プロフェッショナルデジタルスキル(システム)試験を読み解く【科目A編】― シラバスVer 0.2で見えた専門知識と、現行からの大変化
プロフェッショナルデジタルスキル試験のシラバス(案)がVer 0.2に更新され,PD-S(システム)とPD-M(マネジメント)の2区分が公開されました。前回までの前編・後編は科目Bを扱いましたが,今回は新たに中身が見えてきた科目A(専門知識)を,現行試験から大きく変わったところを中心に読み解きます。
シラバス(案)Ver 0.2で「科目A」が見えてきた
前編・後編で分析したVer 0.1では,公開されていたのは 科目Bのシラバス のみでした。今回のVer 0.2では,科目A(専門知識)の用語例 が加わり,PD-Sで問われる知識の範囲がかなり具体的に見えるようになりました。
まず,科目Aの構成を整理しておきます。科目Aは,次の2階層に分かれます。
- 科目A-1(共通知識):全区分共通の知識。用語例は別途「共通知識 シラバス(案)」で示される予定で,現時点では未公開 です。
- 科目A-2(専門知識):区分ごとの専門知識。今回のVer 0.2で公開されたのはこちら です。
つまり今回見えたのは,PD-S固有の専門知識(科目A-2) の中身ということになります。前回の記事(PD-S後編)で触れたとおり,科目A-2は知識を問う多肢選択式(23問)で,テンポよく処理すべきパートです。
科目A-2(専門知識)が扱う範囲
Ver 0.2で示されたPD-Sの科目A-2は,新しい共通体系の 大分類・中分類 でいうと,次の範囲をカバーしています。
| 大分類 | 中分類 |
|---|---|
| 1 ビジネス変革 | 2 経営戦略・デジタル戦略 |
| 4 デジタル技術 | 13 デジタルサービス・デジタルツール |
| 4 デジタル技術 | 14 システムの種類・構成 |
| 4 デジタル技術 | 15 クラウド |
| 4 デジタル技術 | 16 ネットワーク |
| 4 デジタル技術 | 17 データベース |
| 5 システムの開発・運用 | 20 システムライフサイクルプロセス |
| 5 システムの開発・運用 | 21 開発・運用の方法論 |
| 6 セキュリティ | 26 セキュリティ実装技術・評価 |
「デジタル戦略」から「システム構成・クラウド・ネットワーク・データベース」「開発・運用」「セキュリティ実装」まで,システムを企画・設計・開発・運用するための技術知識が広く並びます。科目Bの4大項目(前編参照)を,知識面から支える構成になっていると言えます。
現行から大きく変わったところ
用語例を現行試験のシラバスと見比べると,AIとクラウドネイティブを軸に,近年のトレンドが大量に取り込まれているのが最大の特徴です。特に目立つ3つの方向性を挙げます。
(現行のシラバスはIPAのシラバス一覧,変更の全体像は出題範囲の新旧対応表で確認できます。)
変化1:AIが「使う」から「作る・守る」まで全面展開
最も大きな変化はAIです。単なる用語紹介ではなく,AIを開発し,運用し,守るところまで踏み込んでいます。
- AI駆動開発(中分類21):バイブコーディング,エージェンティックコーディング,仕様駆動開発(SDD),Mermaid記法,Lintチェックの導入
- AI開発プロジェクト:MLOps,LLMOps,AIBOM(AI Bill of Materials),AI事業者ガイドライン,CRISP-ML
- フィジカルAI(ハードウェア設計):世界モデル(World Models),アクティブ推論,ロボット基盤モデル(VLA/VLM),Sim to Real Gap,安全強化学習
- AIセキュリティ(中分類26):プロンプトインジェクション対策,LLMの脅威への対策
- デジタル戦略でも「最新技術の活用(生成AIなど)」が明記
「バイブコーディング」「エージェンティックコーディング」「世界モデル」といった用語がシラバスに載るのは,時代の変化を強く感じさせるポイントです。
変化2:クラウドネイティブとSREが前提に
インフラ・運用の考え方も,現行から大きく現代化しています。
- クラウド(中分類15):共有責任モデル,FinOps,クラウド移行(Rehost/Replatform/Refactor/Retain/Retire),モダナイゼーション,ランディングゾーン,IaC(Infrastructure as Code),Policy as Code,コンテナ(Docker,Kubernetes)
- SRE/DevOps(中分類21):SRE(サイト信頼性エンジニアリング),エラーバジェット,DORAメトリクス/Four Keys,オブザーバビリティ,OpenTelemetry,GitOps,トランクベース開発,DevSecOps,カオスエンジニアリング
運用が「障害対応」から「SREによる信頼性の設計」へ,コストも「FinOpsによる最適化」へと、キーワードのレベルが一段上がっています。
変化3:モダンな設計とソフトウェア供給網(サプライチェーン)
設計手法と,セキュリティ・供給網の観点も新しくなっています。
- モダンな設計:ドメイン駆動設計(DDD),クリーンアーキテクチャ,ヘキサゴナルアーキテクチャ,CQRS,マイクロサービス
- ソフトウェア供給網:SBOM(Software Bill of Materials),前述のAIBOM
- サイバーフィジカル(中分類14):サイバーフィジカルシステム(CPS),デジタルツイン,エッジAI
このほか,ネットワークではQUICやゼロトラスト、5G系(SA/NSA方式,ネットワークスライシング,eSIM)など、定番領域の用語も軒並み最新版に差し替えられています。
まとめと、今後について
Ver 0.2で見えたPD-Sの科目A(専門知識)は,次のようにまとめられます。
- 公開されたのは科目A-2(専門知識)。科目A-1(共通知識)は別シラバスで後日公開
- 範囲は大分類1・4・5・6にまたがり、企画から開発・運用・セキュリティまで広くカバー
- 現行からの最大の変化は,AI(作る・守る)とクラウドネイティブ/SREの全面的な取り込み
- バイブコーディング・世界モデル・FinOps・SBOM・オブザーバビリティなど、これまでの試験にはなかった新語が多数
これらの新語は,前編で述べたとおり過去問が存在しない領域でもあります。シラバスを起点に、用語の意味と背景を早めに押さえておくのが得策です。
なお、今回のVer 0.2では PD-M(マネジメント)試験 のシラバスも同時に公開されています。PD-Mについては、科目Bを分析した記事(前編/後編)をすでに公開しています。この記事のPD-M版にあたる 科目A編(Ver 0.2) も、明日更新する予定です。
出典:本記事は,IPA公開のPD-S(システム)試験 シラバス(案)Ver 0.2(PDF)を分析対象とし、出題範囲の改定案・新旧対応表・現行シラバスを参照しています。いずれも (案) であり、IPAは「変更する可能性があります」と明記しています。
▶ シリーズ:【前編】統合の構図/【後編】出題形式と学習戦略/【科目A編】(本記事)