情報処理技術者試験:旧資格と新資格の対応関係(2027年度版)
2013年に書いた「情報処理技術者試験:旧資格と新資格の対応関係」の記事は,おかげさまで現在も多くの方に読んでいただいています。あれから10年以上が経ち,2027年度には情報処理技術者試験が大きく改訂されることになりました。今回は,2027年度の試験制度改訂を踏まえて,新旧資格の対応関係を改めて整理してみます。
2027年度の試験制度改訂とは
2027年度から,情報処理技術者試験は大きく再編されます。詳細は以下の記事をご覧ください。
- 2027年度の新試験が見えてきた!プロフェッショナルデジタルスキル試験とは?
- プロフェッショナルデジタルスキル試験の位置付けと,今からできること
- 新シラバスのポイント 〜大分類「データ・AIの利活用」の新設〜
主な変更点は以下のとおりです。
- 応用情報技術者試験 と 高度試験(ST,SA,PM,DB,ES,AU,SM,NW)が統合・再編され,プロフェッショナルデジタルスキル試験(PD試験)に
- PD試験は マネジメント・データ・AI・システム の3区分
- データマネジメント試験(DM試験)が新設
- 情報処理安全確保支援士試験(SC試験)は独立して存続,内容を改訂
- ITパスポート試験,情報セキュリティマネジメント試験,基本情報技術者試験はシラバスを改訂
これに伴い,旧資格と新資格の対応関係についても,新たな整理が必要になります。
事実としての対応関係
公式の情報をもとに,事実として対応関係が明らかなものを整理します。
1. 名称変更・継続が明確な資格
| 旧資格(〜2026年度) | 新資格(2027年度〜) | 備考 |
|---|---|---|
| ITパスポート試験 | ITパスポート試験 | シラバスを改訂(DXマインド・データマネジメント基礎などを追加) |
| 情報セキュリティマネジメント試験 | 情報セキュリティマネジメント試験 | 科目Aの体系・科目Bの内容を変更 |
| 基本情報技術者試験 | 基本情報技術者試験 | 科目Aの体系・科目Bの内容を変更 |
| 情報処理安全確保支援士試験 | 情報処理安全確保支援士試験 | マネジメント分野の強化など |
これらは試験名がそのままで,シラバスや試験形式が改訂される形です。
新シラバスの要項を見る限り,基本情報技術者試験と情報セキュリティマネジメント試験は,科目Bよりも科目Aの体系が大きく変わる印象です。ITパスポート試験と同様に,データマネジメントなどのデータ・AI利活用に関する新しい内容が追加されます。
2. 統合・再編される資格
応用情報技術者試験と高度試験のうち以下の8区分が,プロフェッショナルデジタルスキル試験(PD試験) に統合・再編されます。
| 旧資格 | PD試験 区分(想定) |
|---|---|
| 応用情報技術者試験(AP) | 1区分合格でAP相当 |
| ITストラテジスト試験(ST) | マネジメント |
| システムアーキテクト試験(SA) | システム |
| プロジェクトマネージャ試験(PM) | マネジメント |
| データベーススペシャリスト試験(DB) | データ・AI |
| エンベデッドシステムスペシャリスト試験(ES) | システム |
| ITサービスマネージャ試験(SM) | マネジメント |
| システム監査技術者試験(AU) | マネジメント |
| ネットワークスペシャリスト試験(NW) | システム |
PD試験の3区分(マネジメント・データ・AI・システム)は,スキル(役割,職能)軸 で整理されており,旧来の高度試験の 人材像 とは対応関係が単純ではありません。科目B試験が 多肢選択式 になることも踏まえると,問われる内容は大きく変わると考えられます。
3. 新設される資格
| 新資格 | 内容 |
|---|---|
| データマネジメント試験(DM試験) | データ・AIの利活用に必要な基礎知識を評価。ITパスポートの次のステップ |
| プロフェッショナルデジタルスキル試験(PD試験) | 応用情報+高度試験の統合,3区分 |
世間一般での対応への予想
ここからは,2013年版と同じく「世間一般でどのように扱われるようになるか」の予想を書きます。あくまで筆者の見立てであり,公式の対応関係ではない点にご注意ください。
予想1:「PD試験 = 旧 応用情報+α」と認識される
PD試験は1区分合格で応用情報相当,3区分合格でフルスタックデジタル人材として認定される予定です。公式には,以下のような対応関係が示されています。
- PD試験のいずれか1区分合格 ≒ AP試験合格
従来のAP試験は,11問中5問選択で,選択の分野によって学習する内容が大きく異なりました。そのため,いわゆる「文系セット」(経営戦略・プロジェクトマネジメント・サービスマネジメント・システム監査)で合格している人もいれば,アルゴリズムやDBをちゃんと学んで合格している人もいました。文系セットだけだと技術的な内容がほとんど含まれておらず,「本来身につけるべき技術的なスキルがないままAP試験に合格している人もいる」という状況が生まれていました。それが問題視されての試験制度の改革です。
このため,最低限のラインとして,次のことは言えると考えられます。
- PD試験のマネジメント区分合格 ≒ 「文系セット」でのAP合格
- PD試験のデータ・AI区分合格 ≒ アルゴリズムやDBを学んでAP合格
- PD試験のシステム区分合格 ≒ ネットワークやシステム開発を学んでAP合格
ただし,旧来の高度試験の専門分野も含まれる内容となっており,PD試験の内容自体はAP試験よりも広範で深いものになると予想されます。したがって,「PD試験 = 旧 応用情報+α」と認識されるようになるでしょう。
PD試験が 多肢選択式 であることを考えると,従来の記述式のような「国語力」が問われる問題は減るとは考えられ,より「知識・理解」を問う問題が増えると予想されます。
この試験が,今年度までの高度区分と同等の評価になることは難しいのではないかと予想しています。今までの専門性の追求とは役割を変え,「幅広くフルスタックな知識を身につけて,3つとも合格する。できれば情報処理安全確保支援士試験も合格する」というのが,目指すべき方向性になるでしょう。
予想2:旧高度試験の方が「専門性が高い」と扱われる時期がしばらく続く
予想1に関連して,新試験制度が始まった直後は,旧高度試験の合格者の方が「特定分野の専門性が証明されている」として高く評価される時期がしばらく続くと予想されます。
特に,以下のような場面では旧資格が引き続き有効に機能するでしょう。
- 求人票の応募要件: 「ネットワークスペシャリスト相当」のような記載
- 公共調達の技術者要件: 既存の規定で旧資格が指定されている場合
- 社内の資格手当・昇進要件: 旧資格を前提にした制度が残っている
新試験への移行に伴って,徐々に「PD-S(システム区分)」のような新資格名に置き換わっていくと考えられますが,過渡期には数年かかる でしょう。
後に論述の試験を新設する,という話はありますが,2028年度以降の予定です。現行の試験は2026年度が最後で,2027年度には受験することはできなくなります。高度区分の合格が必要な方,高度区分レベルのスキルがあることを証明したい方は,2026年度のうちに受験しておくことをおすすめします。
予想3:「フルスタックデジタル人材」という新しい肩書きが定着する
PD試験の3区分すべてに合格すると「フルスタックデジタル人材」として認定される方向性が示されています。これは情報処理技術者試験の歴史上はじめて,複数区分の合格をまとめて評価する仕組み です。
そのため,1区分の合格だけではあまり意味がないとされる可能性もありますが,逆に3区分すべてに合格している人は,「幅広い知識を持ち,複数の役割をこなせる人材」として高く評価されるようになるでしょう。
新シラバスを見る限り,最も取得難易度の高いPD試験は データ・AI区分 になると予想されます。データ・AIの知識はこれからのITエンジニアにとって必須のスキルになっているため,この区分に合格している人は特に評価されるようになるのではないかと予想しています。
多肢選択式の試験で最も難易度を上げやすいのはアルゴリズムやデータ分析の分野だと考えられるため,データ・AI区分の内容はかなり難しくなるのではないかと予想しています。マネジメント系の区分での多肢選択式はPMP(Project Management Professional)などのように,考え方を問う問題が中心になるのではないかと予想しています。
予想4:旧資格は「現役感のあるベテラン」の印として残る
2013年版の記事で書いたように,「上級システムアドミニストレータ(現:ITストラテジスト)」のような対応関係は,完全には成り立たない ことが多いものです。
2027年度の改訂後も,「ネットワークスペシャリスト(現:プロフェッショナルデジタルスキル(システム)試験)」のような書き方が出てくると思いますが,これも厳密にはイコールではありません。
ただし,旧資格の名前を出すこと自体が,「その時代に第一線で活躍していた」 という印として機能する側面もあります。たとえば「テクニカルエンジニア(情報セキュリティ)」と書かれていれば,平成18〜20年頃に活動していたエンジニアだとわかります。これは,年代を示すサインとしての価値があります。
私自身も,いまだに「一種持ってます」「プロダクションエンジニア持ってます」と言うと,「昔からIT業界で活躍している人」という印象を持たれることがあります。旧資格は,「現役感のあるベテラン」の印として残る 可能性が高いと予想しています。
旧資格の系譜(2027年度版)
2013年版の系譜に,途中での変更や2027年度の新試験を追記した形で整理します。(名称変更がないものは1つにまとめています。)
1. 基本情報技術者系
第二種情報処理技術者(昭和44年〜平成12年) →
基本情報技術者(紙試験,平成13年〜令和元年)→
基本情報技術者試験(CBT化,令和2年〜4年) →
基本情報技術者試験(プログラミング言語廃止,令和5年〜8年) →
基本情報技術者試験(シラバス改訂,令和9年〜)
基本情報技術者試験の場合は,CBT化のタイミングで合格率が大きく上がりました。令和5年からはプログラミング言語がなくなり,擬似言語に統一されるなど,CBTに合わせて内容が大きく変わっています。名称自体は変わっていませんが,問われる内容は時代によって大きく変わっています。
2. 応用情報技術者系
第一種情報処理技術者(昭和44年〜平成12年) →
ソフトウェア開発技術者(平成13年〜) →
応用情報技術者(平成21年〜令和8年) →
プロフェッショナルデジタルスキル試験(1区分合格でAP相当)(令和9年〜)
こちらは,一種(第一種情報処理技術者)からソフトウェア開発技術者,さらに応用情報技術者への名称変更のタイミングで,内容も大きく変わっています。さらに,2027年度の改訂でPD試験の1区分合格がAP相当になる予定ですが,内容はAP試験よりも広範で深いものになると予想されます。
3. 特種(SE王道)資格系
特種情報処理技術者(昭和46年〜) →
システムアナリスト(平成6年〜) →
ITストラテジスト(平成21年〜令和8年)→
プロジェクトマネージャ(平成6年〜令和8年) →
システム運用管理エンジニア(平成7年〜) →
テクニカルエンジニア(システム管理)(平成13年〜) →
ITサービスマネージャ(平成21年〜令和8年) →
⇒ プロフェッショナルデジタルスキル(マネジメント)(令和9年〜)
アプリケーションエンジニア(平成6年〜) →
システムアーキテクト(平成21年〜令和8年)
→ プロフェッショナルデジタルスキル(システム)(令和9年〜)
平成6年に,一種の上の最高峰の資格の一つだった特種情報処理技術者が,システムアナリスト,プロジェクトマネージャ,システム運用管理エンジニア,アプリケーションエンジニアの4つの試験区分に分割されました。
途中の名称変更を経て,再び統合されるかたちで,プロフェッショナルデジタルスキル試験のマネジメント区分とシステム区分に再編される予定です。IPAの資料を見ると,ITサービスマネージャは一部,プロフェッショナルデジタルスキル(システム)にも一部再編されるようです。
4. システム監査系
情報処理システム監査技術者(昭和61年〜) →
システム監査技術者(平成6年〜令和8年) →
プロフェッショナルデジタルスキル(マネジメント)(令和9年〜)
こちらは,独立した試験区分として存在したシステム監査に関する試験でしたが,今回はプロフェッショナルデジタルスキル(マネジメント)に統合される予定です。
システム監査人など,関連する資格の条件の変更が気になるところでもあります。
5. スペシャリスト系
オンライン情報処理技術者(昭和63年〜) →
ネットワークスペシャリスト(平成6年〜) →
テクニカルエンジニア(ネットワーク)(平成13年〜) →
ネットワークスペシャリスト(平成21年〜令和8年) →
マイコン応用システムエンジニア(平成8年〜) →
テクニカルエンジニア(エンベデッドシステム)(平成13年〜) →
エンベデッドシステムスペシャリスト(平成21年〜令和8年) →
⇒ プロフェッショナルデジタルスキル(システム)(令和9年〜)
データベーススペシャリスト(平成7年〜) →
テクニカルエンジニア(データベース)(平成13年〜) →
データベーススペシャリスト(平成21年〜令和8年)
→ プロフェッショナルデジタルスキル(データ・AI)(令和9年〜)
スペシャリストだったりエンジニアだったり,いろいろ名称を変更してきたネットワーク,組込み,データベースに関する試験区分ですが,2027年度の改訂でそれぞれプロフェッショナルデジタルスキルのシステム区分とデータ・AI区分に再編される予定です。
単純に対応する高度区分の再編というだけではなく,システム系にはシステムアーキテクチャ,データ・AI系にはプログラミングなど,応用情報技術者試験の分野で高度区分が存在しない分野も含まれます。そのため,試験内容としては大きく拡張されるのではないかと予想されます。
6. リテラシー系
システムアドミニストレータ(平成6年〜) →
初級システムアドミニストレータ(平成8年〜)
→ ITパスポート(平成21年〜,令和9年改訂)
ユーザ向けの入門資格としての位置づけです。初級システムアドミニストレータは廃止になり,ITパスポート試験が新設されました。ITパスポート試験も基本情報技術者試験と同様に,名称は変更されていませんが内容は大きく変わっています。2027年度の改訂では,DXマインドやデータマネジメント基礎などの内容が追加され,逆に擬似言語などのプログラミング関連の内容は削減される予定です。
7. 情報セキュリティ系
情報セキュリティアドミニストレータ(平成13〜20年)
テクニカルエンジニア(情報セキュリティ)(平成18年〜)
⇒ 情報セキュリティスペシャリスト(平成21〜28年)
→ 情報処理安全確保支援士(平成29年〜,令和9年改訂)
情報セキュリティマネジメント(平成21年〜,令和9年改訂)
情報セキュリティ系の資格には,マネジメント系(情報セキュリティマネジメント試験)と技術系(情報処理安全確保支援士試験)の2つの系統が並行して存在しており,時代に合わせて制度も試験内容も変化を続けてきた分野です。
2027年度の改訂では,情報処理安全確保支援士試験は独立した資格として存続しつつ,多肢選択式への変更とマネジメント分野の強化が行われます。情報セキュリティマネジメント試験も,データ分析・AI利活用などの内容が追加される形でシラバスが改訂される予定です。
8. データ・AI系
(新設)
データマネジメント試験(令和9年〜)
プロフェッショナルデジタルスキル(データ・AI)(令和9年〜)
データ・AI系は,今回の改訂で新たに体系化された分野です。これまで断片的に各試験で扱われていたデータ・AIの知識が,独立した資格体系として整備されます。一応,データベーススペシャリスト試験がデータ・AI区分に再編される予定ですが,内容は大きく拡張されると予想されます。
2027年度を見据えて
2013年版の最後で「現行資格を取り直した方がいい」と書きましたが,今回も同じことが言えます。
2027年度の改訂は,これまでで最大規模の試験制度改訂と言って過言ではありません。
- 2026年度のうちに現行試験に挑戦する — 取得できる資格は今のうちに取得しておきたい
- 新試験制度を理解する — どの区分が自分に合っているか考える
- データ・AI分野の学習を始める — 新試験で重視される分野
- フルスタックを目指す — 3区分すべての合格を視野に入れる
時代によって試験の名前も内容も変わっていきますが,学び続ける姿勢 こそがエンジニアにとって最も大切なことです。新しい資格制度を,スキルアップの良い機会として活用していきましょう。
10年後にこの記事を見返したとき,「あのときPD試験ができたんだよね」と懐かしく振り返れるよう,今この瞬間の制度改訂を,ぜひ前向きに迎えていきましょう。