プロフェッショナルデジタルスキル(システム)試験を読み解く【後編】― 出題形式の予想と学習戦略
前編では,プロフェッショナルデジタルスキル(システム)試験(PD-S)科目Bの統合の構図を分析しました。後編では,いよいよ本題である出題形式の変化予想に踏み込みます。「全問多肢選択式・120分で12問」という構成から,1問あたり7〜8分の中型ケース問題が見えてきます。そこから逆算して,現行過去問の使い方まで具体的に提案します。
本論③:出題形式の変化予想 ― 全問多肢選択化のインパクト
PD-S科目Bの最大の変化は,記述式が廃止され,全問が多肢選択式になることです。この変化が何を意味するのか。鍵は時間の逆算にあります。
時間の逆算 ― 1問あたり7〜8分の「中型ケース問題」
試験構成は「科目A-2+科目B 合わせて120分(A-2は23問,Bは12問)」です。ここから,科目Bに割ける時間を逆算します。
- 科目A-2は,高度試験の午前Ⅱに相当する知識問題です。合格レベルの受験者なら1問1分強で解けるので,23問で約30分。現行の午前Ⅱ(25問・40分)のペースとも整合します。25問から23問へ削減されたのも,科目Bに時間を割くための設計と読めます。
- すると科目Bは,残り約90分で12問。つまり1問あたり7〜8分という計算になります。
この「1問7〜8分」というボリュームは,支援士(SC)の新形式(120分・12問単独=1問10分)にかなり近い,中型のケース問題が成立することを意味します。情報セキュリティマネジメント(SG)の科目Bより,明確に重い問題です。
形式予想 ― 現行午後Ⅰの1設問を切り出して多択化した姿
1問に7〜8分かけられるなら,「1ページ弱のケース記述+図表(構成図・シーケンス図・ER図・状態遷移図)+設問」という構成が,読解込みで十分に成立します。イメージとしては,現行の午後Ⅰの1設問分を切り出して多肢選択化した姿を想定するのが自然です。
配分は,12問÷4分野=各3問前後の均等配分が基本線と見ます(FE科目Bのような傾斜配分の可能性は留保します)。
記述式から多肢選択式に変わることで,問われ方は次のように変化すると予想します。
- 「導出させる」から「判定・選択させる」へ。シラバスの「評価・選定」「比較評価し最適な設計案を選定」という動詞は,最初から多肢選択を前提に書かれている節があります。
- 「最も適切なもの」型の相対判断が中心になります。選択肢の弁別が実力測定の主戦場になるため,四択に限らず,六択や組合せ選択(SG科目B型) も想定されます。
- ただし計算・導出問題は消えません。ESの応答時間計算,NWのアドレス設計判定などは,「導出→選択肢と照合」型として多肢選択と両立します。記述廃止=計算消滅ではない点に注意が必要です。
- 部分点は消滅しますが,代わりに独立した12問でリスクが分散します。1問単位での切り替え速度が,新しく要求されるスキルになります。
全問必須解答の戦略的意味
PD-Sは全問必須解答です。これには重い戦略的意味があります。
かりに1分野(3問)を丸ごと捨てると,残り9問でほぼ満点を取らないと合格ラインに届きません。これは実質的に不可能です。つまり,全分野で最低限の得点力が必須になります。
一方で,各問の深さの要求水準は「現行午後Ⅰの1設問レベル」にとどまります。ここから見えてくるPD-Sの性格は,「深く狭い専門家より,広く正確なジェネラリストが受かる試験」 だということです。1分野を極めるより,4分野をまんべんなく押さえる戦略が有効になります。
本論④:学習戦略 ― 現行過去問の使い方
では,どう対策すればよいのか。うれしいことに,現行の過去問がかなり直接的に使えます。
過去問マッピング
前編の統合の構図をふまえると,大項目ごとに使うべき過去問が見えてきます。高度区分の午後Ⅰだけでなく,応用情報(AP)の午後(科目B)過去問も直接使えるのがポイントです。
| PD-Sの大項目 | AP午後(科目B)の過去問 | 高度区分の過去問 |
|---|---|---|
| 大項目1 システムアーキテクチャ | 問4 | SA午後Ⅰ(企画・要件定義系) |
| 大項目2 ネットワーク | 問5 | NW午後Ⅰ |
| 大項目3 フィジカルコンピューティング | 問7 | ES午後Ⅰ |
| 大項目4 システムの開発・運用 | 問8 | SA午後Ⅰ(開発系) |
前編の対応表で示したとおり,PD-Sの4大項目は,AP午後(科目B)の問4・問5・問7・問8とそのまま対応しています。高度区分の過去問はレベル感を合わせる素材として,AP午後の過去問は分野の入口をつかむ素材として使えます。とくにレベル感が高度より易しいAP午後は,各分野の基礎を固める最初の一歩として取り組みやすいでしょう。
過去問は「読解の素材」として直接使える
1問7〜8分の中型ケース問題が想定される以上,現行の午後Ⅰ過去問は,素材としても読解負荷の演習としてもかなり直接的に使えます。これは受験者にとって大きな安心材料です。ゼロから対策を組み立てる必要はありません。
ただし,記述解答を書き上げる練習は不要になります。代わりに,「設問の答えを導出したうえで,選択肢と照合する」という訓練に置き換えてください。過去問の記述解答を,自分で選択肢の形に変換してみる練習も有効です。
形式の練習台
多肢選択という形式そのものに慣れるには,SG科目Bが手近な練習台になります。さらに,今後公開される支援士の新形式やPD-Sのサンプル問題が,最も直接的な形式練習の教材になります。
新規キーワードはシラバス駆動で補完
前編で挙げた新規トピック(ゼロトラスト,マイクロサービス,SRE,AI駆動開発,SBOM,フィジカルAIなど)は,過去問ではカバーできません。ここは過去問演習ではなく,シラバスを起点に用語と概念を押さえるアプローチで補完する必要があります。
時間戦略の注意点 ― A-2で時間を溶かさない
最後に,本番の時間配分について1点。科目Bには構造上,1問7〜8分という十分な時間が確保されています。むしろ危ないのは,科目A-2の知識問題で悩んで時間を溶かすことです。知識問題は,考えても知らなければ出てきません。A-2はテンポよく処理し,科目Bのケース問題にしっかり時間を残す――これが実践的なアドバイスです。
まとめ(後編)+今後について
後編では,出題形式の予想と学習戦略を分析しました。
- 時間の逆算から,科目Bは1問7〜8分の中型ケース問題(現行午後Ⅰの1設問を多択化した姿)と予想
- 各分野3問前後の均等配分が基本線。計算・導出問題は「導出→選択肢照合」型で残る
- 全問必須ゆえに1分野も捨てられない。「広く正確なジェネラリスト」が有利
- 現行の午後Ⅰ過去問が読解素材として直接使える。ただし訓練は「導出→選択肢照合」型に置き換える
- 新規キーワードはシラバス駆動で補完。本番はA-2で時間を溶かさない
免責と,続編の予告
本記事で分析したシラバスは,IPAが2026年6月30日に公開した「試験要綱・シラバスの変更について」に含まれるPD-S科目B シラバス(案)Ver 0.1(PDF)です。(案)Ver 0.1であり,IPA自身が「変更する可能性があります」と明記しています。特に出題形式の予想部分は,現時点での推測であることを改めてお断りしておきます。
新試験のサンプル問題は,2026年夏頃を目途に順次公表される予定です。サンプルが公開されたら,本記事の予想と照らし合わせる 「答え合わせ」の続編 を書く予定です。検証する項目は,次の3つを想定しています。
- 1問あたりのボリューム(本文の分量・図表の有無・選択肢数)
- 分野配分(各3問前後の均等配分になっているか)
- 計算問題の有無(導出型の問題が残っているか)
わく☆すたでは,PD-Sをはじめとする新試験制度の対策情報を,引き続き発信していきます。