PD-M(マネジメント)科目Bサンプル問題を読む ― ST・PM・SM・AUの4区分に対応する4問の特徴とレベル
2027年度に新設されるプロフェッショナルデジタルスキル(マネジメント)試験(PD-M)について,科目Bのサンプル問題が公開されました。これまで前編・後編・科目A編でシラバスを分析してきましたが,今回は実際のサンプル問題から,各問の特徴とレベルを読み解きます。PD-MはST・PM・SM・AUの4区分を母体とする試験。今回のサンプルは,まさにその4区分に1問ずつ対応する4問構成でした。
科目Bサンプルの全体像 ― 4問・全問多肢選択式(4区分に1問ずつ)
公開されたサンプルは問1〜問4の4問構成で,PD-Sと同じくすべて多肢選択式(判断の「組合せ」を選ぶ形式)です。記述はありません。そして,IPAの「出題趣旨」を見ると,4問が母体4区分(ST・PM・SM・AU)にきれいに対応していることが分かります。
| 問 | 題材 | 問われる分野 | 母体の高度区分 |
|---|---|---|---|
| 問1 | 地域MaaS(観光×交通の共通API連携) | デジタル戦略の企画・推進 | ST(ITストラテジスト) |
| 問2 | インシデント管理・問題管理プロセス | サービスマネジメント | SM(ITサービスマネージャ) |
| 問3 | SaaSの機能追加プロジェクト(予算・資金繰り) | プロジェクトマネジメント(スコープ定義) | PM(プロジェクトマネージャ) |
| 問4 | AIチャットボット導入計画のシステム監査 | ガバナンス確保・監査 | AU(システム監査技術者) |
前編で「PD-Mは現行4区分の素直な統合(1区分=1大項目)」と分析しましたが,サンプル問題もその構図をそのまま踏襲しています。サンプル問題4問で,経営戦略・サービスマネジメント・プロジェクトマネジメント・システム監査について1問ずつ出題されており,非常に見通しのよい設計です。
4つの高度区分を「1問ずつ選択式に翻訳」した構成
ここがPD-Sとの一番の違いです。PD-Sは6問・6分野で,技術分野を横断する「AP午後」に近い構成でした。一方PD-Mは,ST・PM・SM・AUという4つの高度区分の題材を,1問ずつ多肢選択式に作り替えた構成です。
母体4区分は,いずれも現行で記述式(午後Ⅰ)と論述式(午後Ⅱ)をもつ高度区分でした。このうち論述(午後Ⅱ)は全廃され(→後編),サンプルも全問選択式で,記述で答えさせる設問はありません。作りとしては,午後Ⅰの記述式の事例問題を,多肢選択式に置き換えたようなイメージです。「構想を長文で書く」力ではなく,各マネジメント領域の定石を,実務シナリオに当てはめて正しく判断する力を問う形になっています。
つまり全体のレベル感は,午後Ⅰの記述式ほど深くはないが,題材は高度区分そのもの。知識の暗記量より,マネジメントの考え方を場面に適用する読解・判断力が中心です。
各問の特徴とレベル(区分別)
問1:デジタル戦略(ST)― 正解:エ
題材:観光地を抱えるZ県が,交通・宿泊事業者と連携して地域MaaSを推進する一般社団法人Yを設立。各事業者の既存システムの独立性を保ったまま共通APIで連携し,検索・予約・決済をワンストップ提供する。
特徴:「Y法人が実現しようとしている内容」を3つ選ぶ問題。ポイントは戦略コンセプトの言葉を正確に選ぶことです。「垂直統合」ではなく相互連携(既存システムの独立性を維持),「業務効率化」ではなく顧客体験価値の創出と持続可能な成長という,STが描くあるべき戦略の記述を見分けます。
レベル:現行STで問われた「戦略を構想する」力ではなく,MaaS・共創・顧客体験価値といった戦略用語を正しく理解し,適切な説明を選ぶレベル。用語の意味と狙いを押さえていれば対応できます。
問2:サービスマネジメント(SM)― 正解:エ
題材:K社のサービスデスク(SPOC)が受け付けたインシデント管理プロセスと問題管理プロセス。「既知の誤り」「エスカレーション」など,ITILの考え方がベースです。
特徴:終了時の連絡先(=利用者)を押さえたうえで,件数の分析から改善すべき活動を特定します。「解決担当者は既知の誤りを見つけられずエスカレーションしたのに,開発課では回避策が見つかった(15件)」という事実から,表1の『既知の誤りの調査』の活動に改善余地があると論理的に切り分けます。
レベル:SM午後の実務プロセス読解に近い骨格ですが,選択式。ITILのインシデント/問題管理の基本概念と,数字を根拠に課題箇所を絞り込む論理が問われます。
問3:プロジェクトマネジメント(PM)― 正解:カ
題材:A社のSaaSで,機能追加の開発投資がかさみ資金繰りが悪化。継続利用契約と大口顧客の個別契約が混在し,要望1〜3の優先度と開発費回収方法が異なる中で,Aプロジェクトの進め方を検討する。
特徴:「予算内での確実なリリース」と「短期的な資金繰り改善」という2条件を両立する進め方を2つ選びます。スコープ定義の問題です。要望3(大口顧客が費用負担に合意)は短期資金繰りに効く→優先。さらに顧客に要件定義へ参加してもらい適合を確認して確実なリリースにつなげる。制約条件の中でビジネス価値とQCDを両立させる判断が軸です。
レベル:PM午後のスコープ・調達・ステークホルダの考え方そのもの。論述ではなく,制約を踏まえた妥当な進め方の組合せを選ぶレベルです。
問4:システム監査(AU)― 正解:ウ
題材:B社のAIチャットボット導入計画に対するシステム監査。PoC,学習データ・教師データの準備,学習結果の評価など,AI開発特有のリスクを踏まえた監査要点を整理する。
特徴:監査部長の「不十分な監査要点があるので見直せ」という指示に対し,どの監査要点が不十分かを選びます。想定リスク(要求品質を満たすデータを選定・準備して評価しないと不適切な回答を生成する)に対し,監査要点(3)が「データを準備する計画か」だけで『選定・評価』の観点が抜けているというリスクと監査要点の対応のズレを見抜きます。
レベル:AU午後のリスク→コントロール→監査要点の対応づけが核。AI監査という新しさはありますが,問われる思考は監査の王道です。
学習のポイント
- 母体4区分の午後問題を素材に:ST・PM・SM・AUの過去問(特に午後Ⅰの事例)は,テーマ・考え方がそのまま通用します。論述の練習は不要ですが,事例を読んで「定石で判断する」練習が有効です
- 4区分がまんべんなく確実に出るため,苦手区分を作ると失点に直結します。「監査は捨てる」といった戦略が取りにくい構成です
- 用語と定石を『選べる』水準に:MaaS・共創(ST),ITILの既知の誤り(SM),スコープと投資回収(PM),リスクと監査要点(AU)など,各領域の考え方を場面に当てはめる訓練を
- 新トピックはシラバスで補完:AIガバナンス・DX経営・プロダクトマネジメントなどの新語は,科目A編で整理した範囲で押さえておくと安心です
まとめ
- PD-M科目Bサンプルは4問・全問多肢選択式。ST・PM・SM・AUの4区分に1問ずつ対応する構成
- 母体4区分の題材を1問ずつ多肢選択式に置き換えた作り。後編で解説した論述(午後Ⅱ)の全廃が,サンプルにもそのまま表れている
- レベルは午後Ⅰの記述ほど深くないが,題材は高度区分そのもの。マネジメントの定石を実務に当てはめて選ぶ力が中心
- 技術横断で「AP午後」に近いPD-Sと,マネジメント4区分を1問ずつ問うPD-M——きれいな対になっています
新試験全体の公開状況は全体まとめ記事で,PD-Mの最新情報はPD-M区分ページでも整理しています。
出典:本記事は,IPA公開のプロフェッショナルデジタルスキル(マネジメント)試験(仮称)科目Bのサンプル問題(PDF)を分析対象としています。(仮称・案) の段階であり,IPAは「変更する可能性があります」と明記しています。母体4区分との対応は,本記事による解説上の整理です。
▶ シリーズ(PD-M):【前編】4区分統合の構図/【後編】論述消滅と学習戦略/【科目A編】専門知識/【科目Bサンプル編】(本記事) ▶ あわせて読みたい:PD-S(システム)科目Bサンプル問題を読む