|

情報処理安全確保支援士(SC)の新シラバス・サンプル問題が公開 ― 午後は「全問選択式」へ,改訂ポイントを読み解く

情報処理安全確保支援士(SC)の新シラバス・サンプル問題が公開 ― 午後は「全問選択式」へ,改訂ポイントを読み解く

2027年度の新試験制度に向けて,情報処理安全確保支援士試験(SC)のシラバス(案)Ver 0.1とサンプル問題が公開されました。SCは新設ではなく新シラバスへの移行ですが,出題形式には「午後が全問選択式になる」という大きな変化があります。この記事では,試験形式の変化・シラバス改訂のポイント・サンプル問題から見える傾向を,まとめて読み解きます。

いちばん大きな変化 ― 記述式がなくなり,「全問選択式」に

昨年度(2025年度)までのSCは,午前I・午前II(多肢選択式)と,午後(記述式)の組合せでした。今年度(2026年度)のCBT試験では,科目A-1,科目A-2,科目Bの構成で実施されます。さらに,来年度(2027年度)からの新試験ではこの構成が変わり,次のようになります。

  • 科目A:知識を問う多肢選択式(共通知識A-1+専門知識A-2)
  • 科目B:技能を問う多肢選択式

ポイントは,これまで記述で答えていた午後に相当する「科目B」も,多肢選択式になることです。公開されたサンプル問題によると,科目Bの出題構成は次のように予定されています。

  • 1問1答(1設問) の問題を,計 8問
  • 1問3答(3設問,全ての設問が必須解答) の問題を,計 4問

つまり科目Bは,全部で12問・20設問。「長文の記述で答案を組み立てる」形式から,「読み取った内容を選択肢で答える」形式へと,解答の作法が根本から変わります。

科目Bは「支援士としての技能」を問う4本柱

シラバス(案)の「目標とする技能」(=科目Bの範囲)は,次の4つの大項目で構成されています。いずれも用語は「〜する能力」で統一され,登録セキスペとして指導・助言・設計・レビューする技能が問われる形です。

  1. 情報セキュリティマネジメントの組織的推進・支援(方針策定,リスクアセスメント,諸規程,サプライチェーン,コンプライアンスなど)
  2. 情報システムのライフサイクルにおけるセキュリティ確保(企画・要件定義,セキュア設計・実装,セキュリティテスト,運用・保守など)
  3. 情報及び情報システムの利用におけるセキュリティ対策(暗号・鍵管理,マルウェア対策,ログ監視,ネットワーク/アカウント管理など)
  4. 情報セキュリティインシデント管理(CSIRT,事象の評価,インシデント対応,証拠保全・フォレンジック)

現行の午後で問われてきた「マネジメント寄り」「技術寄り」の両テーマが,この4本柱にきれいに整理されています。

シラバス改訂のポイント ― AIとクラウドを軸に大幅アップデート

科目A(専門知識)の中身は,大分類「6:セキュリティ」を中心に,ネットワーク・開発運用・サービスマネジメントまで広くカバーします。用語例を見ると,近年のトレンドが大量に取り込まれているのが最大の特徴です。特に目立つ方向性を挙げます。

1. AIが「攻撃対象」にも「防御手段」にもなった

  • AIを悪用した攻撃:マルウェア亜種の自動生成,フィッシング文面の巧妙化,ディープフェイク・音声クローン
  • AIシステムに対する攻撃プロンプトインジェクション(直接・間接),ジェイルブレイク,敵対的サンプル,データポイズニング,モデル窃取
  • Security for AI(AIを守る対策):プロンプト分離,RAG用データの保護,OWASP Top 10 for LLM Applications
  • 脆弱性の用語例に OWASP API Security Top 10 も追加

2. ゼロトラストとクラウド/コンテナが前提に

  • ゼロトラスト:ZTA,NIST SP 800-207,PDP/PEP,ZTNA,マイクロセグメンテーション,継続的な検証
  • クラウド・コンテナのセキュリティ:責任共有モデル,CSPM・CWPP・CASB・SASE,IaC(Infrastructure as Code)のセキュリティスキャン,クラウドの設定不備

3. 検知・対応と脆弱性管理の高度化

  • 検知・対応EDR・NDR・XDR・SOAR,SIEM,MSS/MDR,SOC運用
  • 脆弱性評価:CVSSに加え,KEV・EPSS・SSVC,SCA(ソフトウェア構成分析),SBOMを利用した脆弱性管理

4. 供給網・暗号の新潮流

  • サプライチェーンSBOM,SLSA,依存関係混同(Dependency Confusion),署名付きコミット
  • 耐量子計算機暗号(PQC)ML-KEM・ML-DSA,暗号アジリティ(Crypto Agility),量子鍵配送(QKD)
  • 認証パスワードレス認証(FIDO・WebAuthn・パスキー),フィッシング耐性のある認証,MFA疲労攻撃への言及

このほか,ランサムウェア対策(3-2-1ルール,イミュータブルバックアップ,WORM),MITRE ATT&CK,ラテラルムーブメントなど,実務の現場感覚に沿った用語が数多く追加されています。

サンプル問題からわかること(+ちょっとしたチップス)

公開されたサンプル問題(科目B)は2問構成で,形式のイメージがつかめます。

  • 問1(1問1答の例):情報資産台帳とリスクアセスメントがテーマ。機密性・完全性・可用性の評価値と重要度の考え方を,部署からの質問に的確に答えられるか。3つの回答の組合せを8択から選ぶ形式です。
  • 問2(1問3答の例)Webサイトのセキュリティ診断がテーマ。診断報告書の穴埋めを通じて,セッションフィクセーション(Session Fixation)脆弱性やCSRF,画面遷移とURLの対応を読み解きます。設問3の修正方法は「使用したsessionIDを無効化して,新しいsessionIDを発行する」でした。

ここでひとつチップスです。問2は,構成もテーマも令和6年秋 午後 問4を思わせる作りになっています。Webアプリの脆弱性診断・セッション管理という題材を,記述式から選択式に「仕立て直した」ような印象で,読み取るべき図表(画面遷移図・診断報告書)の作り方は現行の午後問題とよく似ています。

裏を返せば,現行のSC午後問題(特にWebセキュリティ・セッション管理系)は,形式が変わっても学習素材としてそのまま有効だということです。記述の練習は不要になりますが,「図表を正確に読み,脆弱性と対策を結びつける」という中核の力は変わりません。過去問を,選択式を意識して読み直しておくのがおすすめです。

まとめ

  • SCは新設ではなく新シラバスへの移行。ただし午後(科目B)が記述式から全問選択式へという大きな変化がある
  • 科目Bは 1問1答×8問+1問3答×4問 の構成で,「支援士としての技能」を4本柱で問う
  • シラバスはAI(攻撃・防御)/ゼロトラスト/クラウド・コンテナ/検知対応の高度化/PQCなど,最新トレンドを大幅に取り込んだ
  • サンプル問題は現行の午後問題と地続き。過去問は選択式を意識して読み直せば十分に使える

新試験全体の公開状況は,新試験のシラバス・サンプル問題が公開!(全体まとめ)や,SC(支援士)の区分ページでも整理しています。

出典:本記事は,IPA公開の情報処理安全確保支援士試験 シラバス(案)Ver 0.1PDF)と,科目Bのサンプル問題PDF)を分析対象としています。いずれも (案) であり,IPAは「変更する可能性があります」と明記しています。

この記事をシェア