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プロフェッショナルデジタルスキル試験の位置付けと,今からできること

プロフェッショナルデジタルスキル試験の位置付けと,今からできること

昨日,IPAから試験の見直しについてが,経済産業省からプレスリリースが公開されました。前回の記事では見直しの全体像を整理しましたが,今回は特にプロフェッショナルデジタルスキル試験に焦点を当て,その位置付けと,今からできる準備について考えていきます。

プロフェッショナルデジタルスキル試験の位置づけ

まず押さえておきたいのが,プロフェッショナルデジタルスキル試験(以下,PD試験)の位置づけです。

PD試験は,現行の 応用情報技術者試験と高度試験を統合・再編 した試験です。マネジメント・データ・AI・システムの3区分に分かれており,1区分に合格すれば応用情報技術者試験合格と同等 の扱いになります。

つまり,PD試験は「応用情報技術者試験(以下,AP試験)+高度試験(以下,高度)」を兼ねた試験であり,1区分の合格で従来のAP試験合格レベルの知識を証明しつつ,専門領域の高度な技能も証明できる仕組みです。

この背景には,元々のAP試験の午後試験で,選択問題の偏りが大きくなっていたことがあります。Society 5.0時代のデジタル人材育成に関する検討会の中の「ITエンジニアリング人材の育成に関するタスクフォース」では,「分野選択に偏りが見られ、品質担保に重要なCSの知識を十分に問い切れていない」という指摘がされていました。ここで,CS(Computer Science)分野とは,プログラミングやアルゴリズム,データベースなどの技術的な基礎知識を指します。

AP試験の午後問題選択では,ビジネス系の問題(経営戦略・プロジェクトマネジメント,システム監査など)が人気で,技術系の問題(アルゴリズム・プログラミング,データベースなど)が敬遠されがちでした。そのため,PD試験では,マネジメント・データ・AI・システムの3区分を設けることで,技術系の問題も含めた全分野をカバーする形に再編されたのです。

ビジネス系の問題を選択してAP試験に合格した人と,PD試験のマネジメント・監査区分に合格した人が同等の扱いになります。その後,データ・AI区分やシステム区分にも合格すれば,フルスタックデジタル人材として認定されるという流れになります。

科目A-1免除の仕組み

PD試験の科目A-1は,3区分共通の基礎知識が問われる試験です。現行のAP試験の科目A(午前)や,高度区分の科目A-1(午前Ⅰ)に相当する内容です。

そのため,科目A-1の免除制度 は従来と同様に適用されます。具体的には,次のような内容です。

  • プロフェッショナルデジタルスキル試験のいずれか1区分に合格 すると,他の区分の科目A-1は 免除 になります
  • 免除期間は,同等の期限を想定 と明記されているので,現行のAP試験の午前(科目A)免除や高度区分・情報処理安全確保支援士試験(以下,SC試験)の午前Ⅰ(科目A-1)免除と同様に,合格後2年間は免除が有効 になると考えられます
  • 経過措置として,2027年度の新試験開始前 にAP試験や高度区分・情報処理安全確保支援士試験の午前Ⅰ(科目A-1)に合格した人も,一定期間PD科目A-1が免除になると,検討案には記述されています

つまり,まず1区分に合格すれば,残りの2区分は科目A-2と科目Bに集中して学習できます。また,今年度(2026年度)中にAP試験や高度区分・SC試験の午前Ⅰに合格すれば,PD試験の科目A-1も免除になる可能性が高いので,今からでも十分に準備できます。

応用情報技術者試験の午後(科目B)問題との対応関係

以前の記事「情報処理技術者試験改訂のポイント 〜フルスタックエンジニアを目指す〜」でも触れましたが,プロフェッショナルデジタルスキル試験の3区分は,現行の応用情報技術者試験の午後(科目B)問題と密接に対応しています。

3区分と応用情報午後問題の対応

プロフェッショナルデジタルスキル試験応用情報 科目B(午後)の対応問題
マネジメント区分
 組織及びビジネスの変革・デジタル戦略問2:経営戦略・情報戦略
 サービスマネジメント問10:サービスマネジメント
 プロジェクトマネジメント問9:プロジェクトマネジメント
 組織のガバナンス・監査問11:システム監査
データ・AI区分
 データマネジメント(新規)
 データ・AIの活用(新規)
 データエンジニアリング問6:データベース
 データ処理とアルゴリズム問3:プログラミング
システム区分
 システムアーキテクチャ問4:システムアーキテクチャ
 ネットワーク問5:ネットワーク
 フィジカルコンピューティング問7:組込みシステム開発
 システムの開発・運用問8:情報システム開発

このように,応用情報技術者試験の午後問題は,プロフェッショナルデジタルスキル試験の3区分の科目B(技能)にほぼそのまま対応しています。応用情報の午後問題を全分野学習することが,そのままプロフェッショナルデジタルスキル試験の科目B対策になる のです。

なお,応用情報の午後問1(情報セキュリティ)は必須問題ですが,プロフェッショナルデジタルスキル試験では情報処理安全確保支援士試験が独立して存在するため,3区分の科目Bには含まれていません。ただし,科目A-1の共通知識としてセキュリティの知識は必要になります。

「AI時代におけるフルスタックスキル」のデジタル証明の発行

AI時代に対応する幅広いスキルを身につける観点から、PDの1つの試験の合格の後にはPDの3試験に全て合格することが,検討案では推奨されています。さらに,プロフェッショナルデジタルスキル試験の3区分すべてに合格すると,「AI時代におけるフルスタックスキル」のデジタル証明が発行されることが検討案に記載されています。
加えて,セキュリティの重要性から,SC試験の合格も推奨されています。PD試験の3区分+SC試験の合格で,特定の専門性を高めていくことにとどまらず幅広いスキルを身につけることが可能になります。

今からできること

シラバス案の公開は2026年度夏頃の予定ですが,それを待つ必要はありません。今からできることはたくさんあります。

1. 応用情報の午後(科目B)の過去問題を「全分野」解く

現行の応用情報技術者試験では,午後(科目B)問題は11問中5問を選択する形式です。多くの受験者は,得意な分野だけを選んで学習しがちですが,プロフェッショナルデジタルスキル試験を見据えるなら,すべての分野を学習する ことをおすすめします。

特に,これまで避けてきた分野がある方は,今がチャンスです。

  • ビジネス系を避けてきた方 → 経営戦略やプロジェクトマネジメントの問題に取り組む
  • プログラミングを避けてきた方 → アルゴリズム・プログラミングの問題に挑戦する
  • データベースを後回しにしていた方 → データベースの基礎から学び直す

応用情報技術者試験の午後問題は,各分野の基礎力を効率よく身につけられる良問が揃っています。全分野を解くことで,フルスタックの基礎力が自然と身についていきます。

2. 2026年度の現行試験に挑戦する

現行の応用情報技術者試験・高度試験は 2026年度で終了 する予定です。2026年度のCBT試験で合格すれば,その実績は当然有効です。

さらに,現行の高度試験・支援士試験に合格していれば,プロフェッショナルデジタルスキル試験の 科目A-1が免除 になる可能性が高いです。今のうちに取得できる資格は取得しておきましょう。

3. データ・AI分野を先取りする

3区分の中で最も「新しい」のが データ・AI区分 です。「データマネジメント」「データ・AIの活用」など,現行試験にはない分野が多く含まれています。

今から少しずつ,以下のような分野に触れておくと,新試験の対策がスムーズになるでしょう。

  • データサイエンスの基礎 — 統計学,データ分析の基本
  • 機械学習・AIの基礎 — 教師あり学習,教師なし学習などの基本概念
  • データマネジメント — データガバナンス,データ品質管理

4. フルスタックを目指す学習計画を立てる

3区分すべての合格で フルスタックデジタル人材 として認定される方向性が示されています。1区分ずつ着実に合格していく計画を立ててみましょう。

おすすめの順序は,ご自身の得意分野から始めることです。

  • システムが得意な方 → システム区分 → マネジメント区分 → データ・AI区分
  • マネジメントが得意な方 → マネジメント区分 → システム区分 → データ・AI区分
  • プログラミングが得意な方 → データ・AI区分 → システム区分 → マネジメント区分

最初の1区分に合格すれば科目A-1が免除になるため,2区分目からは学習負荷が軽くなります。

まとめ

  • プロフェッショナルデジタルスキル試験は,1区分合格で応用情報技術者試験合格相当
  • 科目A-1は3区分共通で,1区分合格すれば他区分は免除
  • 応用情報の午後問題を全分野学習することが,そのまま新試験の科目B対策になる
  • 3区分すべて合格でフルスタックデジタル人材

新試験制度の開始は2027年度夏~秋頃ですが,準備は今から始められます。応用情報技術者試験の午後問題という優れた教材を活用して,フルスタックエンジニアへの第一歩を踏み出しましょう。

今後,シラバス案やサンプル問題が公開されましたら,当ブログで詳しく分析していきます。

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