に移行し,現行制度は2026年度の試験実施をもって終了予定です。現行の高度試験(ST・PM・SM・AUなど)を現行制度で受けられるのは,実質的に2026年度が最後になります。
  • PD-Mの位置づけ:デジタル技術を活用した事業・サービス・プロジェクト・ガバナンスをマネジメントの立場から主導する専門的な知識及び技能を評価する試験とされています。
  • 試験構成:科目A-1(90分・60問)/科目A-2+科目B 合わせて120分(A-2は23問,Bは12問)。全問必須解答・全問多肢選択式,CBT方式です。PD-Sと完全に同じ構成です。
  • シラバス(案)Ver 0.1 は,現時点で科目Bのみ先行公開されています。A-1共通シラバスは別途公開される見込みで,新試験のシラバス案・サンプル問題は2026年夏頃を目途に順次公表される予定です。
  • 免除制度は現行高度試験と同等に加え,現行試験からの経過措置も検討中とされています。

この記事で分析するのは,先行公開された 科目Bのシラバス(案) です。

出典:本記事は,IPAが2026年6月30日に公開した「試験要綱・シラバスの変更について」に含まれる,プロフェッショナルデジタルスキル(マネジメント)試験(PD-M)科目B シラバス(案)Ver 0.1PDF)を分析対象としています。

本論①:統合の構図 ― PD-Sとの決定的な違いは「素直さ」

PD-Mは,「ITストラテジスト(ST)・プロジェクトマネージャ(PM)・ITサービスマネージャ(SM)・システム監査技術者(AU)を統合した試験」と説明されます。科目Bの大項目構成を見ると,PD-Sと違って,この説明がほぼそのまま当てはまることがわかります。

科目Bは,次の4つの大項目で構成されています。母体となる高度区分を対応させると,構図はきわめてシンプルです。

大項目AP科目Bの対応分野母体となる高度区分性格
1 組織及びビジネスの変革・デジタル戦略問2(経営戦略・情報戦略)ST(事業戦略側)高度寄り+新規色が強い
2 サービスマネジメント問10SM(ほぼ全域)最も高度に忠実
3 プロジェクトマネジメント問9PM(ほぼ全域)高度に忠実
4 組織のガバナンス・監査問11AU(ほぼ全域)高度に忠実

PD-Sが「工程軸と技術領域軸のハイブリッド」という複雑な再配置だったのに対し,PD-Mは1区分=1大項目のきれいな職種軸統合です。ひとことで言い分けるなら,「PD-Mは統合,PD-Sは再編」。この対比自体が,シリーズとして読むときの見どころになります。

ただし精読すると,単純な水平統合とは言い切れない点が2つあります。

① STは,実はPD-MとPD-Sに分割されている

前回,SA(システムアーキテクト)が大項目1と4に分割吸収されたと指摘しました。同じことがSTにも起きています。PD-Mの大項目1に入っているのは,STの「事業戦略」「ビジネスモデル」「ポートフォリオ/プログラムマネジメント」といった事業戦略側だけです。STのもう一つの柱だった「個別システム化構想・計画の策定」は,PD-Sの大項目1(業務要件の定義,システム化計画の立案)に移っています。

つまり2027年体系では,ST/SAの境界線が引き直され,「ビジネス側はPD-M,システム化計画から先はPD-S」 という切り分けになりました。ST・SA両方の後継を追う読者(と教材設計者)にとって,重要な発見です。

② ES・STの「業種特性・製品戦略」は行き先がない ―【自己修正】

ここで,前回のPD-S記事の内容を1点修正します。前編で「ESの事業戦略・製品戦略はPD-M側へ寄った可能性」と示唆しましたが,PD-Mのシラバスを精読すると,これは修正が必要でした。

PD-Mの1-2はあくまで全社レベルのビジネスモデル策定であり,ESの組込み製品戦略に対応する記述はありません。また,ST論述の看板だった「業種ごとの事業特性を踏まえて」という文言もPD-Mからは消え,汎用スキルとして書き直されています。

結論として,組込み製品戦略・業種特化戦略は,新体系から実質的に落ちた可能性が高い。「PD-Mが受け皿」ではなく「行き先がない」というのが,2区分のシラバスを突き合わせて見えた実態です。これは,のちほど触れる 「消えたもの」リスト の筆頭項目になります。

本論②:分野別分析 ― レベル感と新規トピック

ここからは,4大項目それぞれについて,「現行のどのレベルに近いか」「新しく登場したトピックは何か」を見ていきます。レベル感を読むときの武器は,前回と同じくシラバスの動詞です。「策定する」「合意を得る」「取りまとめる」といった主体的な動詞は,業務を主導するレベル4の言語。この視点で読み進めます。

大項目1:デジタル戦略(ST寄り,ただし新規トピックの密度が4大項目中で最大)

1-1,1-2は,STの「環境分析→事業戦略→ビジネスモデル策定」の流れを踏襲しています。ここは現行ST受験者に馴染みのある領域です。

一方で,新規キーワードが大量に投入されているのが大項目1の特徴です。地政学的リスク(IPAシラバスとしては異例の明示),デザイン思考・システム思考(1-5で正面から技能化),イノベーションマネジメント・PoC・失敗を許容する組織文化(1-4),CX・顧客エンゲージメント(1-3)――現行ST午後Ⅰではほぼ演習できない領域が並びます。初回試験の新作問題の主戦場は,ここになると予想します。DX白書・経済産業省系レポートの語彙が濃く,出題文の題材もDX推進事例になるでしょう。

大項目2:サービスマネジメント(SMに最も忠実)

2-1〜2-4は,JIS Q 20000のプロセス体系(事業関係管理/変更管理・リリース展開/インシデント・問題管理/可用性・継続管理)を,ほぼそのまま4小項目に畳んだ構成です。現行SM科目Bとの連続性は4分野中で最高で,過去問流用の見通しが最も立ちやすい領域です。

一方,現行SMにあったファシリティマネジメント(データセンター設備管理)が消えています。これも「消えたもの」リスト入りです。学習面では,SM午後Ⅰの過去問がほぼ直接使えます。

大項目3:プロジェクトマネジメント(PMに忠実,PMBOK第7版の言語)

3-1の「不確実性へのレジリエンス」「アウトカム」「価値の創出」,3-2の「多様性の受容」「ステークホルダエンゲージメント」は,2023年頃から現行PM試験に入っていたPMBOK第7版/ISO 21502系の語彙の継続です。3-3は立ち上げ〜終結の伝統的プロセス。つまり大項目3は,現行PMの午後Ⅰをそのまま多肢選択化した姿が最も想像しやすい分野です。

大項目4:ガバナンス・監査(AUに忠実,ただし「助言」寄りに再定義)

4-2,4-3は,監査計画→予備調査→本調査→監査調書→報告→フォローアップというAUの監査プロセスをそのまま保存しています。注目は2点です。

1点目は,4-1が「構築と運用に関する助言(支援を含む)」と,AUの「保証・助言」二本柱のうち助言側を前面に出していること。2点目は,4-3で「新技術(AIほか)の利活用に関する監査」が独立小項目になったこと。AI監査は,システム監査基準の改訂動向とも連動する新領域で,PD-SのフィジカルAIと対になる「PD-MのAIキーワード」として位置づけられます。

新規トピック=初回試験の主戦場

大項目1を筆頭に,PD-Mにも過去問が存在しない新規トピックが各所に埋め込まれています。デザイン思考,イノベーションマネジメント,PoC,CX,地政学的リスク,AI監査――これらは過去問でカバーできません。新規トピック=過去問が存在しない領域=初回試験で新作問題が出る主戦場という図式は,PD-Sと共通です。

まとめ(前編)

前編では,PD-M科目Bシラバス(案)から,統合の構図と分野別のレベル感を分析しました。

  • 「4区分統合」の実態は,1区分=1大項目の素直な職種軸統合「PD-Mは統合,PD-Sは再編」 と言い分けられる
  • ただしSTはPD-MとPD-Sに分割されており,ST/SAの境界線が「ビジネス側はPD-M,システム化計画から先はPD-S」に引き直された
  • 前回示唆した「ES戦略はPD-Mへ」は自己修正業種特性・製品戦略・ファシリティマネジメントは新体系から落ちた「消えたもの」リスト
  • レベル感はシラバスの動詞で読める。全体にレベル4寄り
  • 新規トピック(デザイン思考,イノベーションマネジメント,地政学的リスク,AI監査等)が初回試験の主戦場。とくに大項目1の密度が最大

後編では,本題である 出題形式の変化予想 に踏み込みます。PD-Mならではの論点は,「母体4区分がすべて論述式(午後Ⅱ)だった」 という事実です。その論述式が全問多肢選択式に置き換わることが受験者層に何をもたらすのか,そして現行過去問を使った学習戦略まで分析します。

▶ 後編:プロフェッショナルデジタルスキル(マネジメント)試験を読み解く【後編】― 論述消滅のインパクトと学習戦略

なお,本記事が分析対象とするシラバスは (案)Ver 0.1 であり,IPA自身が「変更する可能性があります」と明記しています。内容は今後変わりうる点にご留意ください。

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