データサイエンティスト区分のIT資格 〜プロフェッショナルデジタルスキル試験(データ・AI)に向けて〜
先日,日経XTECHから「独自分析の「IT資格マップ」 難易度で整理、スキル習得の道筋を探る」という記事が公開されました。とても興味深い記事だったのですが,デジタル分野のスキル区分にデータサイエンティスト関連の資格が含まれていないことに気づきました。本記事では,データサイエンティストを目指す方向けのIT資格を,難易度別に整理してお伝えします。
なぜデータサイエンティスト資格をまとめるのか
2027年度から開始予定の プロフェッショナルデジタルスキル試験(PD試験) では,「マネジメント」「データ・AI」「システム」の3区分が設けられます(詳しくは プロフェッショナルデジタルスキル試験の位置付けと,今からできること をご覧ください)。
このうち データ・AI区分 は,現行試験のデータベーススペシャリスト試験を引き継ぎつつ,データマネジメント・データ分析・AI活用など,データサイエンティストとしてのスキル を幅広く問う内容となる予定です。
ところが,新試験までまだ時間があるなかで,「データサイエンティストとしてのスキルを今からどう身につけていけばよいか」という具体的な道筋は,まだあまり整理されていません。今回は,データサイエンティストに関連するIT資格を,入門〜上級まで難易度別に整理 することで,今から取り組める学習計画の参考になることを目指します。
データサイエンティストに必要な3つのスキル
データサイエンティスト協会が定義する データサイエンティストの3つのスキル領域 は,以下のとおりです。
| スキル領域 | 内容 |
|---|---|
| ビジネス力 | 課題を整理し,解決の道筋を立てる力 |
| データサイエンス力 | 統計学・機械学習などの数理的な力 |
| データエンジニアリング力 | データを扱う情報処理技術 |
データサイエンティストに関連する資格も,これらのスキル領域をカバーするものが多くあります。本記事の資格選びも,これらのスキル領域をふまえて整理しています。
難易度別:データサイエンティスト関連の資格
入門レベル(初学者向け)
データサイエンスやAIの基礎を学び始めた方向けの資格です。
| 資格名 | 主催 | 内容 |
|---|---|---|
| ITパスポート試験 | IPA | IT全般のリテラシー。2027年度改訂でデータマネジメント・AI利活用が強化 |
| G検定 | 日本ディープラーニング協会(JDLA) | AI・ディープラーニングのビジネス活用知識 |
| DS検定★(リテラシーレベル) | データサイエンティスト協会 | データサイエンティストの3つのスキルの基礎 |
| 統計検定3級 | 統計質保証推進協会 | 基礎的な統計の知識 |
| 統計検定 データサイエンス基礎 | 統計質保証推進協会 | Excelを用いたデータ分析の基礎 |
| Python3エンジニア認定基礎試験 | Pythonエンジニア育成推進協会 | Pythonの基礎文法 |
統計検定には,級別の試験(4級〜1級)に加えて,データ分析の実践に特化した データサイエンス系(基礎・発展・エキスパート) という別系統の試験があります。級別が統計学の理論を体系的に問うのに対し,データサイエンス系はツールを用いた実践的な分析力を問う内容になっています。
おすすめの取り組み順序:
- ITパスポート試験で全体像を把握
- DS検定★でデータサイエンスの全体像を把握
- G検定でAIの基礎知識を獲得
- 統計検定3級または統計検定データサイエンス基礎でデータ分析の基礎を固める
- Python3エンジニア認定基礎試験でプログラミングの基礎を固める
初級レベル(基礎を固める段階)
基礎を一通り学び,実践的なスキルを身につけ始める段階の資格です。
| 資格名 | 主催 | 内容 |
|---|---|---|
| 基本情報技術者試験 | IPA | ITエンジニアの基礎。アルゴリズム・データベース・統計の基礎を含む |
| 統計検定2級 | 統計質保証推進協会 | 大学基礎課程レベルの統計学 |
| 統計検定 データサイエンス発展 | 統計質保証推進協会 | 数理・データサイエンス・AI教育プログラム(リテラシーレベル)相当 |
| Python3エンジニア認定データ分析試験 | Pythonエンジニア育成推進協会 | NumPy・pandas・scikit-learn等の基礎 |
| Microsoft Certified: Azure AI Fundamentals (AI-900) | Microsoft | クラウド上のAIサービスの基礎 |
| AWS Certified AI Practitioner | AWS | クラウド上のAIサービスの基礎 |
おすすめの取り組み順序:
- 基本情報技術者試験でITエンジニアとしての基礎を固める
- 統計検定2級で統計の基礎を固める
- 統計検定データサイエンス発展でデータサイエンスの応用知識を体系化する
- Python3エンジニア認定データ分析試験で実装力をつける
- クラウドAIサービスのFundamentals資格でクラウド活用の基礎を学ぶ
中級レベル(実務経験を積む段階)
実務でデータを扱い始めた方,より専門的なスキルを身につけたい方向けの資格です。データベーススペシャリスト試験はあと1回(2027年初頭)で終了予定のため,今のうちに挑戦しておくとよいでしょう。
| 資格名 | 主催 | 内容 |
|---|---|---|
| 応用情報技術者試験 | IPA | ITエンジニアの応用力。アルゴリズム・データベース・経営戦略を含む |
| データベーススペシャリスト試験(DB) 2027年初頭まで | IPA | データベース設計・運用の高度な知識 |
| E資格 | 日本ディープラーニング協会(JDLA) | ディープラーニングの理論と実装 |
| 統計検定準1級 | 統計質保証推進協会 | 多変量解析・機械学習等の応用統計 |
| 統計検定 データサイエンスエキスパート | 統計質保証推進協会 | 数理・データサイエンス・AI教育プログラム(エキスパートレベル)相当 |
| Microsoft Certified: Azure Data Scientist Associate (DP-100) | Microsoft | Azure Machine Learningによるモデル開発・運用 |
| Google Cloud Professional Data Engineer | Google Cloud | GCP上でのデータ基盤構築 |
| AWS Certified Data Engineer - Associate | AWS | AWS上でのデータパイプライン構築 |
おすすめの取り組み順序:
- 応用情報技術者試験で全体的な応用力をつける
- データベーススペシャリスト試験でデータ基盤の深い知識を獲得
- E資格でAIの理論と実装力を証明
- 統計検定準1級または統計検定データサイエンスエキスパートで応用統計・データサイエンスの実力を証明
- クラウドベンダーのデータ系資格で実務スキルを証明
上級レベル(専門家を目指す段階)
データサイエンティストの第一線で活躍することを目指す方向けの資格です。
| 資格名 | 主催 | 内容 |
|---|---|---|
| プロフェッショナルデジタルスキル試験(データ・AI) 2027年度〜 | IPA | データサイエンティストとしての総合的な専門スキル |
| 統計検定1級 | 統計質保証推進協会 | 大学専門課程レベルの統計学 |
| Google Cloud Professional Machine Learning Engineer | Google Cloud | GCP上での機械学習システム設計・運用 |
| AWS Certified Machine Learning - Specialty | AWS | AWS上での機械学習システム設計・運用 |
おすすめの取り組み順序:
- 統計検定1級で統計学の深い理解を証明
- クラウドベンダーのML系上位資格で高度な実装力を証明
- PD試験(データ・AI)合格で総合的なスキルを証明
PD試験(データ・AI)に向けた学習ロードマップ
PD試験(データ・AI)の科目B(技能)の出題範囲は,以下の4つです(こちらの記事参照)。
- データマネジメント
- データ・AIの活用
- データエンジニアリング
- データ処理とアルゴリズム
PD試験(データ・AI)では,データサイエンスだけではなく,データエンジニアリングやデータマネジメントのスキルも問われるため,幅広い知識が必要になります。これらに対応する資格を組み合わせて学習することで,PD試験合格にもデータサイエンティストとしての実務スキル獲得にも役立ちます。
ロードマップ例:未経験から3年でPD試験合格を目指す
| 時期 | 取得目標 |
|---|---|
| 1年目前半 | ITパスポート → G検定 → 統計検定3級 |
| 1年目後半 | 基本情報技術者試験 → DS検定★ → 統計検定データサイエンス基礎 |
| 2年目前半 | 統計検定2級 → Python3エンジニア認定データ分析試験 |
| 2年目後半 | 応用情報技術者試験 → 統計検定データサイエンス発展 → クラウドFundamentals資格 |
| 3年目前半 | E資格 → 統計検定準1級(または統計検定データサイエンスエキスパート) |
| 3年目後半 | PD試験(データ・AI) |
バックグラウンドや学習にかけられる時間によってペースは変わります。また,すべての資格を取る必要はなく,ご自身の興味やキャリアプランに合わせて選択していただければと思います。重要なのは,入門 → 初級 → 中級 → 上級 と段階的にスキルを積み上げていくことです。
まとめ
- データサイエンティスト関連の資格は 入門〜上級まで多岐にわたる
- PD試験(データ・AI)合格に向けて,段階的な資格取得 が有効
- 統計学・プログラミング・データ基盤・AI実装の 4つの軸 をバランスよく学ぶ
データサイエンティストへの道は長いですが,資格を一つひとつ積み重ねていくことで,着実にスキルを身につけられます。2027年度のPD試験(データ・AI)合格を見据えて,今から計画的に学習を進めていきましょう。
新しい情報が出ましたら,またブログでお知らせします。