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PD-D(データ・AI)科目Bサンプル問題を読む ― 6問とシラバス4大項目の対応,既存の試験とのつながり

PD-D(データ・AI)科目Bサンプル問題を読む ― 6問とシラバス4大項目の対応,既存の試験とのつながり

2027年度に新設されるプロフェッショナルデジタルスキル(データ・AI)試験(仮称,PD-D)について,前回はシラバス(案)を読み解きました。今回は,同時に公開された科目Bのサンプル問題6問を,シラバスの4つの大項目・小項目と対応させながら読んでいきます。あわせて,現行の高度区分や応用情報技術者(AP)試験の科目Bのどの分野とつながっているのかも整理します。「既存の試験とはほとんど重ならない」試験ではありますが,問題単位で見ると,つながる先はそれなりにあります。

科目Bサンプルの全体像 ― 6問・全問多肢選択式

公開されたサンプル問題は問1〜問6の6問で,PD-S・PD-Mと同じくすべて多肢選択式です。空欄a・bなどに入る字句の「組合せ」を選ぶ形式が中心で,記述はありません。1問あたりは図表付きの1〜4ページで,読み取って当てはめる力と,問5・問6のように手を動かして計算する力の両方が求められます。

IPAの「出題趣旨」に沿って,6問の題材と狙いを整理すると次のとおりです。

問題材何を問うか(出題趣旨の要約)正解
問1分散型データマネジメントの下での,データコントラクトの運用データの意味の変更が与える影響,データコントラクトによる品質担保とトラスト管理,提供者と利用者の責任を踏まえたルール策定イ
問2ECサイトの利益最大化に向けたデータ分析散布図行列による関係性の可視化,重回帰分析のモデル評価・解釈キ
問3LLMを活用したトラブルシューティング支援システム情報の鮮度・正確性の要件を満たす,文脈内学習(In-Context Learning)を使った信頼性の高いAI活用の設計エ
問4住宅設備メーカーのデータ分析基盤へのデータ追加データレイク・DWH・データマートの役割と,データの加工・保存の方法ウ
問5不動産賃貸仲介業の物件情報検索システムRDBMSのSQLと,統計情報に基づく処理結果(データ量)の予測オ
問6試験の得点を補正するアルゴリズム中央値の算出や条件分岐を含む擬似言語プログラムの読解オ

データマネジメント,データ分析,生成AI,データ基盤,SQL,アルゴリズムと,データ・AIの現場を一通りなぞる6問です。

シラバスの4大項目・小項目との対応

6問を,前回整理した科目Bの4大項目と,その下の小項目に対応させます。シラバスには「科目Bの各項目の出題割合は基本的に大項目の構成に基づきます」とあるので,本番の12問は各大項目から3問前後と見込まれます。サンプルの6問は,ちょうどその半分の構成です。

問大項目対応する小項目(筆者の見方)
問11 データマネジメントに関すること1-4 方針・規程・ルール・標準・ガイドラインの策定(「データの提供者と利用者との間で,データの仕様,品質水準,更新・提供条件,利用条件及び責任分担をデータ契約として定め,変更管理プロセスを設計するスキル」),1-5 メタデータの整備・維持
問22 データ・AIの活用に関すること2-2 集計・可視化(散布図行列の読み取り),2-3 統計学を用いた分析処理の実行(回帰分析の結果の解釈)
問32 データ・AIの活用に関すること2-4 RAG・生成AI技術の適用(「目的に応じた技術を選定し,システム構成を設計」「生成AIの出力を,妥当性,有用性,根拠の明確さの観点から評価」)
問43 データ基盤の構築に関すること3-4 データ基盤・データパイプラインの設計(「データレイク,DWHなどに集約した統合型のデータ基盤」へのデータの配置)
問54 データ処理とアルゴリズムに関すること4-1 データのCRUD操作(「集約関数,Window関数,統計関数,再帰構文などを使用して高度な計算を行うSQL文」)
問64 データ処理とアルゴリズムに関すること4-3 アルゴリズムとプログラミング(「アルゴリズムを実装したプログラムを読み解き,その動作を正しく把握する」)

対応させてみると,次のことが分かります。

  • 大項目1は,9つも小項目があるのにサンプルは1問だけです。しかも,その1問はデータ戦略や体制設計ではなく,データ契約とメタデータという「運用ルール」の話でした。1-1〜1-3(戦略・体制・アーキテクチャ)や1-7〜1-9(定着支援・PoC・モニタリング)がどんな問題になるのかは,まだ見えていません。
  • 大項目3は,3-4(データ基盤)だけで,3-1〜3-3の概念・論理・物理データモデルの作成やトランザクション設計は,サンプルには出ていません。ここはDB試験の概念設計がそのまま対応する領域なので,本番では出てくると考えておくべきところです。
  • 大項目4は,SQL(4-1)と擬似言語(4-3)が1問ずつで,改定案の注記「SQLを扱う」「擬似言語を扱う」のとおりの構成です。

既存の試験との対応 ― 問題単位で見ると,つながる先はある

前回の記事では,PD-Dは「既存の試験とはほとんど重ならない」と書きました。これは試験全体の話で,1問ずつ見ていくと,現行の高度区分やAP科目Bの分野と地続きの問題はそれなりにあります。

問現行の高度区分・新試験との関係AP科目Bの分野との関係
問1 データコントラクト新設のDM試験(DMの科目Bサンプル問1「データの責任主体」と同じ系譜)。現行の高度区分には母体なし―
問2 利益の回帰分析題材は ST(ITストラテジスト) 的な「利益構造と施策の意思決定」。統計の中身はデータサイエンティスト検定・統計検定の領域問2 経営戦略(データに基づく経営判断)
問3 LLMの活用母体なし(完全新規)強いて言えば問4 システムアーキテクチャの「方式を比較して選ぶ」スタイル
問4 データ分析基盤DWH・データマートはDB試験の午前Ⅱの範囲。システム構成の考え方はPD-Sの大項目1とも地続き問4 システムアーキテクチャ(クラウド・システム構成),問6 データベース(DWH)
問5 SQLと統計情報DB試験(令和3年度秋期 午後Ⅰ問3の流用とみられる)問6 データベース(SQL)
問6 得点補正のアルゴリズム―問3 プログラミング(FEの科目Bアルゴリズムの延長でもある)

私の見方をまとめると,次のようになります。

  • DB試験の概念設計は小項目3-2,SQLは小項目4-1に対応します。サンプルでは4-1(問5)だけが出ましたが,3-2はDB試験の午後の中核だった部分で,PD-Dでも出題されるはずです。
  • 4-2・4-3はAP科目B問3(プログラミング)の範囲です。問6はまさにAP問3と同じ感覚で解ける問題でした。
  • クラウドやシステム構成はAP科目B問4,経営戦略的なところはST,データマネジメント的なところは新設のDM試験と,それぞれつながる先があります。
  • 一方で,問3(生成AI)のような問題は,どの既存試験にもありません。大項目2の「データ・AIの活用」は,母体のない領域として新しく学ぶ必要があります。

各問のポイント

問1:データコントラクトと,データの「意味」の変更(正解:イ)

各部門がデータのオーナーシップをもつ分散型のデータマネジメントの下で,営業部門が提供する「顧客別月間売上データプロダクト」の単位を,千円から円に変更したことから始まる事例です。データコントラクト(データの仕様・品質を定めた契約)をv2に更新した際,営業部門は説明文(description)のメタデータを見直さず,既存利用者のマーケティング部門に通知もしなかったため,解約予測AIが売上を1000倍と誤認 して異常を起こしました。

空欄aの原因は,「既存データのセマンティクス(意味)を変更したにもかかわらず説明文のメタデータの見直しを怠ったことと,後方互換性のない破壊的変更を既存利用者に通知して再合意を得なかったこと」です。AIの補助ツールの仕様(未承認フラグのカラムだけを生成対象にする)のせいにする選択肢もありますが,人間が確定させた定義をAIが上書きしないための仕組みは妥当で,原因はあくまで提供者側のルール違反 です。空欄bのコンシューマー向けガイドライン第1条は,「データコントラクトの定義に矛盾や不備がある場合は,プロバイダーに修正を要求し,正しい定義が反映されてから利用合意する」が適切です。実データをダウンロードして独自にチェックするのは,データコントラクトを信頼の基盤とする運用 の趣旨に反します。

データメッシュ,データプロダクト,データコントラクト と,科目A-2の中分類8「データマネジメント」の新しい用語が,そのまま科目Bの題材になっている点に注目です。YAML形式のデータコントラクトを読まされるのも,この試験らしいところです。

問2:散布図行列と重回帰分析の解釈(正解:キ)

ECサイトの月次データ24か月分について,利益・売上・訪問者数・SNS広告費・メール配信数の散布図行列を読み取り,続いて回帰分析の結果を解釈する問題です。

空欄aでは,散布図行列から「SNS広告費とメール配信数の間には弱い正の相関が見られ,共線性の存在が示唆されている」を選びます。空欄bは,SNS広告費とメール配信数を説明変数にしたモデル3(SNS広告費の係数3.637,メール配信数の係数-0.586,決定係数R²=0.949)の解釈で,「メール配信数が同じであれば,SNS広告費を1万円増やすと利益は約3.6万円増えると予測できる」が正解です。誤答の「切片がマイナスなので利益が出ない」「R²=0.949なので精度は94.9%」は,回帰分析でよくある誤解をそのまま選択肢にしたもので,統計の結果を正しく読む力が問われています。

回帰係数の意味,決定係数の意味,多重共線性と,統計学の基礎がストレートに出題 されました。これまでの情報処理技術者試験では,科目A問題で単語が出る程度だった内容が,科目Bのケース問題として正面から問われています。

問3:LLMの活用 ― 追加学習か,検索して文脈に与えるか(正解:エ)

精密機器メーカーの保守現場向けに,LLMを使ったトラブルシューティング支援システムを作る事例です。「製品仕様書の改訂を速やかに反映すること」「回答がどの仕様書に基づくかをエンジニアが確認できること」という要件に対して,ドメイン特化LLMを追加学習で構築 するアプローチ①と,関連情報を検索してプロンプトに付加 するアプローチ②を比較し,②を採用します。

空欄aは「外部データベースから検索・抽出された,質問の関連文書」,空欄bは,LLMのパラメータを更新せずに提示された情報から回答を導く「文脈内学習(In-Context Learning)」,空欄cは「回答の根拠となった関連文書名を表示する」です。いわゆる RAG(検索拡張生成)の仕組みと,その利点(鮮度・コスト・根拠の提示)を理解していれば解けます。信頼度スコアを数値で表示するという選択肢は,もっともらしく見えますが,「どの仕様書に基づいているか」という要件には応えていません。

科目A-2の中分類18「AI技術」にある,RAG,コンテキスト内学習,ファインチューニング といった用語を,要件に照らして使い分ける問題です。生成AIを業務に組み込むときの定石が,そのまま国家試験の題材になりました。

問4:データレイク・DWH・データマートへのデータ配置(正解:ウ)

住宅設備メーカーのデータ分析基盤(データソース→データレイク→ETL→DWH→ETL→データマート→BI・機械学習)に,コールセンターの問合せ記録(日別のJSONファイル)を追加する事例です。3つの利活用要件に対して,データをどの層に配置し,どの層のデータをETLで加工するかを答えます。

全社で汎用的に検索・集計する要件1は,軸となるユーザー・設備のマスターデータがあるDWHに配置し,データレイクのデータを加工して格納します。設備保守部門が一定期間を切り出して分析する要件2は,データマートに配置し,DWHのデータを加工して格納します。機械学習に使う要件3は,データレイクのデータをデータプリパレーションツールで直接加工します。データレイク(生データ)→DWH(全社の統合データ)→データマート(部門・目的別)という3層の役割を押さえていれば素直に解けます。

題材はデータエンジニアリングですが,「要件に応じて構成要素を使い分ける」という解き方は,AP科目B問4(システムアーキテクチャ)での出題形式に近いものです。

問5:SQLの結果行数の見積りと,集計SQLの完成(正解:オ)

不動産賃貸仲介業の物件情報検索システムで,「物件」テーブル(行数1,600,000,沿線の列値個数400,エアコン・オートロックの列値個数2)の統計情報から,SQL文の結果行数を見積もる問題です。列値が一様分布で互いに独立という仮定の下,沿線が特定の1路線である物件は1,600,000÷400=4,000件,そのうちエアコンとオートロックの両方がある物件は4,000×1/2×1/2=1,000件(本文に提示),いずれかがある物件は4,000×3/4=3,000件です。空欄bは,沿線ごとの件数が全物件数に占める百分率なので,COUNT(*) * 100 / TOTALになります。

前回の記事でも触れたとおり,この題材は令和3年度秋期DB試験午後Ⅰ問3「テーブルの移行及びSQLの設計」の流用とみられ,設定・統計情報が同じです。元の問題では移行SQLと互換ビューの設計まで問われましたが,PD-Dでは「統計情報から行数を見積もり,WITH句とGROUP BYの集計SQLを完成させる」部分が切り出されています。データ分析系SQL に関する出題であり,DB試験の過去問題がSQLの学習素材として使えることを示す1問です。

問6:中央値で得点を補正する擬似言語プログラム(正解:オ)

100点満点の得点を昇順に格納した配列を受け取り,中央値を50点に写像するように補正する関数correctionを読み解く問題です。correction({20, 30, 30, 30, 60, 80})を呼び出したとき,戻り値に50以上の要素がいくつ含まれるかを答えます。

要素数6は偶数なので,中央値は3番目と4番目の平均で(30+30)÷2=30です。中央値以下の得点は50÷30倍され(20→33,30→50),中央値より大きい得点は50÷70×(得点-30)+50で補正されます(60→71,80→86)。四捨五入後に50以上となるのは30,30,30,60,80の5個です。

出題趣旨には「データの前処理を行うツールなどをAIも駆使して作成することがある」とあり,データを整えるためのプログラムを読めることがデータ・AI人材にも求められる,という位置づけです。難易度はAP科目B問3,あるいはFE科目Bのアルゴリズム問題と同じ程度で,丁寧にトレースすれば確実に取れます。

形式と難易度の所感 ― PD-Sと同じく「AP科目B」に近い

6問を通して見ると,PD-Sのサンプル問題で感じたのと同じく,専門領域に深く入り込む高度区分の午後Ⅰというより,複数分野を横断して実務的な判断をさせるAP科目Bに近い作りです。1問あたりの読解量は中程度で,正解の根拠は本文の中に明示されています。

ただし,PD-Dならではの特徴が2つあります。1つは,問5・問6のように計算してはじめて答えが出る問題があることです。試験ではメモ用紙と電卓が使えますが,手を動かす練習は必要です。もう1つは,統計・生成AI・データメッシュといった「知識がないと本文が読めない」題材が含まれることです。問2の共線性や決定係数,問3の文脈内学習は,用語を知らなければ選択肢を絞れません。科目A-2の学習が,そのまま科目Bの読解力につながります。

学習のポイント

  • DB試験の過去問題は,3-2(概念設計)と4-1(SQL)の素材として使えます。問5のように,午後問題の一部が多肢選択式に作り直される可能性があるので,午後Ⅰの設問を「選択肢で答えるならどうなるか」と意識して解き直すのが有効です。
  • AP科目Bの問3(プログラミング)・問4(システムアーキテクチャ)・問6(データベース)は,大項目3・4の練習台になります。
  • 大項目2(データ・AIの活用)は,新しく学ぶ領域です。統計学は回帰分析・仮説検定・相関と因果の違いまで,生成AIはRAG・ファインチューニング・エージェントの使い分けまでを,用語ではなく「どんなときに何を選ぶか」のレベルで押さえましょう。
  • 大項目1(データマネジメント)は,DM試験の学習と重なります。DMのシラバスで土台を作り,PD-Dでは「ルールを設計する側」の視点を加える形になります。

まとめ

  • PD-D科目Bサンプルは6問・全問多肢選択式。シラバスの4大項目に対して,大項目1が1問(1-4),大項目2が2問(2-2・2-3,2-4),大項目3が1問(3-4),大項目4が2問(4-1,4-3)という構成でした。
  • 既存の試験とのつながりは,問1がDM試験,問2がSTとAP問2,問4がAP問4・問6,問5がDB試験とAP問6,問6がAP問3です。問3の生成AIだけは,どの既存試験にも母体がありません。
  • DB試験の概念設計は3-2,SQLは4-1に対応し,4-2・4-3はAP問3の範囲です。サンプルに出なかった3-2は,本番では出題されると考えて準備しておきましょう。
  • 形式はAP科目Bに近く,計算問題と「知識がないと読めない題材」があるのがPD-Dらしさです。

出典:IPA「新試験制度のサンプル問題について」で2026年10月30日に公開されたプロフェッショナルデジタルスキル(データ・AI)試験(仮称) 科目B サンプル問題(PDF,解答例・出題趣旨を含む)。シラバスとの対応や既存試験との関係は筆者の見方であり,シラバスは(案)として今後変更される可能性があります。

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